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針山 真実 text by MAMI HARIYAMA 
[2015.07.10]

ボッレのジークフリードの品格のある演技とゴメスの魔力を秘めたロットバルトが際立ったABT『白鳥の湖』

American Ballet Theatre アメリカン・バレエ・シアター
“Swan Lake” by Kevin McKenzie
ケヴィン・マッケンジー版『白鳥の湖』

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の『白鳥の湖』は、毎年チケットの入手が困難となる人気の作品で、この日も土曜日の夜とあって立ち見席もいっぱいだった。

ny1507a01.jpg 『白鳥の湖』ヒー・セオ、ロベルト・ボッレ
Photo: Gene Schiavone.

一幕、王子役のロベルト・ボッレが登場すると舞台が華やかになった。軽やかなジャンプに柔らかい着地はとても40歳とは思えない。品格のある演技、しなやかなアームスのポールドブラ、ちょっとした動きも隙がなく、ダンサーとしてのキャリアが豊富であることが分かる。
パ・ド・トロワを踊ったのはステラ・アブレラ、メラニー・ハムリック、ブレイン・ホーベン。ステラ・アブレラは6月30日にバレエ団の最高位のプリンシパルに昇格しただけあり、技術は安定していて見せ方もちょうど良い。特にヴァリエーションで見せたジャンプの足裁きが美しく印象を残した。ブレイン・ホーベンは以前より体のラインがシャープになり、ジャンプが軽く勢いがあり若さ溢れる踊り。メラニー・ハムリックも活き活きとした踊りを見せ、彼女はコール・ド・バレエでありながらバレエ団のソリスト役を多く与えられており、次期ソリスト候補なのかもしれない。
ただ、ケヴィン・マッケンジー版の一幕、成人を祝うシーンは少し長すぎるように感じた。

舞台は湖のシーンに代わりにオデット姫の登場。もともとポリーナ・セミオノワが演じる予定だったが怪我で全シーズンを降板し、主役はヒー・セオが踊った。
ヒー・セオは身体のラインが細く、膝がXにしなり、足先の伸びがとても強く、ポーズの一つ一つが絵になって美しい。羽根となる腕の使い方がとても大きく、首元からも寂しげな白鳥らしさが伝わり、技術的にも雰囲気も以前よりも彼女は成長したと思った。王子とのパ・ド・ドゥもとても美しかった。
ただソロになると、ポアントで立った際にバランスを崩しそうになって一瞬冷やりとさせる瞬間は、今後減らせられればともっと良くなると思う。
有名な四羽の白鳥の踊りは、音にダンサーたちが遅れてしまい途中不揃いなところがあり、四羽が揃って踊ることを期待して見ているだけに少々残念だった。

二幕の一場。ロットバルト役のマルセロ・ゴメスの登場を期待した。ゴメスの演じるロットバルトは立ち振る舞いに貫禄があり、目が合うと虜にされそうな目線、男らしさと色気があり、誰にも真似が出来ないと思う。やはり彼のロットバルトは期待通りだった。
黒鳥のオディールと王子のパ・ド・ドゥは、一幕同様にロベルトは余裕がありエレガントな踊り。回転技のアラセゴンド・ターンがダイナミックでスピードがあり特に印象に残った。
ヒー・セオは二幕に増して腕を激しく使い、鋭い目線で王子を誘惑するオディールを演じた。

二幕の二場、白鳥たちが入れ替わり出たり入ったりフォーメーションを変えながら踊る情景が美しい。
ヒー・セオは切なく悲しむオデット姫が似合うと思った。
最後に二人が海に身を投げ、白鳥たちが昇る太陽の方を見て舞うラストシーンは、スモークと光の効果が生かされ美しかった。
(2015年6月27日 メトロポリタン歌劇場)

ny1507a02.jpg 『白鳥の湖』ヒー・セオ、ロベルト・ボッレ
Photo: Gene Schiavone.