ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From New York <ニューヨーク>: 最新の記事

From New York <ニューヨーク>: 月別アーカイブ

ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.01.10]

アメリカを代表するアフロ・アメリカン、エイリー・カンパニーのパワフルなダンス

Alvin Ailey American Dance Theater アルビン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター
“From Before” by Garth Fagan , “Vespers” by Ulysses Dove , “The Hunt” by Robert Battle , “Home” by Rennie Harris
『フロム・ビフォー』ガース・フェイガン:振付、『ヴェスパース』ユリシーズ・ダブ:振付、『ホーム』レニー・ハリス:振付

11月28日から12月30日までニューヨーク・シティ・センターで、アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターの公演がありました。毎年恒例の冬の公演です。カンパニーの創始者はアルヴィン・エイリー(1989年永眠)で、1958年に創立されました。ニューヨークが本拠地で、カンパニーとダンススクールのビルはマンハッタンのミッドタウンのど真ん中にあります。とても便利な立地です。
ダンサーはほぼ黒人と南米系で占められ、黒人らしい躍動感に満ちた現代的なモダンダンスが特色のアメリカを代表する、アフロ・アメリカン色の強いカンパニーです。一度観ると、また続けて観たくなるほど力強い魅力があり、個性的です。
芸術監督は2011年7月からロバート・バトルで、準芸術監督は1991年から日本人の茶屋正純。ずっと芸術監督を務めていたジュディス・ジャミソンが去年退き、次世代のバトルに交代しました。
私は12月21日夜の公演をみました。タイトルは無く4つの小品集です。2回の休憩をはさんで上演されました。私が今まで取材したこのカンパニーの演目は、一番有名な作品『リベレーションズ』など、初期の古いレパートリーが中心でしたので、今までと重ならないような新旧のバラエティーに富んだ演目の日を選びました。

ny1301b_01.jpg Photo by Paul Kolnik

まず、“From Before”(フロム・ビフォー)は1978年初演です。振付と衣装はガース・フェイガン。音楽はラルフ・マクドナルドです。出演ダンサーは16名。カラフルな色一色の、全身タイツのようなレオタードが衣装です。ダンサーたちの肉体の動きがよく見えます。
最初、2名の男女ダンサーがじっと立っているところに、女性ダンサー一人がでてきて踊り、通り過ぎました。次に別の女性がソロで踊り、男性がソロで踊り、やがてパ・ド・ドゥを踊りました。別の男性一人、女性2人たちが踊り、通り過ぎていきました。
そして、別の男性一人が、2番ポジションでプリエをしたままの姿勢で腰を振りながら、少しずつ前に進んで舞台を横切り、通り過ぎていきました。音楽はリアルアフリカのリズムです。ダンサーたちは黒人と南米系だけで、躍動感があり、力強い感じです。
アフリカン・ダンスのような、土着的な匂いがする振付が中心です。
1人〜3人くらいの少人数で踊りながら進み、横切って、次々と踊るダンサーたちは入れ替わっていきました。途中で、ラテンのリズムの音楽に変わりました。みんなで輪になって踊るシーンもでてきました。
振付の特徴は、足のつま先をあまり伸ばさず、かかとを90度にしたままで踊り、お尻や腰をよく振っていて、胸と肩もよくゆらしていました。大勢でじっと立って、全員が上を見上げて片手を上にかかげているシーンは、祈りのようで、印象に残っています。
最後はソロの男性が踊って去って終わり、大拍手でした。
この作品は、黒人ダンサーたちのリズム感、しなやかな筋肉と柔らかい肉体、躍動感、力強さが生かされていて、個性的でよかったと思います。78年の古い作品ですが、古臭さを全く感じませんでした。黒人的な普遍性があるのだと思います。

