ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.09.10]
From Osaka -大阪-

山本紗内恵バレエスクール第4回公演「ドン・キホーテ」

 終演後の舞台袖。まだ舞台の興奮がさめず、にぎやかにはしゃぎながら楽屋に向かうダンサーたちからポツンと離れたところに、感無量といった表情の大寺資二の姿があった。松岡伶子バレエ団で『ドン・キホーテ』はもちろん、多くの作品の主役をつとめるダンスール・ノーブル。だが、今回、自身は出演せず、構成・演出・振付に徹した。プロのゲストダンサーとともに小さな生徒たちも大勢出演したにも関わらず、いわゆる「発表会色」がなく、見ごたえたっぷりの楽しい舞台に仕上がっていたのは、大寺の手腕だろう。「全員参加の舞台を目指しました」という通り、小さな生徒たちも舞台上で活き活きしていた。「生徒たちは頑張ってくれました。いままで(きちんと踊ることが)出来なかった子どもたちも、本番では、とても頑張っていました」。「がんばれ」と心の中で念じながら、舞台袖からダンサーを見守るのは、自身が踊るより大変だったという。


 キトリは、同スクール出身で現在、新国立バレエ団に所属する佐藤絵理。バジル役ゲスト、山本隆之の包み込むようなサポートと温かい演技にリードされ、表情豊かに全幕を踊りきった。エスパーダは、ヤコブス・ウィルフリッツ。キザが似合う格好良さというか、その端正な容姿と存在感は、本当にエスパーダ役にぴったり。ただ、素敵すぎて、主役バジル以上に目立つという可能性がなくはない。KUBOTA BALLET所属の彼を今回、キャスティングしたのは、やはり大寺だった。
「バジルが山本隆之さんなので、ウィルフリッツのエスパーダでもおかしくないと思いました」というとおり、二人とも洗練された演技を見せ、かつ個性が異なるため、そのコントラストが鮮やかで、お互いがお互いを輝かせていた。そこにドン・キホーテ役が、表現力豊かな岩本正治とくれば、ドラマが俄然面白くなる。ただ、これだけ豪華な男性ゲストたちだが、全幕の中で決して浮き上がって見えなかったのは、繰り返しになるが、大寺の全体への目配りの結果だろう。


 第2幕第2場のジプシーの野営地の場で、一際目を引いたのは、ジプシー役の山本庸督。やみくもに情熱的に踊るというのではなく、血の高まりを音楽とともに徐々に動きに反映させる。「野蛮」や「野生」に近いが、どこか知性を感じさせるダンスだった。本来、ジプシーの踊りは、そういう性質をもつはずだ。三島久美子は美貌が映える、大人っぽい演技。ほかに、メルセデス=新井由奈、森の女王=佐野弘枝らが役柄を理解した、ていねいな演技を見せていた。(8月3日。大阪厚生年金会館)