ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

唐津絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.08.10]
From Nagoya -名古屋-

松岡伶子バレエ団アトリエ公演

 松岡伶子バレエ団のアトリエ公演は、若手の振付家の創作作品などに積極的に取り組む公演として、今年で12回目を迎えた。過去の作品では、まだ日本では無名だった島崎徹をいち早く見込んで起用したり、創作バレエの望月則彦に新作をお願いしたりと、早くから新しい試みを行う場として、機能してきた。

 最初の第1部と第2部では『パキータ』や『コッペリア』、『海賊』等の古典の演目を中心に6作品が上演された。その中でもユニークだったのが、松岡璃映と大寺資二の共同振付による『小さな天使たち』。年齢の様々な男の子たちが12名も出演し、それぞれのレベルや個性を生かした振付で、現役の男性ダンサーの大寺を有し、ボーイズ・クラスのあるバレエ団ならではの試みとなっていた。
そして今回のメインプログラム、第3部では、大阪のアート・バレエ難波津所属の石川愉貴を振付家に迎えて、4作品が上演された。

まず最初は、マクダウェルの音楽「森の中のスケッチ」を使用した『チャイルド・マーチ』。ピンクやオレンジ、グリーンや黄色とカラフルなチュチュを着た10名の小・中学生がクラシックバレエの動きを華麗に踊っているが、決して優雅とはいえない音楽と一緒では、自然と笑いがこぼれてくる。さらに音楽の変わり目では、突然、笛を吹く、手を掲げる、足をパラレルに揃えて敬礼!、といった衣裳や雰囲気に全くそぐわない動きを行い、再度観客の笑いを誘う。現代の少女たちのおしゃまな雰囲気と、元気で溌剌とした可愛らしさを絶妙に生かし、組み合わせた作品となっていた。

2作目の『STEP GAME』では、バレエ団の新しいソリストたち、伊藤優花と横井文咲、そして新星男性ダンサーの碓氷悠太が出演。女性2名は真っ白のレオタードに黒のパンツという姿で、首とウエストには黒のリボンをつけ、ネオ・クラシカルな雰囲気を漂わせる。マックス・リヒターの音楽の弦楽器の音色に寄り添った一見シンプルな振付ではあるが、ダンサーの個性を上手く引き出した振付になっており、それぞれのダンサーたちが生き生きと、とても魅力的に見えた。

3作目は『千の風になれ』は、モダンダンス風の作品。バレエ団の8名のダンサーが各々白の布をはためかせ、ブルーのワンピース姿で現れる。風となったダンサーたちは、走り、回り、とどまることなく踊りつづける。ラストの場面で、シルエットとなって浮き立つダンサーたちが、しっとりと美しかった。

そして最後の作品は、『traffic』。最初の3作品とは雰囲気もがらっと変わって、舞台は現代の横断歩道。照明で照らし出された横断歩道の上を、赤・紫・黒など、色とりどりのレオタードを身にまとったダンサーたちが、上手から下手へと歩き続ける。その中で起こる出来事、出会いや別れなどが現実的な動きやマイムで表現されるかと思えば、そこにバレエの動きが折り重なっては消えていく。久石譲の音楽の弦の調べに道路の具体音が重なっていき、さらに現実と心象風景が交錯する。

石川愉貴は、バレエのテクニックをベースにしながらも、現代的な動き、あるいは踊り手の個性を作品の要素として上手く取り入れ、ほどよいバランスに創り上げることに優れているようだ。またバレエ団のダンサーたちは、石川の振付をよく理解し、大変素直に踊りこなしていて清々しかった。 

ちなみに、昨年このアトリエ公演で上演され、評判を呼んだ島崎徹振付作品『OUR SONGS』が、この9月の「あいちダンス・フェスティバル『ダンス・ファンタジア』」で上演される予定だ(9月11日・愛知県芸術劇場大ホール/9月13日・大府市勤労文化会館)。

『千の風になれ』

『traffic』

(愛知県勤労会館 7月18日)