ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.03.10]
From Osaka -大阪-

●カンパニーでこぼこ第一回公演『コッペリア』

 カンパニーを主宰する脇塚力が企画・製作・演出・主演。ひばりが丘バレエアカデミー所属の脇塚は、関西の様々なバレエ団・バレエ学校公演に[ひっぱりだこ]のダンサー。最近は、東京(谷桃子バレエ団公演など)でも活躍中だ。基礎に忠実で安定感があり、なにより表現力が豊か。その明るいキャラクターは、たとえ脇役でも光ってみえる。その彼が、この公演を企画した。
 たしかに、そのチラシも楽しかった。~鍵穴の向こうにはコッペリウスが書物を手に、なにやら物思いにふけっている、という図のオモテ面、ウラ面は、鍵穴を覗き込んでいる少女たち~。「覗いてみたい」と思わせることに成功したのか、第1回公演ながら客席は活気づいていた。

 ヒロイン、スワニルダは西田佑子。さすがに法村友井バレエ団で数々の主役を踊ってきただけあり舞台に登場しただけでオーラを感じさせる。表情は生き生きしていて、伸びやかに踊っていた。スワニルダの友達役、合田祐子、安原梨乃らも可愛らしい。
演出面で特に面白かったのは第2幕。舞台はコッペリウスの家の中である。従来のほとんどの演出では、第2幕の舞台は、コッペリウスの家の2階という設定だ。だが、脇塚演出の第2幕は1階。その中央上部に階段でつながるバルコニーがあり、そこにコッペリア人形が鎮座している。こう書いただけでは、1階でも2階でも、どちらでも同じように思われるかもしれないが、舞台の印象はかなり違う。舞台は当然、立体感が増す。だから、足が異様に長い人形(彼は、2階部分に腰かけている)も登場させることができる。また、コッペリアが人形だと知るまで、スワニルダはなんども階段を駆け上がり、下りてくる。その必死な様子も面白くて、微妙な「間」も効果があった。

脇塚版では、コッペリア人形も個性的だ。それは美少女というよりは、黒いチュチュを身につけたブロンド髪の色っぽい女性(ジプシーなども踊った西尾睦生が扮していた)。スワニルダがコッペリアの衣裳に着替え(このシーンもカーテン越しに見せた)、ブロンドのウィッグをつけたスワニルダが登場する場面の西田は心底楽しそう。茶目っ気たっぷりに艶やかさをふりまいていた。
さて、やっと目を覚ましたフランツに抱きつこうとするスワニルダを、彼は優しく拒絶する。「僕には他に大事な人がいるから」と。彼はスワニルダをコッペリアと思い込んでいるからだ。自分を大切に思ってくれているフランツの気持ちに触れたスワニルダは、優しい表情を浮かべながらブロンドのウィッグをはずす。すべてを理解したフランツ。恋人同士は本当に幸せそうー。心温まるシーンだった。

郷原信裕は、ダンディで、かつノリの良いコッペリウスを好演。市長夫人の岩本正治は、その存在自体で笑わせながらも脇役に徹して絶えず舞台全体を見守っていた。市長役とともにチャプリンのような人形に扮した松原博司も役を心得ているようだった。ダンサーの熱演は、客席に伝わっていた。第一回公演は大成功だといえるだろう。
(2月20日、いたみホール)