ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.05.10]
この4月で、ニュ−ヨークのレポートを書かせていただき始めて10年を迎えました。長いようで短いような10年間でした。ありがとうございます。
4月下旬でもニューヨークはまだ夜は冷え込みます。今年は春が訪れるのが遅いです。ボストン爆破テロ当日から、ニューヨークでもテロに対してさらに警戒態勢となり、タイムズスクエア付近や地下鉄などで警官の数が増え、警備が強化されています。ニューヨークの街は今までの10年間よりも物騒な雰囲気になっています。

バレエ・ベースにフラメンコを加えたコンテンポラリー、バレエ・ヒスパニコ

Ballet Hispanico バレエ・ヒスパニコ
Artistic Director: Eduardo Vilaro 芸術監督:エドゥアルド・ヴィラロ
“Nube Blanco” Choreography by Annabelle Lopez Ochoa
「ヌベ・ブランコ」振付:アナベリェ・ロペス・オチョア
“Tango Vitrola” Choreography by Alejandro Cervera
「タンゴ・ヴィトゥローラ」振付:アレハンドゥロ・セルベラ
“Danzon” Choreography by Eduardo Vilaro Special Guests (Live Music) : The Paquito D’Rivera Ensemble
「ダンソン」振付:エドゥアルド・ヴィラロ、スペシャルゲスト(演奏):ザ・パキート・デリベラ・アンサンブル

4月16日から28日まで、ジョイスシアターにて、バレエ・ヒスパニコの公演がありました。毎年恒例の、ジョイスシアターの春のニューヨーク・シーズン公演で、今回が25回目です。プログラムA、B、Cの3種類の公演でした。
4月23日から26日だけ、スペシャルゲストとしてザ・パキート・デリベラ・アンサンブルが生演奏をしました。パキート・デリベラ(キューバ出身)はクラリネット&アルトサックス奏者として世界的なバンドです。ジャズ・レジェンドとして人気ですから、この企画はとても贅沢です。もちろん音楽も最高に素晴らしかったです。ジャズもダンスも盛んなニューヨークならではの公演です。
バレエ・ヒスパニコはニューヨーク・ベースのダンスカンパニーで、マンハッタンのアッパーウエストが本拠地です。1970年から、ラティーノ・ダンス・オーガニゼーションとして認知されています(ジェニファー・ロペスもここのダンス・スクール出身です)。バレエ・ベースで、コンテンポラリー、ラテン、タンゴ、サルサなどをとり入れていて、ヒスパニック系のダンサーたちが主に活躍しています。
現在はアジア人としては珍しく、台湾人女性ダンサーのミンーツー・リーが参加しています。リーはスタイルがとても良く、他のダンサーたちと同じ舞台に立っても、全く見劣りしませんでした。

ny1305a01.jpg photo/Rosalie O'Connor

私が見たのは4月25日のプログラムBです。休憩を2回挟んで3つの作品が上演されました。 
まず最初の「ヌベ・ブランコ」は、振付がアナベリェ・ロペス・オチョアで2009年初演です。音楽はマリア・ドローレス・プラデラ。出演ダンサーは12名でした。
女性たちは、白いチュールレースのチュチュのような広がったスカートを下に着て、その上に黒いチュールレースの透けた素材のタイトなワンピースを着ていました。動く度にスカートがフワフワと動いていて可愛かったです。男性は上はタイトな白いTシャツ、下は黒いパンツでした。
最初、男性が一人だけ舞台中央でソロで踊り始めました。時々、両足で足踏みしてリズムを刻み、周りに男性5名と女性6名が登場。足踏みと手拍子でリズムを刻みます。フラメンコではありませんが、フラメンコの要素を採り入れて全く別のダンスを創っています。音楽が流れ始めて、スペイン語のゆったりしたリズムの女性の歌声。愛の歌を踊った男女のパ・ド・ドゥでした。
さらに軽快で速い歌にのって女性と男性がそれぞれ6名で踊りました。とてものびのびとした雰囲気の振付です。バレエベースにフラメンコの要素を加えたコンテンポラリー・ダンスでした。
最も盛り上がったシーンは、男性4名がでてきて1列に並び、音楽なしでスペイン語でセリフを言いながら、時々全員が足踏みでそろえてリズムを刻み踊ったところ。時々フ〜ンとかウ〜ンと言いながらみんなで伸びをしてみたり、奇声を発したり、静止したり、おかしな動作をしてセリフを入れていました。客席からはクスクスと笑いが起りとても受けていました。
終盤近くタイトルの「ヌベ・ブランカ(白い雲)」の歌が流れました。軽快なワルツです。雲が浮いていてゆったり流れているような雰囲気が良く現れていました。
女性たちは白いチュチュのようなスカートを脱いで、黒いチュールレースのワンピースに。男女全員とも、左足の靴を脱いで片方の右足だけはき、足をひきずっているような踊りをしています。少し暗く不機嫌な表情で、片足をひきずって不自由そうに踊っています。
すると舞台袖から1人の女性がピルエットしながら登場。ボディに白い巨大な雲のように膨らんでフワフワしている衣裳を着けています。玉ネギのような白い球体から手足と頭だけがでている感じです。客席は爆笑でした。これはよく観ると、先ほどまで女性ダンサーたち全員が身に着けていた、白いチュチュのようなスカートのすべてを首までボディに重ねて身に着けているのです。なるほど、面白いアイデアです。ダンスだけでなく、衣装にも凝っていてストーリーがあって、すべて一体となって作品を仕立てているのですね。
最後はみんな消えて、大きな雲を着けたダンサーが1人、舞台上に残り、上半身を後ろに倒して白いフワフワの雲から足を一本だけまっすぐ上に伸ばしてそこだけ照明が当たり、さっと消えて幕を閉じました。

