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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2007.01.10]
From Osaka -大阪-

(BMB)馬場美智子バレエ団『ラ・シルフィード』

 兵庫県の馬場美智子バレエ団が『ラ・シルフィード』を上演するのは何回目だろう。同団初演は1997年。キーロフ・バレエ団からN・スピッツナー女史を招き、キーロフでも上演されているブルノンヴィル演出版に基づくエリザ・マリアーニ・フォン・ローゼン版を直伝してもらった。スピッツナー自身がマッジを、当時キーロフの新進ダンサーだったヴィチェスラフ・サマドゥーロフがジェームスを演じた舞台は、程よい緊張感に満ちていた。バレエの本山から教わったこの作品は、馬場バレエ団の財産となり、再演も何度か行っている。もしかしたら、この作品を上演することは、同バレエ団にとって、ある意味、初心に戻ることであり、さらに発展しようとするエネルギーを生むのかもしれない。どちらにしても、「財産」を持つバレエ団は幸せだ。

 


「ラ・シルフィード」

「ラ・シルフィード」

「ラ・シルフィード」


 主役のシルフィードは、平松幸子。冒頭のポーズが美しく、一気に観客をロマンティック・バレエの世界に引き込んだ。美しいつま先をさらに繊細に使い、軽やかに踊る。ていねいな動きは、役を大切にしていることが明らかで心地よかった。エフィ役は、エキゾチックな美女、平野亜美。彼女も役を良く心得ていて、どの演技も説得力があった。マッジ役は岩本正治。彼にとって得意の役だが、いつも新鮮に感じさせるのが、この人の素晴らしさだ。恐ろしさには妖艶さが加味されて、より不気味。手の指使いも巧みで、ジェームスを、身体的にも精神的にも追い込んでいく様は圧巻だった。ジェームス役のゲスト、アンドレイ・クードリャは、さすがに名門キエフ・バレエ学校を卒業しているだけあり、足さばきは美しい。しかし、この役を踊るには、もう少し軽やかさが必要だ。ブルノンヴィル・スタイルを正しく習得しないと、独自の「軽やかさ」は身につかないのかもしれないが。だとしたら、そのような機会はないものか。技術力をもち素直なクードリャなので、次のステップを期待したい。

 


「ラ・シルフィード」

「ラ・シルフィード」

「ラ・シルフィード」


 

『ラ・シルフィード』の余韻も醒めないうちに始まった『カルメン』は、フラメンコの東仲一矩の演出振付。ホセを東仲が、カルメンを、平野亜美が演じた。エフィ役とは一転、長いスカートに、大きなショールをまとい登場した平野は、外見的にはこの役がとても似合う。情熱的な大きな眼も、漆黒の髪もカルメンそのものだ。しかし当然ながら、バレエ・ダンサーの彼女は、フラメンコを踊るには無理があり、かといってジャンルの垣根を越えた「ダンス」の域に行き着けたわけではない。ただ、ひとつの冒険として、挑戦としては画期的だった。
(12月1日、兵庫県芸術文化センター中ホール)

「ラ・シルフィード」