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針山 真実 Text by Mami Hariyama 
[2013.04.10]

ABTスタジオ・カンパニーとロイヤル・バレエ・スクールの活気あふれる合同公演

ABT Presents アメリカン・バレエ・シアター・プレゼンツ
"Royal Ballet School & ABT Studio Company Performances"
「ロイヤル・バレエ・スクール&アメリカン・バレエ・シアター・スタジオ・カンパニー パフォーマンス」

3月26日・27日にアメリカン・バレエ・シアター・スタジオ・カンパニーとロイヤル・バレエ・スクールによる合同公演がニューヨークで行われました。
アメリカン・バレエ・シアター(以下ABT)スタジオ・カンパニーとロイヤル・バレエ・スクールは2003年から交換プログラムをスタートさせ、これまでに何度かそれぞれの拠点の地を訪れ合同レッスンやパフォーマンスを行っています。
ABTスタジオ・カンパニーには、毎年、才能のある16歳から20歳までの12人のダンサーが選ばれ、レッスンやパフォーマンスを通して、ABTメイン・カンパニー、または他バレエ団へ入団する準備をすることを目的としています。現在、ABTのプリンシパルとして活躍しているデーヴィット・ホールバーグやヒー・セオ、そしてソリストとして活躍している加治屋百合子もこのスタジオ・カンパニーの出身です。
今回はロイヤル・バレエ・スクールから20名ほどの生徒がニューヨーク入りし、ABTスタジオ・カンパニーのダンサー12名と共にレッスンと公演を行いました。
今回のパフォーマンスでは、クラッシック・バレエ、モダンダンス、コンテンポラリー・ダンスといろいろなテイストの作品が上演されました。

まず初めは、ロイヤル・バレエ・スクールによる『Canon in D Major』(振付:イリ・ブベニチェク 作曲:オットー・ブベニチェク、 ヨハン・パッヘルベル)。モダンの要素がたくさん入った振付で床を使った動きが多く、それを手足が長く体格の似た3人の男性が腕や体を大きく使って踊ったので、見ごたえがありました。
次にABTスタジオ・カンパニーの『タランテラ』(振付:ジョージ・バランシン 作曲:ルイス・モロー・ゴットシャルク)をキャサリン・フーリンとザビエル・ヌネズが踊った。特に目立ったのがキャサリン・フーリン。彼女は小柄なダンサーで細く15歳くらいに見える。膝と足の甲のしなりが美しいのが印象的で、難しい技もさらりと何事もないかのようにこなす。『タランテラ』の難しく速いステップを終始チャーミングな笑顔で踊っていました。
 
次にロイヤル・バレエ・スクールが上演した『七つのギリシャの踊り(抜粋)』(振付:モーリス・ベジャール 作曲:ミキス・テオドラキス)を13人のダンサーが踊った。独特な雰囲気のテオドラキスの音楽とベジャールの振付がとてもよく合っていて、男性は白い生地のパンツ一枚、女性はレオタードで踊った。スクールの生徒とは言ってもさすがロイヤル・バレエ、鍛えられた身体のアンサンブルがとても美しかったです。
音楽に合わせたリズミカルなステップもとても魅力的。また笑顔がさわやかな二人の男性ソロが特に印象的でした。
 
そしてABTスタジオ・カンパニーが上演した『AIRS(抜粋)』(振付:ポール・テイラー、作曲:G. F. ヘンデル)。女性4人と男性3人が踊ったが男女ともにバレエシューズで踊る作品で、バレエのテクニックを使ったモダンダンス。アメリカでよく知られた振付家ですが、複雑な難しいリフトがたくさん入っていて、しかも風のように舞台上を駆け巡る動きが流れるように続く振付でした。若いダンサーたちがこの作品を踊りこなすのは大したものだと関心しました。
 
目を引いたのはロイヤル・バレエ・スクールの生徒が踊った『海賊』よりグランパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ、作曲:リカルド・ドリゴ)。メドゥーラを踊ったのはヤオチャン・シャン、アリを踊ったのはエステバン・ヘルナンデス。シャンの完璧と言いたいくらいのターンアウトした脚は、ダンサーなら誰もが羨むほど美しい。そして彼女は軸がしっかりしていて強く何をやってもぶれない。それでも上半身や顔の使い方はおおらかでとても伸びやか。プロフェッショナルのダンサーとして充分に通用する美しさでした。そしてアリを踊ったヘルナンデスのターンやジャンプのテクニックには歓声が上がり、回転や跳躍が得意な彼にはぴったりの演目でした。

ny1304c_01.jpg 『海賊』Photo: Erin Baiano. ny1304c_02.jpg 『ラプソディ』Photo: Erin Baiano.

