ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.03.10]
From Nagoya -名古屋-

●ダンスオペラ『青ひげ城の扉』振付シルヴェストリン、白河直子も踊った



「青ひげ」はぺローの童話で有名だが、愛知芸術文化センターが主催した『青ひげ城の扉』は、ハンガリー生れのベラ・バルトーク作曲のオペラに基づいたダンスオペラである。オペラの台本を書いたのは、やはりハンガリーの詩人、ベラ・バラージュ。

 演出・振付・映像・美術を、フォーサイスのフランクフルト・バレエで踊り、日本でも創作活動を展開しているイタリア人のアレッシオ・シルヴェストリンが手掛けた。ダンスはH・アール・カオスの白河直子が若い妻ユデットとアレッシオが青ひげ公、三人の妻は浅見紘子、中谷友香、米沢唯である。観世流の能楽師で近年、ダンスとのコラボレーションに積極的な津村禮次郎が青ひげ城の魂魄になる。
 青ひげ公を歌ったのはハンガリー国立歌劇場のソリスト、ぺーター・フリード(バリトン)、ユディットも同劇場のアンドレア・ツァント(メゾ・ソプラノ)、指揮はミュンヘン出身の若手、アレキサンダー・ドゥルチャー、セントラル愛知交響楽団が演奏した。

 ドラマが展開するポイントのひとつは暗黒。アレッシオの創作の際の言葉によると、「何か暗いものがあるから身体が存在する。城の中にそれはあり、時はそれを隠す。ユディットは暗いものをみつけ、青ひげ公の身体をみつめる。この暗さは身体を通して説明される。身体性の距離感と時の隔たりの関係----記憶が存在するところ」とある。
 ひらたく言うと、若いユディットは青ひげ公と結婚し、彼の城に来たが、理解を越えた得体の知れない暗黒を感じ、解明するために閉ざされた扉を開けることを要求する。すると、城に籠っていた魂魄が舞い、過去の三人の妻が記憶の空間を変幻し、曼陀羅のような楼閣が見えてくる。と、私が書くとまるでB級ホラー映画だが、青ひげの物語の暗黒は、中欧のルーマニアなどで生れた吸血鬼話などのもつ暗黒に通じるものがある、と思うのだが。

 イタリア人のアレッシオはさすがにセンスがいい。このひとつ間違うとおどろおどろしい寓話になる物語を、あっさりと、まるで建築家が描くパースのように明解に構成を捉え、鉛筆のスケッチ画のようなタッチで描いた。
 白河直子とアレッシオのダンスは、音楽と共鳴して、ほとんど休むことなく一貫して踊られる。音楽は青ひげの城の宙空を表し、ダンスは二人の主人公の「気」流れを表しているかのようである。
 青ひげの過去の三人の妻は、象徴的に描かれており、劇中は「黒子」の衣裳で装置を動かし場面転換をする。そして三人の妻は、朝の女、昼の女、夕暮れの女であり、ユディットは真夜中の女である。結局、7番目の扉は開けられた。しかし、青ひげの夜は永遠に明けない、といった意味の台詞で幕が下りる。7番目の扉を開けたのは、青ひげ自身だったのか。ミステリアスなエンディングであった。
(2月11日、愛知県芸術劇場大ホール)