ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.03.10]
From Nagoya -名古屋-

あいちダンスの饗宴『トリプル・ガラ』

 愛知芸術文化センターが、地元のバレエ団や舞踊家の力を結集して<あいちダンスの饗宴『トリプル・ガラ』>を開催した。これまで手掛けてきた<あいちダンス・フェスティバル>と<ダンスオペラ>のシリーズを統合し、さらに“進化”させたという。

 第1部では、男性2人を含む27人の地元ダンサーが、愛知県出身の深川秀夫の代表作『ガーシュイン・モナムール』を踊った。前半は、白いロマンティックチュチュの女性陣が、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番にのせて、古典の技法で妖精のように舞った。ガーシュインの音楽による後半は衣裳もカラフルになり、腰をくねらせ、足先を曲げるなど、遊び心ある振りもまじえて楽しませる。デュオやトリオも組まれていたが、メインはヴァリエーション。皆、ここぞとばかりに次々と技や個性を披露し、熱い競演となった。


「ガーシュイン・モナムール」

「ガーシュイン・モナムール」

「ガーシュイン・モナムール」

 第2部は、名古屋で開催される「世界バレエ&モダンダンスコンクール」のメダリストには古典のグラン・パ・ド・ドゥで、県下の他のコンクールで上位入賞したジュニアにはヴァリアシオンで、実力を披露してもらう企画。メダリストでは、米沢唯(2005年銅メダル)がイルギス・ガリムーリンと『海賊』を踊った。米沢は力強いテクニックの持主。腕の動きは硬いが、表現力はあるので、今後が楽しみだ。ガリムーリンは変化のあるジャンプで盛り立てた。ジュニアの参加者は二人。
『ジゼル』を踊った山下実可は、プロポーションもよく、テクニックも確か。これで演技に磨きがかかればと思う。『サタネラ』を踊った岩越梨紗は、手の動きが硬かったが、そつなく踊りこなした。なお、負傷したメダリストの植村麻衣子に代わり、愛知県出身の荒井祐子が芳賀望と『眠れる森の美女』を踊った。荒井は、ゆるぎないテクニックと細やかな腕の表情で優雅な雰囲気を醸した。芳賀は伸びやかな跳躍、着実なフィニッシュが気持ち良かった。

「ジゼル」
山下実可


「海賊」
米沢唯、イルギス・ガリムーリン

「サタネラ」
岩越梨紗

「眠れる森の美女」
荒井祐子、芳賀望


西島千博
 第三部はダンスオペラ『ハムレット~幻鏡のオフィーリア』。ダンスオペラはオペラのダンス版ではなく、ダンスを主とした総合的舞台作品を意図したもの。ランボオがオフィーリアを詠んだ詩に着想を得た新作は、大胆にもシェイクスピアの原作には直接描かれていない彼女の溺死のシーンを劇の中心に据え、しかも登場人物をハムレット、オフィーリア、その兄レアティーズの3人に絞り、ダンスと語りと音楽で描いた。振付とハムレット役はバレエ界の西島千博、オフィーリアとレアティーズはコンテンポラリーダンスの平山素子と山崎広太、語りは女優の毬谷友子と、話題の人をそろえた。


毬谷友子、平山素子、西島千博

平山素子、西島千博

毬谷友子、西島千博、平山素子

 下手前方に演奏家を配し、舞台中央手前から逆コの字型で上るスロープを設えただけの抽象的な舞台。毬谷はハムレットや亡霊、王妃の言葉やランボオの詩を豊かに語り分けてドラマを導く。西島と平山の楽しげなデュオ、苦悩を振り切るような西島の厳しいジャンプ、すがる平山に無反応な西島、床を転がり激しくも美しく水死を演じる平山、低い姿勢に復讐の決意をこめた山崎のソロ、西島と山崎の決闘など、様々な見せ場に3人の異なる持ち味が生きていた。西島の踊りには王子らしい柔らかさがあり、平山のオフィーリアは温室育ちというより野に咲く花のイメージで、山崎は実直さと武骨さをまとっていた。ただ、原作を簡略化したため、ハムレットの苦悩の矮小化は仕方ないとしても、作品のポイントであるオフィーリアの視点が明確ではなく、どこか中途半端な印象を受けた。

 なお、笠松泰洋の音楽は効果的だった。オフィーリアはフルート(木ノ脇道元が秀逸)、ハムレットはバイオリン(守屋光一郎)、レアティーズはチェロ(向井航)、三人をつなぐハープ(神谷朝子)と、登場人物に寄り添い、その時々の感情を奏でていた。確かに、ダンスと語りと音楽が拮抗した、意欲的な舞台ではあった。


毬谷友子、西島千博、
平山素子、山崎広太

平山素子、毬谷友子、山崎広太

西島千博、平山素子、
毬谷友子、山崎広太
(2月2日、愛知県芸術劇場)