ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.09.10]
From Osaka -大阪-

●江川バレエスクール第51回発表会

 1934年創立の兵庫県西宮市の江川バレエスクールは、新国立劇場バレエ団の湯川麻美子はじめ、香港バレエ団のプリンシパルで今年ブノワ賞にノミネートされた藤野暢央、同じく香港バレエ団の富村京子ら優秀なダンサーを輩出している。江川幸作・のぶ子が亡くなった後も、太田由利ら教え子がその遺志を継ぎ、昨年は第50回発表会を成功させた。


『FAREWELL』

『そよ風の中で』

『礼拝の庭』

 さて、今年の発表会も盛りだくさん。子どもたちが踊る演目に混じって、モダン作品や湯川のソロ、さらに深川秀夫の新作が上演されるなど贅沢な内容だった。
 湯川のソロ『FAREWELL』は深川秀夫作品。シンプルなオレンジ色のワンピース姿の湯川がシューベルトの音楽にのせて、しっとりと踊った。太田由利&大寺資二の『そよ風の中で』も深川振付。リストの音楽にのせ、すがすがしく舞う。恋人同士のデュエットのようだが、さわやかな大寺が「そよ風」のようにも思えた。風と戯れるような太田の動きが、そう思わせたのかもしれない。
『礼拝の庭』は、現代舞踊の河合美智子が振付けた。泉敦子、古塚仁美ら女性ばかり8人のダンサーが、滑らかな動きを見せる。不思議な幻想性が漂う作品。箱を積んだようなセットは廃墟のようにも見えた。

ラストは、深川秀夫の新作、『シベリウス・コンチェルト~水の精と若者~』。シベリウスを生んだフィンランドは、森と湖の国。 その森や湖には、いかにも妖精が住んでいそうだ(童話で有名なムーミンもフィンランド生まれ)。明るいブルーの水面には森の木々が映り、深い緑色に見える。 幕開き、目に飛び込んできたのは、そんな湖の底の風景だった。逆さに吊るされた木々。たゆたうような藻や枝。青と緑が混じったような光は、神秘的な湖の底の世界を描き出していた。 泉敦子、岡田明子を中心とした「水の精」たちは、自由に伸び伸びと踊っている。深川の振付が音楽的なのは、いまさら言うまでもない。それは単にリズムやメロディを生かすという域を超えている。 チャイコフスキーならチャイコフスキー独自のロマンティシズムを、あるいはメンデルスゾーンなら、そこにほんのり漂う甘さなど、作曲家の個性もが、その振付に匂い立つ。 シベリウスを深川振付で聴くのは初めてだったが、とてもドラマティックな響きに思えた。コンツェルトにのせて、「水の精」と若者は出逢う。岡田と大寺、泉と窪田弘樹のカップルが誕生する。 最初は、人間の若者と「水の精」の恋愛のようにも見え、恋人たちは、他の「水の精」と対立するのかと思ったら、若者も「水の精」たちとともに一緒に踊っている。若者も、やはり水の精だったのだろうか。 美しい散文詩のような作品に仕上がっていた。

『シベリウス・コンチェルト』
(8月2日、神戸文化ホール)
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