ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井多佳子 text by Takako Sakurai 
[2008.09.10]
 夏休みは、バレエ教室の発表会シーズンでもある。小さい生徒が主役となる発表会だが、演出や振付によっては、見ごたえある「公演」にもなり、プロのダンサーとなった教室出身者が舞台に華を添えることも。今回は関西の老舗バレエ教室の発表会をレポートする。
From Osaka -大阪-

第54回江川バレエスクール発表会

 1934年に江川幸一が設立したバレエスクール。設立者の子息、幸作も、その夫人の、のぶ子も故人となったが、太田由利を中心とした指導者が、若手を次々と育てている。
 その太田が大寺資二と踊った『シルフィード』が素晴らしかった。身体のライン、特に首から腕の線が美しい。発表会での教師の演技は、「ベテランなのに、あんなに踊ることができる」という点で大喝采を浴びる。もちろん、それも感動的なことではある。だが、太田の演技は、まったく、その域を超えていた。ベテランならではの落ち着きはもちろん感じさせるが、それとともに、不思議な清潔感が漂っている。音楽を大切にし、空気の流れに素直に沿うような動きは、繊細で自然。太田を良く知る深川秀夫振付の成果でもあるようだ。

 同スクール出身で、現在、新国立劇場バレエで活躍する湯川麻美子振付の『ALL IMPERFECT THINGS』も見ごたえがあった。マイケル・ナイマンの音楽を用い、女性ばかり23人が踊る。一人赤いドレスを纏った湯川のダンスは滑らかで非常に洗練されている。新国立劇場で様々な振付家の作品を踊っていることもあってか、動きのヴォキャブラリーは豊富。群舞も巧みにまとめあげていた。特に明確なストーリーはないが、女性の内面の葛藤が見え、また、様々な経験を経て再び歩き出す勇気も感じさせる。それを、成熟した大人の女性の視点で描いているため共感できた。

 子供のためのバレエ『ある日のレッスン風景』は、故・江川のぶ子構成、太田由利振付。子供らしさが生かされていて、生徒たちは活き活きと踊っていた。ラストは満点の星空を生徒たちが見つめている。その背中をカラフルなライトが照らし出す。輝きながら流れていった星は、生徒たちに慕われていた江川のぶ子を象徴しているようにも思えた。

『ヴィヴァルディ・コンチェルト』は深川秀夫の新作。深川作品というと、メンデルスゾーンやチャイコフスキーなどメロディアスな音楽、というイメージを描いていたので、ヴィヴァルディは少し意外。が、実際には、ヴィヴァルディが、見事、深川色に染められていた。いや、ヴィヴァルディの音楽が本来持っていた華やかさや優しさに気付かされたというべきか。愛らしい秀作だ。
(2008年8月6日、神戸文化大ホール)