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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2017.07.10]

マーリア・アレクサンドロワがブランカ・リーと踊った『ゴッデセス&デモネセス』

Blanca Li Productions ブランカ・リー・プロダクションズ
“Goddesses & Demonesses” by Blanca Li
『ゴッデセス&デモネセス』ブランカ・リー:芸術監督&振付

3月3日から4月1日まで、ニューヨーク・シティ・センターで、ブランカ・リー・プロダクションズによる『ゴッデセス&デモネセス』の公演がありました。ブランカ・リーは、振付家、ダンサー、映画監督、インタラクティブな展覧会のディレクターです。以前、公演のレポートを取り上げたことがあり、バレエ・ベースですが個性的で面白い演出、振付をします。『ゴッデセス&デモネセス』は、2015年にパリ・シャンゼリゼ劇場で初演されました。
出演ダンサーは2名で、ボリショイ・バレエの元プリンシパル・ダンサーであるマリーヤ・アレクサンドロワ(Maria Alexandrova)、ブランカ・リーです。
マリーヤ・アレクサンドロワは1978年モスクワ生まれで、モスクワ国際バレエコンクールで金賞受賞後、1997年にボリショイ・バレエに入団し、2004年からプリンシパルとなりました。今年2月にボリショイ・バレエ退団の意向を発表直後に行われた公演ですので、アレクサンドロワの新たな人生の始まりで新しい踊りの挑戦でもあり、タイミング良く観劇して取材することができました。もちろん、彼女の踊りはまだまだ現役で健在でした。
ブランカ・リーは、スペインのグラナダ生まれで、パリを拠点に自身のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーを持ち、その後25年間に渡って、世界中で活発に活動し続けています。15のオリジナル・プロダクションを創造し、世界で1000以上の公演を行いました。公演以外でも振付を多く行っています。パリ・オペラ座バレエとメトロポリタン・オペラ(NY)に振付し、ベルリン国立バレエでは2001年と2002年に振付を行い、2006年から2010年までスペインのセビージャのセントロ・アンダルス・デ・ダンサの芸術監督を務めました。他にも数えきれないほど、振付、監督、オフィサーを務めてきています。
リーは指導力に優れていて、それぞれのダンサーの良い所や個性を引きだします。ですからリーの公演で踊るダンサーたちは、とても生き生きとしています。

ny1707h_04.jpg PHOTO (C) LAURENT PHILIPPE

出演ダンサーは広い舞台で2名だけでしたが、この2人それぞれは偉大な才能のダンサー、アーティストなので、十分に見ごたえがありました。そして、ダンスそのものの実力はアレクサンドロワのほうが圧倒的に高くて有無を言わさないほどなのですが、リーはダンスの実力以外で勝負していて、他の部分で自分らしさと個性を引き出していたのです。このアレクサンドロワと共に2人だけで舞台に立つということを成しとげたリーは、ダンス以外の監督や振付その他で自信を持っている様子が伝わってきました。普通なら、世界的実力派ダンサーでしかもとても美しいアレクサンドロワと共に、2人だけで一緒に舞台に立つことは、怖気づいてなかなかできないことだろうと推察します。でも、それを実現して堂々と自分も一緒に並んで舞台に立っているリーは、自信に満ち溢れていてポジティブで、見ているこちらも安心感を持てました。このリーの安定感、貫禄は、世界的に長く活躍し続けてきて結果を出していて、本拠地のパリでも十分に高い評価を受けていることは説得力があり、納得できました。
ボリショイ・バレエを退団発表直後のアレクサンドロワを、発表から1カ月も経たないうちにメインのキャストに起用してニューヨーク公演を行うなんて、今の瞬間を逃さずタイミングが良いと思いました。この時期に、アレクサンドロワの独自の公演を観たい人々は多いと思いますが。
リーの振付はもちろん、個性的でした。クラシック・バレエ・ベ―スですが、もっと自由でのびのびとしていました。リーは、少しフラメンコを加えていて手の振りを中心に表現していました。

ny1707h_05.jpg PHOTO (C) VINCENT PONTENT

アレクサンドロワの踊りはコンテンポラリーの要素も多かったですが、さすがバレエの基礎がしっかりしていて実力が高く、圧巻でした。アレクサンドロワの新しい面を、コンテンポラリー的な踊りで引き出していました。普通のプロのダンサーには出来ないアクロバットな動きを、ゆっくりじっくりと止めつつ見せるところがあり、鍛錬を積み上げた世界的ダンサーらしいしシーンでした。スクリーンの向こう側にいるアレクサンドロワのシルエットだけをくっきりと見せる演出で、幻想的でした。ここが一番印象に残りました。客席は、ため息や歓声であふれていて、拍手のシーンでした。このシーンだけでもまた見たいと思いました。
クラシックのバレエダンサーの実力と肉体を、スクリーンや映像CGも駆使しした現代的な面白い振付と演出で見せるとても新鮮な舞台でした。
(2017年3月31日夜 ニューヨク・シティ・センター)

ny1707h_06.jpg PHOTO (C) LAURENT PHILIPPE