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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2006.12.10]
From Osaka -大阪-

青少年に送る舞台鑑賞会バレエ『ドン・キホーテ』全幕

 主催は大阪市と(財)大阪都市協会。文化・芸術、特にバレエへの支援は、ほとんどなかった大阪市としては画期的な催しだった。プログラムは、松田敏子らによるバレエ解説のあと、矢上恵子作・振付『Gebet』と柳原麻子&法村圭緒主演の『ドン・キホーテ』上演。チケットが発売とともに売り切れたというのも納得できる。


『Gebet』

『Gebet』

『Gebet』

 『Gebet』は、今年夏のK★バレエスタジオコンサートで初演された。初演時のプログラムに、「神本君に捧ぐ」とあるのは、同スタジオと親交が深かったカメラマン神本昌幸(今年1月、30歳という若さで逝去)の追悼の意である。再演となった今回は、直接的な弔いというより、神の存在を問い、死生観を示すかのような深遠さを感じさせた。といっても振付は全く理屈っぽくはない。冒頭、白い布から転がり出てきた少女は、下界に送られた神の使いか、あるいは、天へと昇った魂か。何を示唆するのか、そこに正解はないだろう。見る者の想像力を掻き立てるのは、コンテンポラリー・ダンスの大きな力だ。やがて、男性ダンサーが舞台に走りこんできて激しいダンスが始まる。矢上ならではの迫力あるダンスは、ときに、神懸り的な巫女舞やシャーマンの踊りをも想像させる。連続したジャンプ、さらにリフトでの移動、全身で鋭角や曲線を描くといった様々な動きが、リズムを切り刻むようなスピードで展開されていく。周到に練られた振付だ。フィンランドの民族音楽は、どこか懐かしさを湛え、観るものの心を誘う。ラストの群舞は明るく優しい。救い、あるいは浄罪か。とにかく希望を抱かせるラストだった。



『ドン・キホーテ』1幕

『ドン・キホーテ』2幕

『ドン・キホーテ』2幕

 『ドン・キホーテ』は短縮版。バジル役の法村圭緒は、さすがに観客を楽しませる方法を熟知していて、サービス精神も旺盛。若いパートナーへの心遣いも優しく、好感度は非常に高い。だからこそ、もっと自由に踊ることも可能なはずだろう。キトリ役、柳原麻子は、大役を見事に果たした。メルセデス役の竹中優花は艶やかで、町の男、恵谷彰のダンスもスパイスが効いていた。登場場面で場内の笑いを取ったのは居酒屋の女役、矢上恵子だ。演出も手がけた松田敏子は可愛らしいキューピット役。だがヴァリエーションでは、美羽礼加と的場涼香が分身のように現れて、超人的な回転などを披露した。結婚式の場でヴァリエーションを踊った吉田千智のラインの美しさも印象深い。全編、見どころ満載だった。

 大阪(関西)は優秀なダンサーや振付家を多く輩出している地。大阪市主催のバレエ公演にはまだまだ多くの可能性がある。是非、次回開催を期待したい。
(11月3日、森ノ宮ピロティホール)

『ドン・キホーテ』3幕
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