ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.11.12]
From Osaka -大阪-

"黒"の世界を満喫ー宮下靖子バレエ『深川秀夫の世界』

 今回の宮下靖子バレエの公演は、”黒”を基調とした衣裳の深川秀夫振付作品3演目。とはいえ、それぞれまったく違った魅力があった。
 一つ目は『ディフェーダー』。聴き慣れたヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」に乗せて、若い、おそらく10代が中心と思えるダンサーたちが踊った。フランスのショーダンスか、宝塚歌劇かといったカラフルな羽の、コンパクトなものを背中につけて、この年ごろ独特の奇声を上げながら元気に踊る。満面の笑顔、思いっきり伸ばす身体、白鳥に憧れるような腕の動き・・・。これだけ前向きのエネルギーを放出しながらもおしゃれなのは、”黒”の魅力を上手く使う深川のセンスだろう。
 続いては『シューマンに魅せられて』。ヴァイオリンの音に魅せられた夜会、こちらは一変して大人の世界。はじめに、苦悩の表情の鈴木佑子、踊りの広がりにスケールが感じられる。石井絢子、井澤照予、水野宏子、窪田弘樹といったソリストたちも夜会の世界に浸らせてくれる安心感のある踊り。そして、原美香と大寺資二のパ・ド・ドゥ。抱き合ったところから始まる正装での2人の踊りは、大人の魅力たっぷり。
 そしてラストは『ディ・テンツァリン』。”女性舞踊手”という意味のこの作品、14名の女性ダンサーが悩みながらも踊り続ける様子---ダンスの魔力とも言えそうなものが伝わってきて、とても魅力的。深川がヨーロッパから戻って間もない1983年に創られたというから、とても昔の作品になるが、コケティッシュな魅力は色あせない。最後には、それぞれのダンサーが小さな頃の写真スライドともに紹介され、ダンサーにとっても感慨深く踊れそう。
 3つ通して観た帰り道「3つとも、白鳥のような鳥の飛び立つふりがあったような気がするなぁ」と、ふと思った。女性ダンサーの魅力と”飛び立つこと”は、切り離すのは惜しい関係なのかも知れない。
 


 

(9月29日、京都市呉竹文化センター)