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唐津絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.07.10]
From Nagoya -名古屋-

愛知県で久しぶりの松山バレエ団公演『ドン・キホーテ』

 愛知県で東京のバレエ団の公演が行われることは珍しい。 地元のバレエ団がしのぎを削ることの多いこの東海地域で、東京のバレエ団が公演を行うことは、かなり勇気のいることなのだろう。 久しぶりに名古屋公演に訪れた松山バレエ団は、果たしてどのように名古屋の観客に受け入れられたのであろうか。

  バレエ団には様々な個性があって、その雰囲気なども全く異なることが多い。松山バレエ団の名古屋公演は、多くの人々が、 バレリーナ森下洋子に憧れをもって眺めていた少女の頃の淡い思い出を呼び覚ましてくれるような、成熟した大人のための舞台であった。

 松山バレエ団では、1985年以来ルドルフ・ヌレエフ版の『ドン・キホーテ』を上演している。 若くて溌剌とした娘役のキトリと活発なバジルは、肉体的にも精神的にも大変な役であろう。その役を森下洋子と清水哲太郎がどのように演じるのか、 森下洋子を久しぶりに観る地元の関係者の間でも公演前に話題となっていたが、登場してきた森下は、年齢を全く感じさせない少女のような可憐さをもっていた。 また清水もはかなげな森下を温かく支えていた。


 脇を固める配役たちの貫禄や、コール・ド・バレエの迫力も見事で、団員の数や層の厚さがバレエ団の活動の充実ぶりを物語っているようだ。どのシーンでも、オペラシアターとして設計された愛知県芸術劇場大ホールの広い舞台が狭く見えるほど、大勢のダンサーたちがところ狭しと並んでいる。舞台装置も絢爛豪華であるが、それに負けないほどの数の登場人物たちが、余裕のある演技で観客の心を掴む。近年バレエダンサーたちの低年齢化で、若いダンサーたちが主役をつとめる舞台も多くなったし、そういった舞台には新鮮さや新しい空気を感じることも多いが、大人にしか味わえないような味わい深い舞台もある。そう感じさせてくれた「大人のためのバレエ」公演であった。
(6月4日 愛知県芸術劇場大ホール)