次は「タンゴ・ヴィトゥローラ」です。振付はアレハンドゥロ・セルベラで1987年初演。音楽はビセンテ・グレコ、ロベルト・フィルポです。
舞台中央奥に蓄音機があり、舞台左右にはイスが縦に5脚ずつ置かれています。古いレコードのようなすすけた音のタンゴが鳴って、男性が1人いて、ソロでタンゴを踊っていました。上半身は裸で下は黒い長パンツと黒いハットです。空想で女性とペアで踊る練習をしているようです。
舞台下手から女性ダンサー5人がタイトなドレスを着て出てきて、みんなイスに座り、男性5名もその前で踊りました。中央の男女ペアが1組、タンゴを踊り始めます。頭の上に女性を高くリフトしていました。さらに男女ペアが加わり5組全員が踊りました。
そして、男性5名はイスを1脚ずつ持ってひきずって、上手から舞台の真ん中のほうへにじり寄ったり戻ったり。やがて女性5名も同じように、イスを1脚ずつ持って、舞台下手から真ん中のほうへひきずって同じ動き。最後は男女ペア5組でまた踊り、真ん中でポーズを取って幕を閉じました。

ny1305a05.jpg photo/Paula Lobo ny1305a06.jpg photo/Paula Lobo
ny1305a02.jpg photo/Chistopher Duggan

そして「ダンソン」です。振付はエドゥアルド・ヴィラロ、2009年初演。音楽の再編曲はアレックス・ブラウン(パキートのバンドのピアニスト)。演奏は6人編成のザ・パキート・デリベラ・アンサンブルです。
バンドは舞台の左下の客席と舞台の間で、ラテンジャズのいろいろな曲をメドレーで演奏。素晴らしい演奏でした。
メドレー演奏が終わると、幕が開き、最初はワンピースを着た女性4名、Tシャツと黒長パンツを着た男性3名がラテンジャズ、ボサノヴァ風のゆったりした曲調から踊り始め、男性がもう1人加わり、合計8名で踊りました。やはりバレエベースのコンテンポラリーです。
続いて男女ペア1組がリフトを多用して踊り、次に、男性ダンサーのソロ。そこに、舞台上手からパキート本人がクラリネットを吹きながら登場です。パキートのソロで、リズムが定まっていない抽象的な即興風のクラリネットの演奏です。ダンサーとパキートはお互いに見つめ合いながら、ダンサーは音に合わせて動いたり止まったりしていて、パキートはダンサーの反応に合わせて演奏しました。このシーンは期待以上に素晴らしかったです。パキートはサービス精神が旺盛ですね。
そして男女ダンサー全員で、とても速いリズムの激しいラテンジャズにのって踊り、演奏は最高潮に熱く盛り上ります。
男女ペア1組がダイナミックに激しく踊り、他の2組に入れ替わり、リフトもキレの良い回転も多く、少しサルサも加えてダイナミックなダンスです。しばらく女性ソロが入れ替わりで続き、また全員が出てきて男女13名で同じ振付で踊り、すると舞台下手に残りのダンサー全員がかたまって立ち、それぞれが飛び上がり続けたり揺れ続けたり、違う動きをしていました。最後は音楽が再びアップテンポになって激しく盛り上がり、ダンサーみんなでワーッと激しく踊りました。
(2013年4月25日 ジョイスシアター)

ny1305a03.jpg photo/Chistopher Duggan ny1305a04.jpg photo/Chistopher Duggan