ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.09.10]
From Nagoya -名古屋-

パフォーマンスシアター水と油の公演『スケジュール』&『机上の空論』

パフォーマンスシアター水と油の愛知初公演が開催された。今回の公演は、第2回朝日舞台芸術賞“寺山修司賞”とキリンダンスサポートをダブル受賞した記念公演として行われたもので、受賞した作品『スケジュール』、『机上の空論』、『スープ』のうち、愛知公演では、『スケジュール』と『机上の空論』の2作品が上演された。今回の全国ツアーで『机上の空論』を上演したのは、愛知と高知の2ヶ所のみであったということもあって、この公演に立ち会えた愛知県の観客には、貴重な機会となった。

最初に上演された『スケジュール』は、東京や大阪で、すでに10回を超える上演を経てきており、安定した演技で、終始安心してみることができた。日常の風景、ある人間の一日の様々な行為を舞台にのせて、そこに交わる色々な人たちのスケジュールを交差させ、様々な人たちの関係性や世界の不条理を視覚化していく。バス停での出来事、車内でのやりとり、仕事の一場面、設定にあるのはごく普通の日常風景であるが、それは気がつくと、見たことのない、でもどこかでかすかに感じたことのあるような、そんな幻想的な風景へと転換している。

『机上の空論』は、日常にあるテーブルを舞台中央におき、そのテーブルを軸に、人間の関係性を描いた作品。みんながテーブルの近くにいるにもかかわらず、それとは気づかず別の次元で活動する人々。同じテーブルを挟みながらもまったく異なる風景を眺める人。それらは、すぐ隣にいながらも、一緒に生活をしながらもすれ違い続ける、私たち現代人に重なって見えてくる。

マイムとダンスを織り交ぜながら、個人というミクロから、世界というマクロへ、気づかぬうちに観客を導き、見えない糸によって操られているかもしれない人間の世界を投射する。マイムとダンスが綿密なメンバー間の連携プレーによって、効果的に交叉し、水と油ならではの表現を可能としていた。

「水と油」というグループ名は、「ダンス、演劇、マイムといった相反するものが融合しようとしながら、でも引き合って絶妙な組み合わせをみせる」と、そういった意図で名づけられたのだという。その最初の一歩は大きな成功となった。しかし、今後さらにオリジナリティのあるカンパニーとして継続的に評価をされていくためには、マイム・ダンス・台本・音楽といったそれぞれの素材が、さらに突き詰められ、磨き上げられていくことが必要だろう。そうすることによって異質の素材が予定調和に終わらず、「水」と「油」のように真に引き合いあうカンパニーになっていくことができると思う。

なお、『机上の空論』はこの秋、11月に東京での再演が予定されているという。(7月27・28日/愛知県芸術劇場小ホール)


「スケジュール」

「スケジュール」

「机上の空論」