ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2007.05.10]
From Osaka -大阪-

日本とウクライナの若きアーティスト達2007『くるみ割り人形』

 主催はNPO法人子供の城アートセンター。長年にわたってキエフと交流を続けている寺田バレエ・アートスクール(京都)が、昨年秋に立ち上げた。今回は法人設立第一回目の記念公演。それに相応しい熱意が感じられ、盛り上がりを見せていた(3月30日びわ湖ホール、4月1日なら100年会館。奈良公演を所見)。守山俊吾指揮、関西フィル演奏。

クララ役のアリーサ・レブノワは、キエフ・バレエ学校の生徒。演技には多少不安なところも見られたが、可憐な容姿と雰囲気がクララ役にぴったりだ。クララの父=シュターバウムを演じたのはアナトリー・コズロフ、ドロッセルマイヤーはワジム・ピーサレフ。二人とも往年の名ダンサーだ。ピーサレフは、10年以上前、『海賊』の奴隷のパ・ド・ドゥをパートナー、インナ・ドロフェーエワとともに日本に広め、いまだ根強いファンを持つ。コズロフもピーサレフも、さすがの存在感。少々ビッグサイズに過ぎるという気もするが、踊りだすと、動きはとても軽やかだ。ピーサレフは、コンクールで鳴らしたテクニシャンぶりを堂々披露。そのサービス精神が嬉しかった。
『くるみ割り人形』

 

 
『くるみ割り人形』

 くるみ割り人形が、王子(寺田宣弘)に変身すると、クララ役も川崎亜香里にバトンタッチされる。キエフでプロとして活躍を続ける二人は、役柄を十分に理解した表情豊かな演技。見るものを自然に舞台に引き入れるパワーは、やはりキエフ仕込みといえるだろう。

石川直美、吉川英絵、東出麻生らの落ち着いた演技も印象に残っている。
 ウクライナからの若手出演者も、もちろん大活躍。ロシア(トレパック)のヤロスラフ・サレンコは数々のコンクールに入賞している実力派でキエフ・バレエのソリスト、アンドレエ・ピーサレフは、ワジム・ピーサレフの息子でローザンヌの入賞者だ。コンスタンチン&ミハエル・ツカーチェク兄弟、ビクトル・トーマシェクらキエフ・バレエ学校の生徒も、舞台マナーが素晴らしく、将来有望な少年ばかりだった。



『くるみ割り人形』

 寺田バレエ・アートスクールの公演(発表会も含む)は、「未来の大スター」が出演する。キーロフ・バレエのレオニード・サラファーノフ、英国ロイヤル・バレエ団のアリーナ・コジョカルやイワン・プトロフ、ハンブルグ・バレエのアレクサンドル・リャブコ、キエフ・バレエのエレーナ・フィリピエワら今をときめくスターたちが、バレエ学校生時代に、寺田バレエの舞台を踏んでいる。ほとんどの生徒にとって、それが人生最初の海外の舞台で、貴重な経験だったと後のインタビューでも語っている。それは、観客側も同じことだ。
 今回、グランパ・ド・ドゥに登場したデニス・マトヴィエンコも、少年時代から寺田バレエの舞台に立っている。いまや世界的な大スターとなっても、「僕のバレエ人生を開いてくれた」高尾美智子(NPO法人子供の城アートセンター理事長、寺田バレエ・アートスクール校長)からの誘いには駆けつけるのだという。果たして、妻アナスターシャと踊ったグラン・パ・ド・ドゥは、光りをまとったような美しさと、ほのぼのとした温かみを感じさせ、素晴らしかった。


『くるみ割り人形』



 フィナーレは『ゴパック』。日本人も外国人も、ウクライナの民族衣裳姿で、リズミカルに豪快に、ウクライナの民族舞踊を踊った。ダンサーたちのなんと楽しそうな表情。ピーサレフは掛け声もあげている。寺田も含め男性たちは、みんな「血が騒ぐ」のだろうか、音楽に乗り、勇壮に踊っていた。

『ゴパック』