ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.07.10]

リヨン・バレエのダンサーの肉体を人形のように抑えて使った、前衛的なインスタレーション風作品

Lyon Opera Ballet リヨン・オペラ座バレエ
“ ni fleurs, ni ford-mustang ” Concept, staging, and costumes by Chiristian Rizzo
『ニ・フルール、ニ・フォード・マスタング』クリスチャン・リゾ:コンセプト、ステージング、衣装

リヨン・オペラ座バレエの『ニ・フルール、ニ・フォード・マスタング』が、5月7日から9日まで、BAMにて上演されました。2004年9月初演の作品です。私が見たのは5月7日です。出演ダンサーは男女7名です。休憩なしのノンストップで50分程度の作品です。
クリスチャン・リゾはカンヌ出身のフランス人マルチ・アーティストで、美術家、デザイナー、舞台美術家、ミュージシャン、振付家です。1996年にアソシアシオン・フラジルを設立し、ファッションとビジュアルアーツも素材として、パフォーマンスとダンス作品を発表し続けてきました。
この作品は、コンテンポラリー・アート色が強くて、とても抽象的でした。ダンスの要素が少なくて、ダンスは舞台全体のほんの20パーセントくらいの印象で、大部分は大掛かりなインスタレーションのようでした。まるでダンサーたちの肉体を、他の照明・衣装・装置、音楽と混ぜて全体の作品の中で一部分として使って一つの作品を作ったような感じで、ダンサーたちが主役には見えないくらいでした。

ny1407b01.jpg Photo Credit: Stephanie Berger

ダンサーたちは、作品の中の風景、シーンに溶け込んでいて、動きをかなり抑えられており、「自動で少し動く人形」程度の動きだけをほぼ全体を通じてしていただけでした。「これはダンス作品なのだろうか? インスタレーションなのだろうか? パントマイムなのだろうか? ジャンルは何なのだろうか?」と頭の中で?マークがずっと連続していました。私にとっても、このようなダンス作品を観たのは初めてです。
この作品は「美術のインスタレーションを観に行く」という意識があればアート作品としてすんなり受け入れられますが、「ダンスを観に行く」という期待感を持って観に行くとがっかりする方が多いかもしれません。そのためか、途中で客席を立って劇場を出ていった観客が目に付いた公演でした。
全体を通じて、ダンサーたちはほとんど寝転がって過ごし、床の上で仰向けになったりうつ伏せになったり、時々起き上がったと思ったらまたパタンと寝そべったり、ゆっくり歩いてまた寝そべったり、数名が重なって寝そべっていったりという動作が際限なく続きました。そのうちダンスが始まるのかな? これはイントロかな? と思っていましたが、なかなかダンスが始まらず、「もしかしてほとんどこの寝そべったり起きたりする動きばかりなのかな? それともこれがこのダンス作品の振付なのかな?」と不安になってきました。
終わる直前の数分間だけ、5分も無かったですが、そこで初めて私たちがイメージするダンス(プロのダンサーが踊るダンス)らしい振付がでてきました。全員が全身タイツの頭まで包まれた衣装で出てきました。全体が鱗のようにミラーかスパンコールか何か光を反射する素材で覆われた衣装で、ほとんど照明が無い薄暗い中で、ダンサーたちが激しく踊ってうごめいているように見えました。この部分は、このミラーの鱗のような衣装がポイントなのでしょう。そしてパッと終わりました。
鍛錬を積み重ねてきたプロのダンサーたちの身体能力をほとんど使っていない振付の作品でした。このようにダンサーたちを少し動く人形のようにじっとさせたり寝そべらせるだけの、思い切ったインスタレーション風作品には驚きました。ダンスにはいろいろなジャンルがあるのだな、とあらためて新鮮な気持ちになった体験でした。
(2014年5月7日 BAM Howard Gilman Opera House)

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ny1407b04.jpg Photos Credit: Stephanie Berger(すべて)