ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2006.10.10]
From Nagoya -名古屋-

愛知県美術館の「愉しき「家」」展関連企画 <息づく家> パフォーマンス


愛知県美術館で開催されている「愉しき「家」」展に合わせて、3つのダンス・パフォーマンスが開催された。展覧会場に設置された異なる3つの家の作品を、ダンサーの動きと音楽が関わることによって、いきいきとした、息づく家へと変貌させようという試みのこのパフォーマンス。入場無料ということもあって、午前、午後それぞれ90分の2回の公演に総勢400名もの観客が訪れた。
 最初のパフォーマンス空間は、美術館のアトリウムに設置してある乃美希久子の作品『空き家』。
 名古屋在住のダンサー、倉知可英、高木理恵、石川雅実の3名と中村新&田口美郷という名古屋音楽大出身のパーカッション・デュオの計5名が、この家でコラボレーションを繰り広げた。仏のジャン=クロード・ガロッタ主宰グループ・エミールデュボワから帰還したばかりの倉知、9月後半からのドイツ行きを決めた高木、そして愛知でじっくりと腰を据えて活動をしている石川と、様々な場所で活動しているダンサーたちは、海の家を思わせる家の中に敷かれたゴザに寝転がったり、床のクッションを利用して、家の鴨居にぶら下がったり、屋根に上ったりと、30分の間、思い思いに「家」や「音」たちと戯れ続けた。途中、音楽家が動いたり、ダンサーが音具で遊んだり、観客の子どもたちとコミュニケーションをとったり、即興ならではの驚きが盛り沢山のパフォーマンスだった。
 次の30分は、美術館のロビーに設置された大きな作品、牛嶋均の『人智の研究 ver.3動く家』にて、ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団のソロダンサーとして活躍していたジャン・サスポータスと、愛知県西尾市出身で国際的にも活躍の著しいリコーダー奏者の鈴木俊哉が初対面の競演。
 ジャングルジムのような鉄のオブジェとダンボールで簡素に創られた小さな家並みに、突如おばあさんの格好をして現れたジャン。侵入者のこのおばあちゃんは、『オールド・ウーマン』という彼のソロ作品からの引用ということらしい。小さく、腰を屈めたおばあちゃんが、ゆっくりと歩みを進め、大きな荷物を運んでいく。そして奥に配置されているダンボールに入ったかと思うと、出てきたのは、大きな男。おばあちゃんの生んだ子どもという設定だろうか。この上半身裸の男は、鉄パイプをもったり、鉄のオブジェに上ったりしてひとしきりパフォーマンスを行うが、いずれもリコーダーの音と呼応するように穏やかだ。しかしなんという表情、激しい動きは一切排除されているのに、顔の表情だけでこんなにも雄弁なんて・・・。舞踏のようにゆったりとした時間だが、緊張感は全く途切れることなく、多くの観客がジャンの姿に釘付けになっていた。
 そして最後の家は、美術館の会場内にある『窓の家:第3の皮膚』。東ドイツで破壊された家から集めた窓だけで造られた家では、コンテンポラリー・ダンスの山崎広太とコントラバス奏者の齋藤徹が濃厚なパフォーマンスを行った。家を取り囲むようにして行われたパフォーマンス、齋藤と山崎は互いに見ることができるのはわずかの間だけ。互いに家を感じ、音や動きの気配を感じながら、泳ぐように遊ぶように空間にパフォーマンスをおいていく。ガラスの反射やすり硝子などの陰影の効果も抜群で、はかなげで、かつエネルギッシュな美術とコントラバスの音色、山崎の動きが一体となって、まさに家そのものが生き返ったかのように感じられた。
(9月10日 愛知芸術文化センター11階・愛知県美術館)


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