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針山 真実 text by MAMI HARIYAMA 
[2013.11.11]

ウルブリックが素晴らしかった『放蕩息子』とユーモラスて楽しい『10番街の殺人』

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ
ALL BALANCHINE SHORT STORIES ”Prodigal Son” "Slaughter on Tenth Avenue" Choreography by George Balanchine
ジョージ・バランシン小品集『放蕩息子』『10番街の殺人』ジョージ・バランシン振付

10月9日、ニューヨーク・シティ・バレエを見ました。1929年に初演されたバランシン振付の『放浪息子』は以前に他のバレエ団が上演したのを見ましたが、その時はあまり印象深いものにはなりませんでした。しかし、今回のニューヨーク・シティ・バレエの『放浪息子』を改めて見て印象が変わりました。

ny1311d01.jpg 「放蕩息子」テレサ・レイクレン
Photo credit: Paul Kolnik

プロコフィエフ作曲の音楽は深く分厚いハーモニー、そして振付、演技、このバレエはこんなに面白いものなのだとわかりました。
特に主役を踊ったダニエル・ウルブリックがこの作品の印象を変えてくれました。本当にすばらしかったです。まず彼の音楽性がとても素晴らしい、音と共に壮快にポーズが決まり、回転技もスピーディに回ってポーズはピタッと音と共に決まります。彼は表現、演技力も素晴らしく、身体から指先まで全身から踊りが溢れ出ていて、完全に舞台に身を投じて大胆に踊っていました。
主役の女性、テレサ・レイクレンと並ぶと、身長は彼女よりも低いのですが踊ると迫力があり大きく見えるのです。
主役のダニエルだけでなく、群舞の男性ダンサーたちも動きが大きくて身体能力が高くとても見ごたえがありました。
長身のテレサは役柄に合ってとても堂々としていました。この作品を見た後に感じたのは、ニューヨーク・シティ・バレエのダンサーたちの身体能力の高さ、以前みた『白鳥の湖』のときも感心しましたが、躍動感があります。それはよくしリハーサルをして踊りが身についているのだと思います。しっかり指導を受け個々のダンサーが振付のステップが確実だからこそ、動きを大きくすることが可能で、よく揃うことが可能なのだろうと思いました。

そして『Slaughter on Tenth Avenue(10番街の殺人』)。バランシンが振付けたミュージカル・『オン・ユア・トーズ』の一部で作曲はリチャード・ロジャース。バレエなのに最初はセリフから始まります。幕の前にダンサーが出てきて、ストーリーの殺人計画を観客に向けて話し、冗談を言って場内を沸かせると幕が開きます。ユーモアがたっぷりで楽しい作品でした。ダンサーたちはトウシューズではなくハイヒール、そして衣装は短いセクシーなスカートに網タイツ、踊りもバレエというよりもミュージカル、ジャズダンスを見ているような感じでした。でもやはりクラッシック・バレエの基礎があるのでどんな踊りをしても美しさがあり、そしてバレエダンサーの鍛えられた体に短いスカートと黒い網タイツが映え、主役のストリッパー役であるサラ・マーンズが高く足を上げるととてもかっこ良かったです。
バレエあり、ジャズあり、タップダンスまで出てきて、コメディの要素もたっぷり入っていて観客は大笑いです。今日はバレエを見るつもりで来たのですが、予想外なミュージカル風の作品も見られてとても楽しかったです。
(2013年10月9日 THE DAVID H. KOCH THEATER)

ny1311d02.jpg 「10番街の殺人」サラ・メアンズ Photo credit: Paul Kolnik