ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

桜井多佳子 text by Takako Sakurai 
[2008.03.10]
From Osaka -大阪-

日本バレエ協会関西支部 第35回バレエ芸術劇場「白鳥の湖」

 日本バレエ協会関西支部は、91年からキーロフ・バレエやワガノワ名称ロシア・バレエ・アカデミーと提携、セルゲイエフやドゥジンスカヤを振付・指導に招き、バレエ上演を重ねてきた。今回、ロシアから指導者は招いていないが、セルゲイエフ版「白鳥の湖」は2000年に上演済み。プログラムに、ワガノワ名称ロシア・バレエ・アカデミー芸術監督アシルムラートワらの挨拶文が掲載されているのは、そういうわけだ。

楠本、ソロマハ楠本、ソロマハ松本、ソロマハ

松本、ソロマハ
 ジークフリート王子役、はキエフ出身でサンフランシスコ・バレエ団プリンシパルのワディム・ソロマハ。名古屋の越智インターナショナルバレエの招聘で93年に来日し、こうべ全国洋舞コンクールでも優勝しているので知られた存在ではあるが、関西での全幕主演は今回が初めてだった。立っているだけで王子だと納得させる舞台マナーの素晴らしさはさすが。それでいながら、冒頭から舞台に自然と溶け込んでいて、存在が浮き上がることはない。日本のバレエ公演を良く理解しているからだろう。優しく、細やかなサポートも見ていて心地良かった。

 オデット役の松本真由美は清純な雰囲気を持つが、ところどころ表現が幼く見えるのが残念。ただ、このことは彼女だけに限らず日本女性に共通でもあるが。オディール役の楠本理江香は、ダイナミックな演技。長い腕をより美しく見せながら、安定した踊りで王子だけでなく観客の気持ちもひきつけた。

 山下摩耶、淺野眞央・青木崇のパ・ド・トロワは、三人とも基礎に忠実な踊りをきちんと見せ、一幕の大きな「見せ場」をつくりあげていた。全幕を通して舞台に深みを与えていたのは、道化役の恵谷彰。高い技術の持ち主で、メカニックな動きは爽快感がある。さらに、今回のような全幕の物語バレエでは、表情も豊かにドラマに参加する。ロッドバルトの沖潮隆之も役を心得た演技。ベテランだが、いつもどこか新鮮に感じさせるのはこの人ならではだ。このように見ると、関西には全国区で活躍する男性ダンサーが豊富。もちろん女性も、楠本、山下、淺野以外にも、堀端三由季(スペインの踊り)、小澤侑貴子(ハンガリーの踊り)、高木志保(ルースカヤ)ら、優秀な舞踊手は多いのだが、その良さが十分に発揮できていたとは思えない。個性的で自己アピールが巧みでサービス精神も旺盛な関西ダンサーが、「しのぎを削る」舞台を実現できるのは地元関西のはず。またバレエ協会関西支部という組織ならではではないだろうか。バレエ芸術劇場には、まだまだ可能性があると思うのだが。
(2月2日、フェスティバルホール)


ワジム・ソロマハ

山下、淺野、青木

恵谷彰