ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2006.11.10]
From Osaka -大阪-

オハッド・ナハリン作『BLACK MILK』、貞松浜田バレエ団

「中ホールでは席数が少なすぎるのでは?」と思えてしまう盛況だった貞松浜田バレエ団の『創作リサイタル 18』。幕開けは、今年各コンクールの創作部門で入賞した、竹中優花、武藤天華、瀬島五月のソロ3作品。3つとも良かったが、特に竹中優花の『あなたの声が聞こえる』を観ていると、この人は美しいだけのバレエ・ダンサーではないなとつくづく思える。表現の幅が、近年大きく増しているようだ。

 続いては、長尾良子振付の新作『セ・シ・ボン  C'est Si Bon』。女の子の可愛らしさや“やんちゃな”感じを活かし、芦内雄二郎を中心に男性も明るく踊る人生賛歌のような作品。ダンサー1人1人の個性や持ち味が活かされるところも多々あって、素直に楽しめた。



『セ・シ・ボン』

『BLACK MILK』

『BLACK MILK』

そして2部は日本初演のオハッド・ナハリン作『BLACK MILK』、貞松正一郎、川村康二、アンドリュー・エルフィンストン、武藤天華、大西修太郎の5人が踊った。作者ナハリンは、踊りについて具体的な意味はほとんど語らないが、観る私たちや踊るダンサーたちは、内容について色々なことを思う。私は個人的にタイトルを見て、また舞台上に出てくる黒い液体の入ったバケツを見、それを体に塗ることによって起こる争い、洗い流すことによって攻撃的ではなくなるーー力も絶え絶えになる・・・状態を見て、その黒い物が頭の中で現代社会の中での“石油”のイメージと重なった。

 最後の演目は、昨年の文化庁芸術祭大賞を受賞した、ナハリン作の『DANCE』。この作品は、幕間の休憩中に一人のダンサー(瀬島五月)が、フラッと幕前で踊り出し「始まってるの?違うの?」というような所から始まるのだが、昨年も見た観客が多い今回、どうするのかな?と思っていた。2部が終わると、客電が付き、瀬島が黒スーツ姿で幕前に出て「休憩ーー!」と叫ぶ。でもほとんど、席を立つ人はいない。瀬島はまるで客席整理係員のように、そのまま仁王立ちで客席を見つめる。その無表情が少しずつ変化していき、体が揺れだし、踊りになっていく・・・素晴らしい間合い! 幕が開いてのダンスは、質の高い女性ダンサー15人によって迫力たっぷり。どこか原始宗教の儀式のようであったり、朗読される「狂気と正気を分ける細い線・・・疲労と優雅さの共存」と言った言葉に同調していく踊りであったり、そこに観客を巻き込んでのパフォーマンスが違和感なく織り込まれていく。何層もの“DANCE”が重なった不思議な魅力・・・昨年より更に確実にパワーアップされていた。
(10月14日 神戸文化中ホール)



『DANCE』

『DANCE』

『DANCE』