ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

桜井多佳子 text by Takako Sakurai 
[2008.01.10]
From Osaka -大阪-

馬場美智子バレエ団の『レ・シルフィード』『ライモンダ』

 兵庫県宝塚市・川西市を本拠にする馬場美智子バレエ団が冬期公演を行った。プログラムは、『レ・シルフィード』と『ライモンダ』。

『レ・シルフィード』は、幕が上がったその瞬間が勝負というべき作品。幻想的な絵画の世界がそこにあり、その美しさに息を呑む。と、その絵画は動き出す。だがそれは、いわゆる「息が吹き込まれたような」表現とは異なる。シルフィード(大気の精)が血の通った人間になるわけではない。幻想の世界に生気が満ちていくのではなく、絵画が動き出すと、その幻想性は増し、詩人とともに、観客も幻想の世界にたゆたうことになる。おそらく再振付の馬場美智子は、その「幻想性」を最重視させて、団員を指導してきたのだろう。ダンサーのレベルは正直言ってすべて一流とはいえないが、それぞれがフォームを乱すことなく、音楽にのせて踊っている。それは見ていて心地よかった。プレリュードの平松幸子は、美しい足先をていねいに使い、シルフィード像を作り上げていた。ワルツの竹村久美子の伸びやかな動きも楽しめた。

「レ・シルフィード」「レ・シルフィード」

「ライモンダ」平野玲、平松幸子
『ライモンダ』を同バレエ団が上演するのは初めて。今回は、まず2・3幕を取り上げた。つまり、出征したジャン・ド・ブリエンヌを待つ、彼の婚約者ライモンダのもとに、サラセンの騎士アブドラーマン(プログラムのまま。アブデラフマンという言い方をする場合もある)が従者をつれてやってきて求愛。そこにジャンが戻ってきて決闘となり、アブドラーマンは敗北し、命を落とす---という第2幕と、ジャンとライモンダの結婚式の場である第3幕だ。作品の主役は、ライモンダとジャンだが、特に2幕では、アブドラーマンがドラマの中心となる。いかにもさわやかなヨーロッパの貴公子ジャンに対して、アラブ系の騎士アブドラーマンは、感情をそのままライモンダにぶつける男臭さを感じさせる。「悪役」ではあるが大変魅力的であり、この人物いかんで、作品全体の印象が大きくかわってくる重要な役柄だ。今回、ゲスト平野玲のアブドラーマンを見ることができたことは大きな収穫だった。品を落とさず、野卑に過ぎず、柔軟な身体を巧く使い、エネルギッシュな演技で魅惑的なアブドラーマン像をつくりあげていた。現在、東京バレエ団に在籍する平野は、宝塚北高等学校時代に藤永弘美(馬場美智子の夫、本公演の制作者であり、出演者=アンドリュー2世役)に師事していたこともあり、今回の出演に結びついたという。長年の信頼関係は舞台にそのまま現れる。平野の出演が、公演全体を成功に導いたといえるだろう。
(12月1日、兵庫県芸術文化センター 中ホール)

「ライモンダ」平松、末松「ライモンダ」3幕「ライモンダ」3幕