ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.07.10]
From Nagoya -名古屋-

「コンテンポラリー・ダンス・トゥデイ」で見せた現代舞踊公演の心意気

現代舞踊協会中部支部が主催する第42回現代舞踊公演が開催された。タイトルの横文字にも現れているように、これまでとは少し趣の異なった公演になっており、ダンスの層を広げていきたい、との関係者の心意気が感じられた。

 通常の現代舞踊協会主催の公演では、協会員でなければ上演できない、協会入会歴によっても「中堅公演」「本公演」などとすみ分けされるなどのいくつかの制限があったが、今回はそういった枠を取り払い、公募によって希望者は誰でも参加できる、という非常に開かれた会になっていた。
 そのため若手のコンテンポラリー・ダンスの振付家のような新しい才能が参加していた一方で、様々な舞踊のジャンル、レベルの作品が多数並ぶ結果となり、選考があった方がよかったのでは、という声も聞かれた。

 いずれにしても、日本の洋舞の歴史を創ってきた、どちらかといえば保守的に傾きがちなこのような会が、若手や一般の人々に対して、門戸を広げていくことは意義の大きいことだと思う。今回の28作品の中には、若手・ベテラン・異色など様々な作品が並んだが、今日的な傾向として、いくつかのタイプに分けられるだろう。

 まず、ずっと踊りつづけてるベテランの舞踊家たちが、さらに献身を積んで、自身の内面から動きを紡ぎだそうとしているソロの作品。現代舞踊協会中部支部長を務める関山三喜夫の『冥』や玉田弘子の『風の声』では、現在の自分の身体で表現できる可能性に向き合い、自身の存在そのものと対峙しようとしているようにみえた。

 もうひとつは、社会問題を作品の中に織り込み、演劇的なストーリーの中に、身体表現の可能性を探っている作品たち。毎日のようにニュースで流されている残酷な社会問題、テロや若者の犯罪、自殺や誘拐等などをかなり具体的に、たとえば実際に出演者が台詞を話したり、ニュースのテープを流すなど、コラージュしながら、作品に織り交ぜ、ひとつのメッセージを表現しようとしている。これにあたるのが、夜久ゆかり振付『WaitingPoint-実感への距離』や榊原菜生未振付『The Last Judgment』。

 そして今回とても多かったのが、音楽との関係に取り組んだ作品。音楽とのコラボレーションによって、ダンス界の行き詰まりを打破しようとしているのか、それぞれの作品で音楽との関わり方は異なるが、そこには突破口を見出したいと感じている舞踊家たちの一連の共通項が見えてくる。
特に印象に残ったのが、猪崎弥生振付の『reconstruction』。録音された音楽に合わせて踊るアンサンブルのダンサーたちに、石川雅実の即興的なダンスとH・アール・カオスなどの音楽でも活躍中の落合敏行のギターが即興的に関わる。異質なものが作品に割り込んでくるような、強烈なインパクトをもった2人。アンサンブルの画一的な動きに対して、石川のコンテンポラリーな動きが際立っていた。
ほかにも寺原幸の『ターニングポイント』では、DJの声とのコラボレーションに取り組んだり、三田美代子の『存在』では、物が割れる音などの実際の音を取り入れたミュージック・コンクレートを使用したり、野々村明子が『崖からみた<昭和から見た平成とは・・・>』で、3名のミュージシャンをステージの中央に配して、現在と過去を交錯させたりするなど、音楽を上手く使用して、作品に広がりを加えていた。
また三田はバトンを低くして、裸電球を吊るしたり、コケティッシュな赤と白の衣裳で演出でも独自性をみせたほか、野々村の作品をはじめ、いくつかの作品で、芸術創造センターの舞台せりを効果的に利用するなど、公演会場にあわせた演出をしていたことも、ダンスの中だけに閉じこもりがちだった舞踊界の挑戦的な試みとして評価したい。

 ほかには、星野聡子振付『虚構の真実』、及川直美振付『旋律のCONCIERGE』、宇治原光振付『うたが聞こえる』、西川菜穂子振付『愛しき日々をあとに』、島田一也振付『子守唄~幻想~』、木方今日子振付『ふかぶかと息をして・・・』、山田鈴子振付『SUN ROOM』』、服部由香里振付『WAVE』、伊藤貴美振付『ake a Chance』、南條冴和振付『磁場』、稲川麻子振付『ミスティック・ドリーム』、杉江良子振付『つぎにみつけたものは』、ユリア振付『ふしぎ』、秀和代振付『ブラック・ラウンド』、野田ますみ振付『0地点』、志和明美振付『タンゴのきぶんで』、篠田侑子振付『影』、佐藤典子振付『ニュー・センチュリー・そして・・・・』、鈴木恵子振付『TRAVELER』、水野聖子振付『威風堂々』が上演された。
(6月12・13日 名古屋市芸術創造センター)

『WaitingPoint-実感への距離』

『reconstruction』

『存在』