ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.03.10]
From Nagoya -名古屋-

『Ballet SPITZE prezents Ballet Abend 』

2002年よりBallet SPITZEを主宰している畑野ゆかりによるBallet Abendが開催された。今回のBallet Abendは、幼いころより畑野が敬愛する深川秀夫の振付作品を中心にした大変意欲的な舞台であった。

 畑野自身も愛知芸術文化センターがプロデュースした「あいちダンスの饗宴:トリプル・ガラ」で上演された深川の『ガーシュイン・モナムール』へ出演したり、愛知県が若手の振付家の育成のために取り組んでいる「新進アーティストの発見 in あいち」にて、深川のアドバイスを受けて『術 ~Die Methorde~』という小品を発表したばかりとあって、畑野の気合の入れ方にも並々ならぬ決意があったように見受けられた。

 さて、一作目の『スラヴィック・ダンサーズ』は、ドヴォルザークの民族的な音楽を使用して、深川が振付をした華やかな作品だ。自らのバレエ団を立ち上げたばかりの若手ダンサーやフリーのダンサーたち24名が出演。バレエのパと民族色の強いキャラクターダンスのステップが変幻自在に織り込まれていき、美しさと土着的な力強さが見事に同居している。

「スラヴィック・ダンサーズ」「スラヴィック・ダンサーズ」

 続く、畑野ゆかり振付による『Die Diamanten』。ドイツ語ディアマンテは、ダイアモンドを意味するそうで、厳しく緻密なトレーニングに励むバレエダンサーの輝きを、そのタイトルに込めたという。モーツァルトの調べによせて、白の衣裳に身を包んだ14名のダンサーが優雅かつ精緻に舞う。バレエのテクニックを基本としながらも、ドイツのライプチヒ・バレエ団でウヴェ・ショルツなどのコンテンポラリー作品を踊っていた畑野らしく、バレエ以外の動きも積極的に取り入れており、畑野独自の世界を創造しようとしているように感じられた。

「Die Tanzerin」
 プログラムの最後は、ジョン・ウィリアムズの音楽に振付けられた『Die Tanzerin(女性舞踊手)』。バレエというツールで、女性ダンサーの多様な感情を表現した深川秀夫の代表作のひとつだ。
 黒の衣裳で粋に踊るダンサーたちはひどくクールで格好よいが、しだいにそこに一人の女性としてのチャーミングさや弱さなど、様々な感情が顔を覗かせる。くじけそうになりながらも、ダンスの世界で生きることを選んだバレリーナたちの心のひだをひとつずつはがしながら、ダンスの場面に落としこんでいく。起伏のある展開、空間を揺り動かすダイナミックな構成力、そして何よりも、「ダンスって素敵」って、思わせる情感溢れる作品だ。多くのダンサーたちに共感をもって「踊りたい!」と思わせる作品なのだろう。今回のダンサーたちも本当に生き生きと楽しそうに見えた。

 ダンサーへの愛溢れる深川作品は、踊り手にとっては踊ることを純粋に楽しめる作品だ。この度、深川秀夫は長年の功績を称え名古屋市芸術特賞を受賞した。今後さらに深川作品を目にする機会が増えるとしたら楽しみだ。だからこそ、ダンサーの充実感や満足感といった個人的な次元を超えて、ダンサーがどのようにして振付家のコンセプトを観客に伝えていけるのかという、プロのダンサーの舞台創作の本質にも注目していきたいと思う。
(名古屋市芸術創造センター 2008年2月9日)

「スラヴィック・ダンサーズ」「Die Diamanten」「Die Tanzerin」