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針山 真実 text by MAMI HARIYAMA 
[2013.08.12]

マリア・コチェトヴァとエルマン・コルネホによるABTの『眠れる森の美女』

AMERICAN BALLET THEATRE(ABT) アメリカン・バレエ・シアター
"Sleeping Beauty" Staged by:Kevin McKenzie, Gelsey Kirkland and Michael Chernov, after Marius Petipa.
『眠れる森の美女』ケビン・マッケンジー、ゲルシー・カークランド、マイケル・シャルノフ振付・演出、マリウス・プティパ振付による

この日はもともとアリーナ・コジョカルがゲストとして主演する予定だったが、怪我のため降板となりキャストが変わってサンフランシスコ・バレエのマリア・コチェトコバがアメリカン・バレエ・シアターでは初めてのオーロラ姫としてデビューした。
デジレ王子はエルマン・コルネホ、そしてリラの精を加治屋百合子が踊った。

ny1308a_03.jpg Photo by Rosalie O'Connor

プロローグでピンクのチュチュを着た妖精のコール・ドたちが華やかで美しい。中でも特にクリスティン・シェビチェンコにすぐに目がいく、彼女は上半身にロシアのメソッドの美しさがあり、そして華がある。
そして6人の妖精たちが登場する。ABTの『眠れる森の美女』のヴァージョンは、6人の男性も妖精の女性6人と一緒に登場する。この6人の男性の中ではすぐにジョセフ・ゴラックに目がいく、体が柔らかく足が驚くほどにキレイで目立つのだ。
リラの精を踊った加治屋百合子の安定感と技術には文句をつけるところがない。どうやったらここまで芯が強くなるのだろうか。上半身と腕の動きは大らかでとても柔らかくて、オーロラ姫だけでなく宮殿全体を丸く大きく包み込むような雰囲気。とても温かく優しいリラの精だった。
圧倒的な存在感があったのはバレエ・ミストレスでもあるナンシー・ラファが演じたカラボス。やはり長年の舞台経験からか演技の迫力が違う、そして身体を使う幅が大きい。悪役の顔の表情、キレの良さ、指先の使い方までさすが。彼女が舞台全体をグッと引き締めた。
オーロラ姫のマリア・コチェトコバは意外に演技は控えめで、その雰囲気からはみんなにとても大切に守られて育ってきた姫、という感じがにじみ出ていた。
1幕の4人の王子と踊る有名なローズ・アダジオのシーン。ピンクのお花の衣装が似合って可愛らしく、動きはとても軽やかでフワフワとした綿菓子のよう。しかし最後の見せ所のバランスシーンは、きちんと決まってとても素晴らしかった。

王子役のエルマン・コルネホは、2幕でジャンプして登場してきただけで観客がわぁっと沸いた。彼の人気度がよくわかる。
彼の高いジャンプ、そして回転は素晴らしい。そしてバレエの基本がきっちりしているので見ていて美しい。何より音の使い方が素晴らしい。
どれだけ大きく飛んで、たくさん回っても必ず音でポーズが決まっていて、身体が音楽と一体化している。
3幕の結婚式のパ・ド・ドゥでは、マリアは相変わらず優しい雰囲気で柔らかいオーロラ姫を踊った。対照的にエルマンはキビキビとしたシャープな動きの王子、その二人のコントラストがまたとても良かった。
そして3幕のブルーバードを踊ったイワン・ワシリエフが観客に大きな印象を残した。ソロ・ヴァリエーションはわずか1分ほどなのに、客席からは彼が飛ぶごとに歓声が上がり、踊りが終わると大きな歓声と拍手に沸き盛り上がった。
(2013年7月3日 メトロポリタン・オペラハウス)

ny1308a_01.jpg Photo by Rosalie O'Connor ny1308a_02.jpg Photo by Gene Schiavone ny1308a_04.jpg Photo by Gene Schiavone