ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2004.11.10]
From Osaka -大阪-

全く違うタイプの3演目を上演、貞松浜田バレエ団『創作リサイタル16』

 毎年、趣向を変えて、さまざまな創作作品を楽しませてくれる貞松浜田バレエ団の『創作リサイタル』も16回目を迎えた。幕開きは、今年のそれぞれのコンクールで入賞した短い2作品である。まず、同バレエ団の瀬島五月振付の『白い風が吹く丘』、出演は廣岡奈美。自由な軽さ、楽しさを感じさせる作品で廣岡のバレエテクニックも活かされていた。2作目は加藤きよ子振付の『月の落とした影』、出演は竹中優花。観客に迫る表情が印象的な美しい作品だった。

 そして続いて、3つの演目のうちのひとつ『キエロ』。パリ・オペラ座やナンシー・バレエなどでダンサーとして活躍し、現在バレエ・ビアリッツの監督を務めるティエリー・マランダインの振付である。貞松浜田バレエ団出身で、現在オランダのイントロダンスでダンサーとして活躍している堤悠輔が、アンントワープに留学中にこの作品に出会い「良い作品で、貞松浜田バレエ団のダンサーたちに合いそう」と、強く推したことが上演のきっかけで、日本初演となった。“キエロ”という言葉は、スペイン語で“愛する”、“アイ・ラブ・ユー”という意味。マランダインは、自分のカンパニーの一緒に歩んできたダンサーたちのために、それぞれのダンサーへの愛を込めてそれぞれのソロを含むこの作品を振付けたそうで、男女の愛についての作品というよりは、彼のダンサーに対する愛を具体化した作品と言えそうだ。南米の音楽なども多用される中、ユーモアを感じさせる振りが楽しい。全体的にバレエ・ダンサー特有の体のラインを活かせる作品で、このバレエ団の良さが出ていた。
『キエロ』

 2つ目は、イスラエルのダンスカンパニー、バットシェバの芸術監督を務める稲尾芳文振付の『スキン・グラウト』。何というのだろう? 無音の多いこの作品に、理由なく引き込まれてしまう・・・。なんだか、言葉に出来ないことだからこそ、ダンスにして、だからそのまま魅力を感じる、直接感じることが出来る・・・そんな作品。この作品の最初に無音の中でソロを踊った貞松正一郎をはじめとして、それぞれのダンサーも良かった。
 
『スキン・グラウト』

 ラストは総演出を貞松正一郎、彼の気心の知れた3人の別ジャンルの振付家、川口竜也(タップ)、森優貴(コンテンポラリー)、吉野早織(ヒップ・ホップ)に、それぞれのパートを任せた一風変わった作品である。旅人(井勝)が思い出に浸る姿を狂言回し的に使い、さまざまなジャンルのダンスを観せてゆく。タップやヒップ・ホップは、団員のほとんどか全員が初めての挑戦である。中のコンテンポラリーで竹中優花と川村康二が踊ったパートは振付もダンサーも良く、恋人の淋しさ、哀しさが美しく表現されていた。続いて同じ森優貴振付の、8人の踊りで、武用宜子の踊りがとても印象的だった。彼女の踊りは、この辺りからラストのヒップホップまで、生き生きとした魅力に溢れているようにみえた。
『トリプル・オン・ワン』

 ラストのヒップ・ホップ。バレエ・ダンサーが短期間にここまでヒップ・ホップの雰囲気を出せるんだと驚くと同時に、中でも若手の女性ダンサーたちが心から楽しそうに踊りに溶け込んでいて、バレエの時とはまた違う、とてもキュートな感じ。最後は会場からの手拍子が広がって、こちらまで踊り出したくなるフィナーレだった。(10月23日 神戸文化中ホール)