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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.07.10]
From Osaka -大阪-

●法村友井バレエ団『シンデレラ』

 法村友井バレエ団が『シンデレラ』を上演するのは8年ぶり。豪華な美術や衣裳、そして演出そのものにも法村牧緒の「こだわり」が感じられ、それは8年前よりも充実していた。

プロコフィエフ『シンデレラ』は、たとえば『白鳥の湖』『ジゼル』などのように「定番」がないために、様々な演出が世界中に存在している。法村版はロシア版に基づいているものの、やはりオリジナル。楽しいのは、12時に宮殿を去ってしまったシンデレラを追う王子が世界中を旅し、そのまま星の世界まで飛んでいってしまう場面だ。アラブの国で、王子が座ったじゅうたんは、そのまま宙に浮かぶ。いわゆる「宙乗り」は、童話の世界をリアルに描いてくれた。関西のバレエの良さの一つは、こういうサービス精神だと思う。とかく関西バレエというと、派手、しかも基本を無視した大技披露などマイナス要素で語られることもあり、下品とまでいわれることもあるが、それはあくまで関西の一部について(しかし、派手なのでそれが目立ってしまう)。それが証拠に、王子役の法村圭緒の品格については誰もが認めることだろう。


もう一つ関西バレエの良さが表れたのは、コミカルな演技。継母役、大力小百合は、上品で美しいだけに、少し崩した仕種が、かなり可笑しい。義理の妹役、辰巳紗代の不思議な存在感も笑わせてくれた。父親役(井口雅之)には、コミカルな演技の場面はないが、妻(シンデレラの継母)や義理の娘、そしてシンデレラの間で、あたふたする様子をリアルに描き、やはり笑わせてくれた。法村牧緒が自ら演じたダンス教師役もステップ披露は、あくまでも上品に、しかし真面目な表情で真剣にレッスンする様はチャップリンのような、とぼけた面白さがあった。

シンデレラ役は室尾由紀子。はかなげなタイプではなく、第一幕から明るく演じ好感が持てた。場面ごとに様々な表情を見せ、何通りもの笑顔を浮かべることができる人だ。法村圭緒はスマートな演技の中にも情熱を感じさせていた。
堤本麻起子は輝く美しさで仙女役を好演、秋の精=高田万里は優しく、春の精=上田麻子はラインの美しさを見せた。夏の精役は圭緒の妹、法村珠里。柔軟な身体を生かした伸びやかな演技を見せ、記念すべきソリストデビューを果たした。トンボ役、前塚恵里子の歯切れのいい演技も印象深い。
特筆すべきは、子役たちの活躍だ。同バレエ団は、歴史ある法村友井バレエ学校を併設していて、子役はそのバレエ学校生。一幕で、まずシンデレラの味方になる、ねずみたちが可愛い。12時を告げる「時の精の小人」たちは全員スタイルがよく、赤い衣裳が似合っていた。かつては同バレエ団元プリマの杉山聡美も、この役を演じていたそう。今回の小人たちの中から「次代のプリマ」誕生も決して夢ではないだろう。演奏は堤俊作指揮、関西フィル。



(6月11日、フェスティバルホール)