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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.05.10]

ニューヨークでで活躍しているタップダンサーたちの現在進行形の新作

Rhythm in Motion 「リズム・イン・モーション」
directed and curated by Tony Waag
監督:トニー・ワーグ

3月22日から24日まで、ザ・シアター・アット・ザ・14ストリートにて、「リズム・イン・モーション」の公演がありました。1986年に創立されたアメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション(ATDF)の主催です。監督はエグゼクティヴ・ディレクターのトニー・ワーグです。出演者は現在ニューヨークで活躍中のタップダンサーをディレクターが選考しました。

ny1305b03.jpg Photo:(C)Amanda Gentile

現在、文化庁の新進芸術家海外研修員として1年間の予定でニューヨークに滞在している、熊谷和徳や大御所のブレンダ・バッファリーノなども出演するということでしたので見ることにしました。デリック・K・グラントとミッシェル・ドーレンスは新作の振付を提供していましたが、ご本人たちは出演しませんでした。
タップ・シティのユースプログラムのティーンエイジャーもたくさん出演しました。すべて出演ダンサー・振付が異なる小品集で8演目です。それぞれに振付の完成度が高く、バラエティに富んだ構成です。舞台後方に大きなスクリーンが置かれ、映像も使われていました。最初、ワーグ自身が編集したタップダンスの様々なシーンの映像がスクリーンに流れました。
伝統的過ぎず、新しい試みやステップを採り入れ、タップダンスの音楽の大切さを重視していて、音楽・歌・映像・タップダンスが一体となった、期待以上の素晴らしい公演でした。まさに現代のニューヨークのタップダンスの「今」を見せていただきました。

宮城県出身の熊谷和徳は、東日本大震災の被害について映像を編集したものを上映しながら、その災害についてタップダンスで表現。津波でたくさんの家や車や人々が流されていく、3. 11の津波のむごたらしい映像が大きなスクリーンに流れました。この作品をニューヨークで披露して分かち合うということは、大きな意味があると思いました。「ファー・アウェイ・フロム・ホーム」「スピリチュアル・ステート」という作品です。振付は熊谷和徳自身です。まず、とても抑えた静かなタップが続き、だんだん盛り上がり、静かですがすごい早打ちになっていきました。現在進行形の新作の振付はまさに今の時代の空気が現れている表現です。
特に最近は、現在の事件や政治・経済の影響、災害や公害などから心に響いた問題点をダンスで表現するダンサーが多いです。例えば以前取材しました、北京ダンスシアターの『ヘイズ』(薄霧)は、今、問題になっている中国の大気汚染PM2.5のことです。日本で問題になる1年半前に、中国在住の中国人振付家がPM2.5について作品に表現しました。現在進行形の新しい作品を観ることと、それを10年後や20年後に観ることの感動の違いを感じました。この体験の衝撃はとても大きくて、忘れることができないです。
http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-newyork/ny1112b.html

ny1305b04.jpg Photo:(C)Amanda Gentile ny1305b05.jpg Photo:(C)Amanda Gentile

この晩でもう一つ印象に残ったのはブレンダ・バッファリーノの「ザ・ブッファロジウム・コルテージ#1」です。ご本人もソリストとしてタップを踊りました。音楽はエリック・サティの「ジムノペディー#3」など3曲を使っていました。ダンサーは4名とご本人です。
バッファリーノは70代ですが現役で時々公演をしていて、まだまだお元気です。とても巧みで、幼少時から音楽とダンス教育を受けた背景を生かした、単にタップのステップだけではない、ダンスの基礎訓練の土台の上に積み上げられたしっかりした踊りです。身体の軸がしっかりしていてとても姿勢が良く、彼女にしか出来ないタップダンスです。そして、彼女が活躍した時代から引き継ぐ伝統的なタップのステップを披露してくれました。他の4名もとても楽しそうに、軽快に踊っていました。
(2013年3月22日 ザ・シアター・アット・ザ・14ストリート)

ny1305b01.jpg Photo:(C)Amanda Gentile ny1305b02.jpg Photo:(C)Amanda Gentile