2つめの“Vespers”(ヴェスパース)は、1986年初演の作品で振付と衣装はユリシーズ・ダヴです。音楽はマイケル・ロウズ、再演出は茶屋正純です。
出演は女性6名。シンプルな膝丈の黒いワンピースを着ていました。これは86年の作品ですが、今の時代に観ると、少々古い現代に作られた振付けではない印象を、始まってすぐに感じました。昔の作品として鑑賞する楽しみはあります。「ダンスは、その時代の空気の影響を受ける」と思いました。
演劇性の強い踊りで、演技とダンスが半々くらいの印象です。顔の表情、身振り手振りでの表現が強かったです。イスを使った踊りでした。
苦しみ、悩み、激しさを強く表現しているようでした。苦悩している様子を表現しているものがほとんどな様子で、お互いに喧嘩しあっているようなシーンもあり、観ているこちらも不快な気持ちになってきました。そして、その苦しみの中で救いを求めるように踊っていました。ダンサーたちは身体能力が高く、裸足でもピルエットを余裕で4回転していました。
最後は舞台に並べられた1列のイスにみんな座って、頭を上げたり下げたり、順番にドミノのようにバタバタとしていって、交互に上げ下げしたり変化して、照明が少しずつフェイドアウトしていって終わりました。

3つめの“The Hunt”(ザ・ハント)は、2001年初演です。振付はロバート・バトル、音楽は、Les Tambours du Bronxです。この日の公演では、この作品が一番力強くてよかったです。とても印象に残っています。さすが芸術監督に抜擢されるだけあって、ロバート・バトルは抜きん出た才能があります。
ダンサーは男性6名で、上半身裸で、下は袴のようなロングの巻きスカートのような衣装でした。裏地は赤、表地は黒でした。この衣装も合っていて、ダンスを引き立てていました。
日本人の瀬河寛司も出演していました。私がニュ−ヨークに来て1年後くらい、今から9年前位に、度々取材したことがあるダンサーの福田純一の友人として、瀬河寛司を紹介されたことがありました。彼は昨年から、このカンパニーの正式メンバーになって活躍しているそうです。
音楽は、エレクトロニックのような音で、日本の和太鼓のようなリズム中心の曲でした。時々、怒鳴っているような声が入っています。激しい打楽器のリズムが主な旋律です。
ダンサーとして毎日、長年、鍛え抜かれた肉体の黒人や南米系の男性ダンサーたちが、激しい男らしい踊りを披露しました。
飛び跳ねたり、床を踏みしめたり、走ったり、蹴りを出したり、上を向いて叫んだり、輪になってぐるぐる回り続けながら激しい踊りを次々に展開していき、すごい迫力でした。躍動感にあふれています。隣のダンサーの身体の一部をバチッと全員がたたいて音をだしたり、ビュンビュン走り回って動いて、スパッと止まったり、強弱も強かったです。
ノンストップで速く激しく動き続けるので、これを踊るには男性でもかなりの体力が要ります。とにかく、女性ダンサーにはとうてい出せない、鍛え抜かれた男性ならではの力強さと男らしさが前面にでた踊りでした。

最後の“Home”(ホーム)は2011年初演。振付はレニー・ハリス、音楽はデニス・フェラー、ラファエル・シャビエルです。衣装は現代の私服のような感じで、みんな様々です。スニーカーをはいて14名のダンサーが出演しました。
最初は静かな音楽で、ゆったりしたリズムで、それぞれがバラバラに思い思いに踊っていました。ヒップホップや、ブレイキングをしていました。
途中から、激しいリズムと音楽に変わり、ハウス・ミュージックが流れて、舞台上はディスコのようになりました。肉体的にバネのある黒人や南米系のダンサーたちが踊るハウスは、さすがプロのダンサーだけあって、動きにとても余裕があり上手でした。
すごく速い動きで、スピード感があり、走り回り、飛び回っていました。躍動感があり、元気に満ちあふれた踊りです。現代的な黒人の若者らしい振付です。自由な感じです。
途中でサンバに曲調が変わりました。ハウス・ミュージックのサンバのリズムです。これもとてもテンポが速かったです。現代のストリート系の振付をとり入れていて、新たな世代のアルヴィン・エイリーの実験と模索が感じられて、進化し続けています。
(2012年12月21日夜 ニューヨーク・シティ・センター)

ny1301b_02.jpg Photo by Paul Kolnik ny1301b_03.jpg Photo by Pierre Wachholder
ny1301b_04.jpg Photo by Andrew Eccles ny1301b_05.jpg Photo by Christopher Duggan
 
ny1301b_06.jpg Photo by Gert Krautbauer ny1301b_07.jpg Photo by Gert Krautbauer
ny1301b_08.jpg Photo by Paul Kolnik ny1301b_09.jpg Photo by Paul Kolnik