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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.01.10]
From Osaka -大阪-

●馬場美智子バレエ団『ラ・シルフィード』



 馬場美智子バレエ団が『ラ・シルフィード』を上演するのは今回で3度目。97年の初演時には、ロシアのキーロフ・バレエからナターリャ・スピッツナーを振付・指導に招き、キーロフ・バレエで上演しているブルノンヴィル/E.M・フォン・ローゼン演出版を上演した。スピッツナー自身が魔女マッジを演じ、ジェームス役は、ヴィチェスラフ・サマドゥーロフ、ガン役はピョートル・オスタリソフというキャストも豪華。観客も、舞台上のダンサーたちも本場の演技に興奮した。2度目の上演は、その3年後。初演と同じ女性主役陣の演技はより充実していた。

 そして今回。まず、会場をより広い川西市文化会館大ホールに移したのは、正解だった。ヒロイン2人(シルフィード=平松幸子、エフィー=平野亜美)は初演からこの役を踊っているので、役に対する余裕が見える。平松の足先は美しく、片手を胸の前に添える「シルフィードのポーズ」も自然。かわいらしいこのポーズは、多くのダンサーが、ビデオや写真を見て真似をするが、やはり、きちんとした指導者から作品(踊り)とともに学ばないと、単なる「モノ真似」になってしまう。平松は、たえず空気に漂うような存在を示していた。そんなシルフィード=平松とは、まったくタイプの違う平野亜美がエフィーを演じたのは効果的だった。目鼻立ちがくっきりした平野が演じたエフィーは、ジェームスのことを真剣に愛する心優しい女性。友人たちと踊るキャラクターダンスでもひときわ生き生きしていた。現実世界をまっとうに生きる、そんな彼女には、妖精シルフィードの姿は見えない。ジェームスが消息を絶ってすぐに、他の男性(ガン)と結婚することが出来るのも、現実を生きるエフィーならではか―鮮やかに踊る平野を見ていると、そんなことまで考えた。

 妖精シルフィードから愛されるジェームスは、だからこそ、どこか幻想的でなくてはならない。たとえ、マッジを追い出すような気の強さはあっても、だ。ジェームス役のダンサーは、クリアーな動きを要求される。足裁きも正確でなければならない。今回のジェームス役は、ウクライナ国立キエフ・バレエ学校出身のアンドレイ・クードリャ。さすがにポジションの曖昧さはないが、少々、不安定な箇所も見受けられた。ほかの舞台での彼の活躍から考えれば、もっと完全を目指す演技が出来たはずだと思う。要求が高くなるのは、ジェームスという役ゆえだが。
 群舞のダンサーには世代交代があったのか、全体の統一性には少し欠けるが、緊張感にあふれた舞台をつくりあげていた。『ラ・シルフィード』に対して、同バレエ団主宰者、馬場美智子と藤永弘美の真摯な思いは伝わってきた。同バレエ団が誇るべきこの作品。これからも踊り継いで欲しいレパートリーだ。
(12月18日、川西市民文化会館)