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三崎 恵里 text by Eri Misaki 
[2017.03.10]

フランス、ロレーヌのカンパニー、バレエ・ド・ロレーヌがジョイス・シアターで3作品を上演した

CCN-Ballet De Lorraine CCN-バレエ・ド・ロレーヌ
“Devoted” by Cecilia Bengolea、Francois Chaignaud、 “Hok Solo Pour Ensemble” by Alban Richard、 “Sounddance” by Merce Cunningham
『Devoted』 シシリア・ベンゴレ:振付 『Hok Solo Pour Ensemble』 アルバン・リチャード:振付 『Sounddance』 マース・カニングハム:振付

フランスの文化省の振付センターとしての称号、Centre Choregraphique National (CCN)を持つカンパニー、バレエ・ド・ロレーヌがニューヨーク公演を行った。今回の舞台は三つの全く違う作品で構成されていた。

ny1703f_DEVOTED2.jpg 『Devoted』(C) Arno Paul.

最初に踊られた『Devoted』は、シシリア・ベンゴレ(Cecilia Bengolea)とフランソワーズ・ショイナード(Francois Chaignaud)が、フィリップ・グラス(Philip Glass)の“Another Look at Harmony Part IV“に振付けた作品で、8人の女性のみで踊られた。全員ポアントを履き、顔に奇妙なメイクを施している。腕を背中の後ろに突き出した不自然なポジションでシェネをしたり、奇妙な動きや、ジャンプをしてそのまま床にスプリッツするなど難度の高い動きを多く取り入れた作品だ。グラス独特のフレーズの繰り返しが多い曲に様々な場面が展開するが、踊り辛いのか、ダンサーの動きが小さく、振付をこなすのが精いっぱいに見えた。決してそうではないのだが、ダンサーたちが未熟かつ体型も不揃いに見え、テクニックのレベルを疑われる場面も何度かあった。奇妙な、変にセクシーな動きも目障りに感じた。音楽の美しさもうまく表現できていない。他の作品の出来から察するに、これは振付けに責任があると思われた。

その次に踊られた、アルバン・リチャード(Alban Richard)の『Hok Solo Pour Ensemble』はマックス・フォサイティ(Max Fossati)の曲に振付けられた作品で、非常に個性的であった。カーテンが上がるとTシャツに黒のジーンズの様な衣裳にスニーカーを履いた男女ダンサーがスタスタと歩み出る。音楽が始まると横一列に並んだダンサーが真ん中から左右に分かれて、機械的な動きで動き出す。左右に別れて、パターン変えて動く様は、ピアノのキーを想像させた。やがて前に進み出てきては列に戻る。足を蹴ったり、首や上体の前屈など、いくつかの動きのパターンを繰り返して、無機質で頭の体操の様なダンスだ。
ダンサーたちは舞台の上を歩き始める。決まったパターンをフォーメーションを変えながら歩くが、整然としていて面白い。音楽も非常に単調なものだ。照明やフォーメーションに変化を与えながら歩くだけだが、パターンを変えたり、シンプルな動きでどれだけ見せられるか、という試みを感じさせ、見せる物がある。振付が良く計算されていて、時にソロやデュエットが入る。動きはコンテンポラリーの振付だ。単調な音楽の逆手を取って、動きに集中させる頭の良い振付で印象に残る。時折照明をふっと暗くする。しかし、基本的に薄暗いステージにいくつもサスを射した、洒落た照明だ。円周を描いて走ったり歩いたり、ターンをしたり、あっさりしたシンプルな動きで、ダンスとは言えないような振付だが、ダンスになっている。音が高くなると全員が走り出し、やがて複雑なパターンを描きながら歩く。また渦巻になり走り出すと思うと、3人一組になってターンを入れる動きになるなど、飽きが来ない。スピードとパターンの遊びでもあり、頭の良い、見る側の感覚を考慮した作品であった。

ny1703f_HOKsolopourensemble1.jpg 『Hok Solo Pour Ensemble』(C) Arno Paul.

この日の最後を飾ったのは、アメリカの振付家マース・カニングハム(Merce Cunningham)振付の『サウンドダンス(Sounddance)』であった。音楽はデーヴィッド・チューダー(David Tudor)の「無題(Untitled)」。うるさいような音が流れる中、豪華な金のバックドロップの中央から男性が走り出てきてソロを踊って始まった。どんどんダンサーが加わるが、カニンガムのスタイルをしっかりとつかんでいる。ダンサーたちは薄いブルーのタイツに黄色いTシャツというシンプルな衣裳で、全員美しいラインをしている。複雑なステップやグラハム風のジャンプも整然と行い、良く踊られた。音がうるさ過ぎるほどなので、却って動きが美しく見える。大勢のダンサーが同時に踊るが、整然と見せた。一人ずつ消えていき、最後のダンサーが消えると同時に音が止まり、ブラックアウトして終わった。
カンパニーのダンサーの中には日本人の大石紗基子(Sakiko Oishi)が含まれており、時に芯を取って踊っていた。
(2017年2月10日夜 Joyce Theater)

ny1703f_SOUNDDANCE.jpg 『サウンドダンス(Sounddance)』(C) Laurent Philuppe.