ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.11.10]
From Nagoya -名古屋-

珍しいキノコ舞踊団『FLOWER PICKING 2004』

 珍しいキノコ舞踊団が、愛知県の郊外、長久手町にある長久手文化の家でコンテンポラリー・ダンスの公演を行った。長久手町は、2005年に開催される愛知万博のメイン会場となる地域で、劇場のすぐそばでは、ちょうどリニアモータカーなどの工事が行われていた。

『FLOWER PICKING』という上演作品は、2003年のびわ湖ホールを皮切りに、2004年には東京・目黒のホテルクラスカというデザイナーズホテルで上演され、それまでの珍しいキノコ舞踊団の作品の特徴を顕著に示しながらも、キノコの更なる進化をみた作品である。それは、空気のようなダンス、遊びの中から生まれる日常のダンスである。
 4年前の2000年に同じ愛知の愛知芸術文化センターで上演した『ウィズ・ユー』という作品では、前半にフォーラムという公共スペースを使用し、後半では劇場の舞台で上演して、日常が作品に変化する過程を楽しませてくれたが、こういった作品をさらに推し進めるように、今回の場合には、びわ湖ホールやホテルクラスカで様々な場所と遊んだかと思えば、長久手では同じ作品を劇場のプロセニアムのステージで行った。同じ作品を全く異なる場所でもなんなく行ってしまうところも、どこでも生えてくるキノコのキノコたるゆえんのようだ。

 作品の内容も実にバラエティに溢れている。日常的な雰囲気の中、テーブルで水を飲み始める女の子。「できたよ!」という掛け声があがると、テーブルの上や椅子に腰掛けた少女たちがすこしずつ動きはじめる。はじめは日常の動きをつなげているだけだが、動きは動きの連鎖を生み出し、さらに動きは拡大され、増殖されていく。次第に、テーブルやソファー、ベットなどの家具類も身体の一部のように動かされ、気がついたときには、劇場にダンスが溢れかえっている。すべてが気負うこともなく、しかし緻密にさりげなく進行していく。そこに使用される音楽や声も非常に効果的で、動きのリアリティを高めることに成功していた。

 ミラーボールが回りはじめる頃、ベッドに乗ったまま移動していく女の子、「一日のうた」を歌い一日のシーンを走馬灯のように振り返っている女性たちはまるで映画の中にいるようだ。アンニュイな雰囲気が切なさを呼ぶ。
しかしそういった余韻も切断され、途中でいきなり、観客も踊ろうタイム。これも2000年の愛知公演のときは、公演終了後に企画されたものだったが、この作品では作品中にいきなり観客も舞台に上がって踊ってしまうことになる。
その後、何ごともなかったように公演は再開されて、さらにキノコパワー炸裂でラストまで盛り上がる。民族的なエッセンスの踊りやロック調、ブレイク調と、これまでのキノコの良さを詰め込んだかのような凝縮した内容の公演だった。

 地方で開催するこのようなコンテンポラリーの公演では、集客が一番の問題となるが、こういった公演を開催する以上は、積極的に広報を行って、少しでも多くの地元の人たちが作品にじかに触れる機会を創っていただきたい。この公演を見れた観客は多くはなかったが、とても贅沢な時間を過ごせた幸せな人々だったと思う。
 (長久手町文化の家 森のホール・10月3日所見)