ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.06.10]
From Osaka -大阪-

中川晃教の魅力を引き出した宮本亜門の『キャンディード』

なんといっても、キャンディード役の中川晃教が素晴らしかった。とにかく声がチャーミング。ダンサーで言えば、そう、パトリック・デュポンのよう。突き抜けたような明るさと、異性からも(たぶん)同性からも好感をもたれるような「セクシー」さがそこにはある。王子様タイプ(つまり正当派2枚目)じゃない、けど、きっと彼なら、彼しかできない2枚目を演じることが出来そう・・・この辺りもデュポンぽい。

歌だけでなく、動きもいい。音楽的。歌手だから、音楽的なのは当たり前と思いがちだが、実際にはそうではない。[音楽]は奥が深いし幅広い。ダンスの下手な音楽家もいれば、音楽性豊かなダンサーが、ものすごく音痴だったりもする。歌って踊れるミュージカルスターのなかでも、音楽性豊かに動くことができる人は、実は、そう多くないような気もする。中川は、さりげない動きにも音楽を感じさせる。オーケストラの演奏が中川の肉体を媒介に舞台全体に広がっていくよう。舞台が活き活きしていたのは、そのためでもあろう。

もちろん、ここまで中川の魅力を引き出したのは、演出、宮本亜門の力でもある。そもそも『キャンディード』というバーンスタインの大作は、素敵な曲がいっぱいつまっているけれど、コンサート形式での演奏では、ともすれば、どこか「面白さ」が中途半端になって、最後は説教じみてくる(そう感じる者が、ひねくれているのかもしれないが)。だからといって、面白さだけを追求する類の作品ではない。

宮本の演出は、見るもの、聴くものを旅に誘って、最終的には、キャンディードの歌う「さあ、畑を耕そう」という結論を納得させる。観客が素直に,現実味の薄いこの物語に入っていくことができたのは、ヴァルテール(辰巳琢郎)の巧みな進行にもよるし、スピーディなドラマ展開のためでもある。また、ときに客席を照らし出す照明(原田保)、様々な場所に変化する美術(ニール・パテル)の効果も抜群だった。バーンスタインの音楽を表情豊かに聴かせたのは、デヴィッド・チャールズ・アベル(音楽監督・指揮)。

(5月16日、大阪フェスティバルホール)