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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.10.10]

『夢遊病の女』『火の鳥』他、美しく優雅な振付が見事だったNYCBのオール・バランシンプロ

New York City Ballet “ALL BALANCHINE” ニューヨーク・シティ・バレエ「オール・バランシン」
“Donizetti Variations” “La Sonnambula” “Firebird” by George Balanshine

9月23日から10月19日まで、ニューヨーク・シティ・バレエの秋の公演が行われました。9月26日の「オール・バランシン」を観に行きました。2回の休憩をはさんで、3つの作品が上演されました。

ny1410a01.jpg 「ドニゼッテイ・ヴァリエーションズ」
photo/Paul Kolnik

まず、『ドニゼッティ・ヴァリエーションズ』。1960年初演で、音楽はガエターノ・ドニゼッティのオペラ『ドン・セバスチャン』から使われています。プリンシパル・ダンサーは、アシュレイ・ボーダー、アンドリュー・ヴィエットでした。この作品は、イタリア統一100周年記念公演として、ニューヨーク・シティ・バレエのプログラムのために作られたものだそうです。
大勢のダンサーは男女ともグレーと薄いブルーの華やかな衣装で、とても陽気で、元気な、明るい雰囲気の振付作品でした。
最初はとても軽やかで速いテンポの曲で踊りました。軽々として楽しそうな踊りです。次にゆったりしたリズムの曲で、淡いピンク色の衣装を着た2人、アシュレイ・ボーダー、アンドリュー・ヴィエットがパ・ド・ドゥを踊りました。ボーダーはとても軸が安定していて一瞬たりともビクともせず、ぶれず、正確で安定した踊りで、一つ一つの動作がすごく丁寧。ヴィエットは素早く、ダイナミックな踊りでした。
さらに男女数名で踊りました。踊りが始まる前にポーズを取って静止している時に、女性一人だけが自由な動きで踊り始め、トゥで立ったままひざを曲げて飛び跳ね続けたり、イタズラっぽい動きをして、やがて観客はクスクスと笑い始めました。イタリアらしい茶目っ気のあるキャラクターを表現したのでしょうか。全体のアクセントになっていて、面白かったです。
続いてコール・ド・バレエ全員とボーダー、ヴィエットのペアが踊りました。鉄琴の音色がメインで響く可愛らしい音楽だったので、オルゴールのようでした。そして、皆ポーズを取って静止し、ボーダーとヴィエットもセンターでポーズを取り、やがてボーダーは180度きれいに上に向かって開脚して静止して、美しい構図で幕が閉じました。

ny1410a02.jpg 「夢遊病の女」photo/Paul Kolnik

二作目の『夢遊病の女(La Sonnambula)』は、ニューヨーク・シティ・バレエ版は1960年初演で、音楽はヴィトリオ・リエティ。プリンシパル・ダンサーは、主役のコケット(The Coquette)役はサラ・メアンズ、男爵役はアマール・ラマサール、詩人はロバート・フェアチャイルド、夢遊病の女はウェンディ・ウェーランです。
バランシンはこの作品を1949年にバレエ・リュス・ド・モンテカルロのために振付しました。最初にニューヨーク・シティ・バレエが上演したのは1960年でした。内容は、オペラ版の同名の作品とは全く異なり、最後が悲劇のドラマチックなストーリーです。
お屋敷で仮面舞踏会が行われていて、ゲストたちも男女9組がペアになって踊り始めました。女性は全員、目の周りを主に羽で覆った仮面(ベニスの仮面のようなもの)をつけ、スソの長い豪華なロングドレスを着ており、男性は正装のタキシードです。途中、ターバンを巻いた男性と、女性のパ・ド・ドゥがあり、周りのゲストたちは観て楽しんでいる様子でした。男性の道化役も敏捷に踊って、アクセントになっていました。
コケットと詩人は惹かれあい、舞踏会の最中に燃え上がり、名残惜しそうに何度か気持ちを高めて踊りました。コケットは男爵とも親しい間柄のようで、舞踏会の終わりごろ、男爵はコケットのところにきて手を強くにぎって連れ帰ってしまいました。
詩人が1人残されていると、右手にろうそくを持った白いシフォンのワンピース(寝巻きのような)を着た夢遊病の女(ウェーラン)が登場しました。ずっとパ・ド・ブレで舞台上を動き続け、何度も通り過ぎました。ウェーランは無表情で髪も留めずに下ろしたまま、単調に同じリズムでパ・ド・ブレし続け、夢遊病者の様子をじつに見事に表現していました。その夢遊病の女に一目ぼれしたように、詩人は彼女を追い掛け回します。抱きしめようとすると女性はスルッと詩人をすり抜けて逃れ続けます。一緒に踊ろうとしても女性が逃げてしまい、それが何度か続きました。この無意識の夢遊病の女とそれに魅せられる詩人のパ・ド・ドゥが見せ場のひとつです。やがて最後にやっと彼女をつかまえて、詩人はキスをすると、彼女は眠ったまま自分のもと来たほうへ戻っていってしいました。その様子を見てしまったコケットは、嫉妬にかられて、ひどく取り乱します。そしてコケットは男爵にそれを告げ口し、怒った男爵は詩人をナイフで刺してしまいます。詩人はナイフが刺さったままよろめいて倒れ、息が途絶えたようです。
そこに、夢遊病の女がまたパ・ド・ブレで、右手にろうそくを持って現れました。周りの男性4人が詩人の死体を持ち上げて運び、入り口で夢遊病の女に詩人を渡しました。すると彼女は、もう動かない詩人を何かに取り憑かれたかのように1人で担いで、もと来たほうへ去っていきました。
建物の入り口と、廊下で繋がっている隣の建物があり、その廊下はすりガラスの窓で覆われていました。そのすりガラスの向こう側に、ゆっくりとろうそくの炎が移動していきました。夢遊病の女がろうそくを持って、詩人の遺体をかついで動いていく様子を表現しています。
この作品は悲劇ですが、情景の描写は幻想的でとても美しかったです。

三作目の、『火の鳥』は、ニューヨーク・シティ・バレエ版は1949年の初演。音楽はイーゴリ・ストラヴィンスキーです。プリンシパル・ダンサーは、テレサ・ライヒェルン、アスク・ラ・コール。
舞台セットと衣装は巨匠の画家シャガールによるもの。シャガールとストラヴィンスキーとバランシンの夢のコようなコラボレーションです。そしてニューヨーク・シティ・バレエのダンサーたちが踊り、表現するので、とてもクオリティーが高くて、芸術的な素晴らしい作品でした。何度も観たくなります。
シャガールの舞台セット、衣装が素晴らしく、舞台いっぱいの大きなスクリーンが何重かに張られていて、そこにシャガールの絵画が大きく引き延ばされているのです。大きな劇場全体が、シャガールの絵画作品に覆われたような幻想的な夢の空間になっていました。
『火の鳥』の振付も独創的で、激しく、メリハリのあるまさに火の鳥のイメージにピッタリ合った踊り。衣装も真っ赤でした。
今回はライヒェルンの火の鳥は、今までに観た他のダンサーとはまた一味違った表現で興味深かったです。元気さ、激しさ、情熱といったものを強く表現するといっても、同じ振付でもダンサーによって変わります。きびきびした動きで、ライヒェルンはスタイルもとても良くて美しく、絵になっていました。
(2014年9月26日夜 David H. Koch Theater)

ny1410a03.jpg 「火の鳥」photo/Paul Kolnik