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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.03.10]
From Nagoya -名古屋-

●バレエグループあすなろ第6回公演


 名古屋在住の、岡田純奈、鳥居ゆき子、川口節子の3名が1993年に設立した<バレエグループあすなろ>の6回目となる公演を見た。<あすなろ公演>は、3つの団体がバレエ団の垣根を越えて、2年に一度開催している合同公演で、ダンサーの育成と向上の場として定着しつつある。特に、ここで発表される創作作品は、川口節子の新しい作品創造の貴重な機会として、重要な役割を担っているといえるであろう。それは2年前に発表したストラヴィンスキーの『結婚』や、今回の上演したシェーンベルクの『浄夜』といった難解な音楽へ振付された数々の作品たちにも象徴されている。

 パートIの古典作品は『眠れる森の美女』より「プロローグ」と「オーロラの結婚」を組み合わせ、クラシックバレエのもつ魅力を発揮できるように構成されていた。そこには本公演のパンフレットの公演趣旨にもあるように、舞台を通じてバレエテクニックの充実と向上を目指した数々のの工夫がみられる。各バレエ団のオーディションで選ばれたダンサーたちのなかでも、主役の2人、大寺資二と中谷友香は王子とオーロラの役柄にぴったり。ゲスト出演のベテラン大寺の王子ぶりは言うに及ばず、川口節子バレエ団の中谷も丁寧な踊りで、清楚なオーロラの初々しい魅力を醸し出していたが、もう少し突き抜けるような強さが出せるようになるとさらに良いと思う。この作品の中では、シンデレラを演じた岡田純奈バレエ団の山本佳奈が、恵まれた容姿と伸びやかな肢体に自然な演技で、今後の成長が楽しみに思えた。





 パートIIは、創作作品『浄夜』。リヒャルト・デーメルの詩の一編からインスピレーションを得て、シェーンベルク作曲の同名の音楽を舞踊化した作品。川口節子の選曲の良さと、音楽から受けた印象を明確に作品化できる演出力には、非凡なものがある。今回の作品では、一定方向に歪んでみえる大きな木を描いた紗幕を東西に何枚も吊った舞台美術(愛知県芸術大学デザイン)に、舞台上ではセリを使った池を配す。これだけでも十分に音楽のもつ情景が一瞬にしてイメージできる舞台を作り出している。この森に現れた1組の男女、そこに、女性の衝撃の告白、そして受け入れがたい女性の裏切りを受け入れ、慰める優しい男性の言葉から発想された音楽が続く。日常の世界が思わぬ展開で、急激に歪んでいくさまを、森役のアンサンブルダンサーたちは、変形したポースを何度も繰り返し重ねていくことで表現していった。劇場の特色を生かそうと試みた演出の中で、例えばセリを利用して作った池で戯れる水鳥たちの姿が、セリの高さや紗幕の加減で、あまり見えなかったことなど、せっかくの効果がいかされずに、もう少し丁寧な作業が必要では、と残念に思われる場面もあった。しかしいつの時も、照明や舞台美術の効果など、実際の劇場リハーサル以前には想像のつかないことも多い舞台作品創造。だからこそ、無難にまとめていくことの多い振付家たちの中で、新しい可能性へと突き進む川口のような創作態度にこそエールを贈りたいと思う。
(2月18日 名古屋市芸術創造センター所見)