ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2004.12.10]

"和"を活かした桧垣バレエ団の『黒髪の伯爵夫人 みつこ-MITSUKO』

『源氏物語』など日本の題材を使った創作作品の制作に力を注ぐ桧垣バレエ団。今回上演された『黒髪の伯爵夫人 みつこ-MITSUKO』は、このバレエ団によって1998年に初演された作品で、明治時代にオーストリア・ハンガリー代理公使として来日していたハインリッヒ・クーデンホーフ伯爵と結婚してヨーロッパに渡った日本女性みつこの生涯をバレエ化したもの。演出は前原和比古、振付及び主役のみつこを小西裕紀子。

 舞台は、日本での夫との出会いからヨーロッパでの生活、みつこの死までを描く。前半の日本のシーンは、京舞も活かした振付、最初と最後のシーンには、舞台上で藤舎名夫が演奏する横笛の音や、能を意識した動きなども取り入れて、みつこの精神性の中に“日本的なもの---和”が息づいていることを上手く現していた。

 また、ヨーロッパでの社交界のシーンなどを観ていると、日本的な題材をバレエ化したというだけでなく、バレエであること自体も自然であったと思える。
 主演の小西裕紀子は、明治の日本女性のイメージである、見た目は華奢でありながら芯は強い、そんなところをベテランのプリマらしく上手く表現。実際に細い首もとをはじめ体型も華奢、押さえた踊りに品が感じられた。また、特にラストの死の直前のシーンは、人生を重ねているからこその味が出ていた。ハインリッヒ役の志村昌宏も、やはり上品。きれいに舞台を運んでいた。他に前半、日本のシーンで箱崎絢子、大槻夏子、大倉現生による『かっぽれ』という踊りが、コミカルでテクニックも活かされており、印象に残っている。

 そして、このバレエ団を観ていつも感じることだが、スタッフがまた良い。暖簾を取り除くだけで建物の外から中へと変化させるなど、舞台に対する工夫は、作品作りそのものを分かった上で練られていることを感じさせるもので素晴らしい。演出の前原自身が舞台の専門家だからこそ出来ることなのだろう。船坂義一プランの照明も効果的だし、桧垣美世子が手掛けた和洋をミックスしたような衣装も良い。そして最後にもうひとつ、無料で配られたじゃばら折のプログラムは、コンパクトな中に必要な情報がきちんと盛り込まれ、デザイン的にも質の高いものだった。
(10月31日、京都府立府民ホールアルティ)