ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2017.08.10]

素晴らしい音楽と熱いリズム、圧倒的なダンスが繰り広げられた、ダンス・アフリカ 2017

Dance Africa 2017 ダンス・アフリカ2017
“ The Healing Light of Rhythm: Tradition and Beyond ”  Artistic Director Adel R. Salaam and Artistic Director Emeritus Chuck Davis
「ザ・ヒーリング・ライト・オブ・リズム:トラディション・アンド・ビヨンド」アデル・R.サラーム:芸術監督、チャック・デイヴィス:名誉芸術監督

今年、第40回を迎えるダンス・アフリカ2017のメイン公演、「ザ・ヒーリング・ライト・オブ・リズム:トラディション・アンド・ビヨンド」が、5月26日から29日までBAMで上演されました。ダンス・アフリカは、1977年にチャック・デイヴィスがスタートしたアフロ・アメリカンの大きな祭典です。今では、この期間はメイン公演のほか、アフリカン・ダンスのワークショップやBAMの周囲にたくさんのアフロ・アメリカンのマーケットがあり、連日、大賑わいです。公演の観客は、色とりどりなアフリカの民族衣装で着飾ったアフロ・アメリカンのご家族がつめかけていました。

ny1708f.jpg (C) Julieta Cervantes

私は29日の午後の公演を観ました。最初、Spitit Walkers: Roots of Remembranceのダンス、お祈りが披露されました。大勢の上下白いアフリカの民族衣装を着たダンサーたちが、手にろうそくの灯を模した明かりを持って、舞台上に次々と登場し、やや暗い照明の中で幻想的に、やがて激しいアフリカン・ダンスを踊りました。振付はアデル・R.サラームです。
そのダンサーに囲まれた中、次にそのまま、芸術監督のサラームが登場し、オープニングの舞台挨拶をしました。そして続けて、今は亡き名誉芸術監督チャック・デイヴィスの、生前の短い映像作品を大きなスクリーンに流しました。デイヴィスの若かりし頃からのダンス・アフリカの活動、大勢でアフリカ現地へアフリカン・ダンスの習得のために滞在したこと、年月を経てきてからの活動の様子など、生涯の活動についてまとめられていた映像でした。

ny1708f08.jpg (C) Julieta Cervantes

デイヴィスは、今回のダンス・アフリカの直前に永眠なさったそうです。会場の皆さんと一緒に、デイヴィスのご冥福をお祈りしました。
去年のダンス・アフリカ2016で初めてサラームが新しい芸術監督として迎えられ、バトンタッチを済ませていました。その時はデイヴィスもまだ健在で、明るい太陽のようなキャラクターでご挨拶をしていました。今思えば、デイヴィスはご自分の最期を予期していたかのように、ベストなタイミングで完璧にバトンタッチを終えていたのでした。
ダンス・アフリカの取材は長く続けてきたので、生前のお元気なデイヴィスのご活動、底抜けに明るいキャラクター、様子もよく記憶していて、挨拶の声もよく覚えているので、思い出に残っています。毎年、アフリカの現地から本格的なアフリカン・ダンス・カンパニーを招聘していて、ニューヨークにいながらにして大迫力の太鼓演奏とダンスを見ることができる貴重な機会でした。すごいエネルギーが爆発するダンス公演を見ていると元気が出てきたものでした。
また、デイヴィスの尽力により、アフロ・アメリカンのために振付家フェローシップや、若者への奨学金制度も作って、毎年、若者たちを応援して助けています。その奨学金制度も、ダンス・アフリカとともに引き継がれています。デイヴィスがアフロ・アメリカンのために残した活動は、大きな功績として残りました。 

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次に『The Healing Sevens』という作品が上演されました。様々なアメリカ国内のアフリカン・ダンス・カンパニーの共演で作り上げられた作品です。現代のアフロ・アメリカンの少年少女が、現代のヒップホップのようなダンス・バトルを繰り広げました。バック宙、バック転が炸裂し、180度開脚もあり、基礎がしっかりしていてレベルが高いダンサーたちでした。ただのアフリカン・ダンスだけではなかったので、現代的なダンスのテクニックが使われていて、見ごたえがありました。
やがて、2人の少年が喧嘩をして、お互いに殺し合い、二人とも亡くなってしまいました。そこにアフロ・アメリカンの呪術師などがたくさん出てきて、2人の死体に色々な蘇生の魔術を施していきました。周りではダンスや音楽演奏が続きました。
この2人の死体の周りでは、ずっと長い間、入れ替わり立ち代わり、激しい太鼓演奏が続き、呪術師がいろいろ施すとその度に2人の死体は、ピクッと動き始めました。太鼓演奏はますます激しくなっていきました。そして、最後には2人は無事に蘇生されて生き返り、ピンピンとした元気な身体に戻り、2人とも激しく踊りました。最後に2人は握手させられて和解しました。これは、アフリカの、死体を蘇らせるブードゥーを現代的に表現したものなのかな、と思いました。
このような、死闘、死体を蘇生する術と呪術師たち、太鼓演奏、ダンス作品が、ストーリー性を持って展開していき、一つの作品としてまとめられていました。ただダンスを羅列するだけではなく、1時間ちょっとの作品として起承転結のストーリーがあって、面白かったです。

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休憩後、最後は、Guinea(ギニア共和国)の Wula Drum and Dance Ensembleによる『Journey To Konakry:A Salute To The Dance, Music, and Culture of Guinea』 という作品が上演されました。太鼓などの音楽家とダンサーあわせて17名の大所帯のカンパニーで、演奏も分厚い音で、ダンスも大迫力でした。
大きな木琴を下げて演奏している男性がでてきて、アフリカらしい旋律を奏でました。また、大きな弦楽器を持った女性が、演奏しながら、素晴らしい奥深い歌声で歌いました。すごく迫力のある大きな歌声で、本格的で、大拍手に包まれました。
男女14名が激しいアフリカン・ダンスを踊るところもありました。
途中、女性をめぐって男性2人がナイフを持ち出して喧嘩するシーンもあり、最後は仲直りしていました。
第1部、第2部ともに、ストーリー性のある演劇仕立てのダンス作品としてまとまっていて、音楽の生演奏も音が分厚くて素晴らしい公演でした。毎年、アフリカ本土から本物の現地のアフリカン・ダンス・カンパニーを招聘してきたデイヴィスの意志は引き継がれていて、さらにストーリー仕立ての一つの作品として仕上げて音楽とダンスをつなげて紹介するというサラームのカラーと作風が加えられていました。
最後に、サラームが登場して挨拶をして終わりました。サラームも明るい陽気な、面白いキャラクターで、独特な個性とカリスマ性があります。ダンス・アフリカにピッタリな新しいリーダーに引き継がれていて、きっと天国のデイヴィスも安心して見守っていることでしょう。
(2017年5月29日午後 BAM)

ny1708f13.jpg (C) Julieta Cervantes