ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2007.11.12]
From Nagoya -名古屋-

後藤千花ステップ・ワークスバレエ公演『ロミオとジュリエット』

 後藤千花の主宰するステップ・ワークスバレエが、中島伸欣振付の新作『ロミオとジュリエット』に取り組んだ。後藤は中島と組んでこれまでも創作を行ってきたが、今回の役は、後藤が以前からいつかは踊ってみたいと思っていたというジュリエット。ジュリエットという若き女性を本当の意味で「演じる」ことができるのは、むしろ一定のキャリアを経た後なのかもしれない、と感じることができる表現豊かな舞台となった。

現在、世界中で上演されているバレエ版『ロミオとジュリエット』の多くは、シェークスピアの物語とプロコフィエフの音楽でよく知られているだろう。対立する両家を描いたプロコフィエフの旋律は、その対立の緊張感を強く印象づける。

 

中島版では、さらにそこに2枚の衝立を使用し、あるときは盾のように、またあるときは城の壁として使うことによって、キャピュレット家とモンタギュー家の争いに翻弄される若き二人の悲劇を、シンプルな舞台美術で象徴的に浮き立たせることに成功していた。
後藤は、婚約者のパリスと出会う幼さが残る若きジュリエットの初々しさから、ロミオと知り合い胸ときめかせるうら若き乙女、そしてロミオのために激しく死に向かっていく強き女という、ひとりの女性の変貌を、ドラマティックに演じて見せる。一方ロミオ役を演じた黄凱は、ベテランのダンスノーブルらしく、スマートで切れ味鋭い踊りを見せた。

また主役を取り巻く役者たちの熱演が光った。初のゲスト出演となった松岡伶子バレエ団の市橋万樹は、若々しさはじける演技と軽妙なテクニックでロミオの友人マキューシオを好演。そのマキューシオと戦ったティボルト役の陳建国の演技は自然で心地よい。常にジュリエットに寄り添う母親役の早川麻実は、今もプリマ時代の佇まいを残す美しさで、その動きの軌跡にも目が離せなかった。ジュリエットを求愛するパリス役の高宮直秀、乳母の水谷訓子なども演技力で物語の進行を助けた。

時おり見られる役者のコミカルな演技やユニークな振付の群舞が、この作品の重苦しさをいく分か打ち消し、悲劇的な作品を多くの人にとって楽しめる舞台にしていたように思う。また第1部の『スプライシング オブ ダンス』では、中尾有里と陳建国のリードのもと、バレエ団の20名のダンサーたちが、ヴィバルディの曲にのったシンフォニックな振付を軽やかに踊って、ダンスの楽しさを全身で表現していた。


 

後藤千花、黄凱
 高宮直秀
(2007年9月28日、名古屋市芸術創造センター)