2部の最初はロイヤル・バレエ・スクールによる『ラプソディ』(振付:フレデリック・アシュトン、作曲:セルゲイ・ラフマニノフ)。このパドドゥを踊ったのはアネット・ブーヴィリとイワン・ラウドン。
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」は聴いているだけでも素敵、そしてこれを踊ったアネットは見るからにバレリーナと思わせる細長い体のラインの持ち主。エレガントでとても初々しいパ・ド・ドゥにうっとりとしました。
 
次にABTスタジオ・カンパニーがクラシック・バレエ『エルサレム・ディヴェルティメント』(振付:レイモンド・ルーキンス 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ)を6組のペア、合計12名が上演。ABTスタジオ・カンパニーとジャクリーン・ケネディーオナシス・スクールで指導をしているレイモンド ルーキンスが振付けた作品。初めに男女が全員ペアで組んで踊り、その後一人一人を紹介するかのようにそれぞれが短いヴァリエーションを踊り、ダンサーそれぞれの特徴を見ることができました。振付は膝下の脚のさばきを多く見せるステップがたくさん入っていました。イタリアのバレエ・メソッドを思わせるような難しい足技がたくさん使われているところが印象的でした。

ny1304c_03.jpg 『エルサレム・ディヴェルテメント』Photo: Erin Baiano.

ロイヤル・バレエ・スクールもクラッシック・バレエの『ラリーナ・ワルツ』(振付:アシュレイ・ページ 作曲;ピヨトール・チャイコフスキー)を上演しました。有名なオペラ『オネーギン』からのワルツで聴いているだけで心が躍るような素敵な曲です。女性のチュチュは上品なヨーロッパをイメージさせます。そして『白鳥の湖』に出てくるような黒いベルベット風の上着と白いタイツを着た男性が横一列に並ぶととても華やかでした。
5組の男女が組んで踊るパートナリングは高度な技を要求されるが、良く揃っていてとてもスクールの生徒とは思えないほど見ごたえがあり、レベルの高いパフォーマンスでした。
 
最後はABTスタジオ・カンパニーによる『動物の謝肉祭』(振付:アレクセイ・ラトマンスキー 作曲:カミーユ・サン=サーンス)はスタジオ・カンパニー全員が出演。有名なサンサーンス作曲の「動物の謝肉祭」を使った作品で、象やカンガルーや白鳥などの動物たちを踊りで表しているのですが、とてもコミカルで面白い演技や動作がたくさん入った振付でした。さすがアメリカだと思うような大きいアクションと率直な演技は見ていて、とても楽しかったです。『瀕死の白鳥』として踊られるとても有名な『SWAN』は、こんなにコメディ・タッチの振付では始めて見ましたがおもしろかったです。ラトマンスキーのユーモアに富んだ振付には感心しました。会場からは笑いが耐えませんでした。
 
この日の観客の中には私が気がついただけでも、ABT芸術監督のケヴィン・マッケンジー、ABT総監督のレーチェル・ムーア、ABTバレエマスターのクリントン・ルケット、ABTバレエミストレスのイリーナ・コルパコワ、ABT教師のリナット・イマエフ、ABTプリンシパル・ダンサーのデーヴィット・ホールバーグとシオラマ・レイエス、その他多くのABTダンサー、そしてドキュメンタリー映画『ファースト・ポディション』でフォーカスされているアラン・ベルとミカエラ・デ・プリンス、ユース・アメリカ・グランプリの創立者、ラリッサ・サヴィリエフなど、バレエ界の有名人が多く訪れていました。このパフォーマンスへの関心の高さを示していると思いました。
 (2013年3月26日 The Ailey Citigroup Theater)

ny1304c_04.jpg 『動物の謝肉祭』Photo: Erin Baiano.