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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.07.10]
From Osaka -大阪-

バレエスタジオミューズ第9回公演

 1995年に、当時まだ珍しかったオープンクラススタジオをスタートさせた[スタジオミューズ]。オープンクラス独自の自由な雰囲気をもち、海外との交流も活発。過去には、ドレスデン・バレエ芸術監督のウラジーミル・デレヴィヤンコを演出・主演に招待して、康村和恵をヒロインに『ジゼル』を上演するなど、その定期公演は毎回注目できる。今回、楽しみだったのは、ゲストのマイアミ・シティ・バレエのプリンシパル、ミハイル・イリイン。「楽しみだった」と過去形なのは、残念ながら怪我のために出演不可能になったからだ。

 そんなわけで、正直言って、少し「がっかり」とした気持ちのまま観劇したが、公演中盤には、イリインのことは、すっかり忘れてしまっていた。田中ルリ&清水健太の『エスメラルダ』が素晴らしかったからだ。清水健太は同スタジオ出身で、2002年のジャクソン国際バレエコンクールをきっかけに、マイアミ・シティ・バレエにコール・ドとして入団、瞬く間に昇進し、まだ20歳ながらソリストとして活躍中だ。ゲストの田中ルリは、意外にもミューズ公演に出演するのは初めて。この二人が組むのを初めてみたが、相性は、かなり良いようだ。基礎がしっかりしていて、情熱的に踊るという個性は共通しているが、表現法は異なる。このバランスが絶妙なのだ。

 田中ルリは、登場シーンからプリマ然としたオーラを放っていた。音楽の流れに酔うように踊る―彼女独自の陶酔感は、見るものをも酔わせる。そんな田中に幻惑されるかのように清水は踊る。だが、ときに田中が清水のリードに身を任せる瞬間もあり、二人の間のドラマ自体がエキサイティング。

『エスメラルダ』のグラン・パ・ド・ドゥは、物語のなかでは詩人とエスメラルダという設定。詩人はエスメラルダに夢中だが、彼女は彼を愛してはいない。しかしエスメラルダは詩人を助けるために偽装結婚をする。つまり、この二人は恋人ではなく、かといって心が通じていないわけではない。微妙な二人の関係が、田中&清水ペアの現在の個性と合致したともいえるだろう。もちろん、それぞれのヴァリエーションも見ごたえがあった。田中の技術は完璧に近く、動き自体が以前より伸びやか。一方、マイアミで、バランシン作品を中心に踊りこんでいる清水は、明らかに身のこなしが洗練された。お互いの長所を存分に生かしながら、かつ刺激を与え合えるペア。再びの共演が楽しみだ。

 プログラムはほかに、宗田静子がシュトラウスのワルツほかに振付けた『ローズ・ガーデン』。その名の通りバラが咲く庭園で人々は行き交い、しばし踊る。パ・ド・ドゥ、カトル、シスなど様々な構成で、クラシカルに見せた。バラの香りのなかで、まどろみながら踊る久保佳子らが愛らしい。

『セラヴィ』は原田高博作品。タンゴ楽団アストロリコ(バンドネオン、バイオリン、ピアノ、コントラバス)の生演奏に乗せ男女が踊る。大人びたドレスに身を包んだ女性たちはサマになっていたが、男性の中には少々無理を感じる人もいた。テクニックではなく、その雰囲気の問題だ。だが、タンゴを踊るに欠かせない[品のあるセクシーさ]は、特に男性バレエ・ダンサーには不可欠なこと。このような作品を通して、男性ダンサーには、その辺の研究も期待したい。

 ラストは、夏山周久改訂演出の『パキータ』。エトワールは、同スタジオ出身で、現在レ・グランバレエ・カナディアン所属の木田真理子。パートナーに予定されていたイリインの代わりを急遽、新井崇がつとめた。ジュニア時代から、愛らしい笑顔と安定したテクニックが評価されていた木田は、順調にプロのダンサーに成長した。緊張のせいか、こじんまりした踊りになってしまったのは残念だが、少女の微笑みは、エトワール然とした眼差しに変わっていた。

『エスメラルダ』

『ローズ・ガーデン』

『セラヴィ』

『パキータ』
(6月20日、大阪厚生年金会館大ホール)