ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.03.10]
From Osaka -大阪-

アルティ・ブヨウ・フェスティバル公募公演

 1991年から行われている『アルティ・ブヨウ・フェスティバル』は、古典舞踊からコンテンポラリーまで、さまざまなジャンルの舞踊が集う祭典。
私が観た中で特に印象に残ったものを3つだけピックアップして紹介したい。

『幸せのロケット花火』
 まず1つ目に、山本裕が構成・振付・演出を行った『幸せのロケット花火』。出演は山本自身と、石澤沙羅、加藤真愛、佐々木由美、萩原綾、福島千賀子、高橋純一の7名。男性の叫び声に驚くと、真ん中にニッコリ笑うショッキングピンクのタンクトップの女性ーーそんな始まりから、テンポ良く場面が変わり、どんどん舞台に引きこまれていく。登場するダンサーたちは体が出来ていて動けるし、舞台で観客の気持ちを掴むカンも良い。客席の子供たちも釘付けになって観ていたーー見終わって「楽しかった!」と思わず口をついて出る作品だった。

 2つ目は、red sleepの『The Sun Song』。ソングライターでダンサーでもあるPeter Golightlyと相模純江が踊り、他のメンバーによって舞台上でライブ演奏やビデオアートも。Peterは歌も歌う。舞台上を斜めに渡して掛けられた白い布には白で描かれた模様があり、そこにビデオアートが映し出され、ダンサーの動きと溶け合って何枚もの絵を観ているように美しい。さまざまな音を聞きながら“静けさ”を感じた。

 3つ目は、京都DANCE EXCHANGEの『大原音日記 春の歌』。このグループは、他とはかなり違うーーひとりゲストのように女性ダンサー植木明日香がいるけれど、あとはごく普通のおじさんたち。だから正直なところ、ダンスが上手なわけではない。けれど、強く印象に残る心を打つ作品だった。これは、バレリーナであった母・宮下靖子を3年前に亡くしたピアニストの片岡量臣が、母を亡くしてからふと踊りたくなったと中高年に向けたワークショップに参加し、そこで知り合った男性たちとグループを組んで練習を重ねる中で出来上がったもの。トゥ・シューズで踊る思い出の中の母が植木だ。片岡の友人でピアニストの青井彰が演奏者として加わっている。まるで少年に戻ったかのようにはしゃぎあい馬跳びをし、肩をたたき合う中高年男性たち。

 人が“踊ろう”と思うのは、何もプロになろうとか上手になろうとか言う時だけではない。これはプロのダンスにはなりえないけれど、観客の心をあたたかくする感動があった。手法だけ上手で感動の伝わらない作品よりもよっぽどすばらしい。「人間に取って踊るというのは、どういうことなんだろう?」そんな根本的なことを改めて考えさせてくれた。
(2月9日、10日 京都府立府民ホール“アルティ”)

『幸せのロケット花火』『The Sun Song』『The Sun Song』
『大原音日記 春の歌』『大原音日記 春の歌』