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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.01.10]

ラトマンスキー振付、ソ・ヒがが踊ったABTの『くるみ割り人形』

American Ballet Theater アメリカン・バレエ・シアター
“The Nutcracker” by Alexei Ratmansky
『くるみ割り人形』アレクセイ・ラトマンスキー:振付

皆さまお元気ですか。本年もよろしくお願いします。
ニューヨークでもあちこちで、毎年年末は『くるみ割り人形』のバレエ公演が様々なカンパニーによって上演されます。冬の風物詩です。今回は、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の『くるみ割り人形』を見ました。

12月7日から16日まで行われたBAMでのABTの『くるみ割り人形』。今年は『くるみ割り人形』の初演から120周年です。
振付はアレクセイ・ラトマンスキー、音楽はチャイコフスキー。BAMは舞台と客席が近いので、ダンサーたちを至近距離で観ることができる貴重な機会です。子役の子供たちもたくさん出てきました。
クララ(大人)はソ・ヒ(Hee Seo)、くるみ割り人形/王子(大人)はコリー・スターンズ、クララ(少女)はヴィクトリア・アレア、くるみ割り人形(少年)はケイ・モンローでした。

第一幕はパーティーの準備をしている台所でのシーンから始まります。場面が変わり、パーティー会場へ。舞台上には大きめのクリスマスツリーが置かれ、大勢の大人が子供たちをそれぞれ連れてきています。
そこへ、黒いシルクハットをかぶりマントを着たドロッセルマイヤーが入ってきました。床に置かれた大きなプレゼントの箱を、ドロッセルマイヤーがあけていきます。一つめは、白黒の仮面と衣装をつけた道化の人形が男女ペアで入っていて、トコトコとでてきて可愛らしい踊りをしました。最初は男性ソロ、次に女性ソロ、そしてパ・ド・ドゥです。2つめは、水色とオレンジ色の仮面と衣装をつけた人形の男女ペアがでてきて、2人で踊りました。インド風でした。
ドロッセルマイヤーが、クララに大きなくるみ割り人形を持ってきて、ネジを巻いて少し動かし踊りました。その後、フリッツが来てくるみ割り人形を壊してしまいます。クララは仕方なく、大きなツリーの下の長椅子に人形を寝かせました。
パーティーが終わり、夜中に、クララが様子を見に来ると、ネズミがくるみ割り人形をさらっていこうとしています。午前0時の時計の鐘が鳴り、くるみ割り人形は少年の大きさになりました。
おもちゃの兵隊たちも応戦してくれて、大勢のネズミ達と戦いました。頭が7つも付いた巨大なネズミ王も現れ戦いは続き、とうとうくるみ割り人形はネズミ王を倒しました。
クララの前で倒れたくるみ割り人形が目覚めると、凛々しい少年の姿になっていました。
そして、舞台前方でクララと少年が踊ると、同時に舞台後方では大人のクララと王子がパ・ド・ドゥを踊りました。
2012年からプリンシパルになった韓国人のソ・ヒの踊りをじっくり見たのは初めてです。ABTで東洋人のプリンシパルは珍しいことだと思います。ソ・ヒは美人でスタイルも美しく、可憐な感じでした。とても静かに、丁寧な踊りでした。この日の彼女は、BAMの舞台の大きさを狭く感じている様子でした。舞台からはみ出ないように、舞台の端に気を使って踊っているように見受けました。普段よく踊っているメトロポリタン・オペラ・ハウスの舞台の大きさに慣れていると、他の舞台は小さく感じるのでしょう。
雪が舞う松林の場面では、クララとくるみ割り人形(少年)がいます。有名な踊り、雪の精たちの雪片のワルツは、とても美しかったです。大勢が出てくる分厚い群舞なので幻想的です。その吹雪の中、クララとくるみ割り人形は寒くて凍えてきましたが、そこにドロッセルマイヤーが美しいソリに乗ってきて、彼ら2人も一緒に乗せて去りました。

ny1301a01.jpg Photo:Gene Schiavone

第二幕では、クララとくるみ割り人形はお菓子の国に到着。この国の女王、金平糖の精にくるみ割り人形はクララを紹介しました。
いろいろなお菓子たちのおなじみの踊りが続く楽しいシーンです。
チョコレート(男女のダンサー7名、スペインの踊り、ボレロ)、コーヒー(男女のダンサー5名、アラビアの踊り、コモード)、お茶(男女2名ダンサー、中国の踊り)、トレパック(男性ダンサー3名、ロシアの踊り)、葦笛(女性ダンサー5名)、マザージンジャーと道化たち(子供たち8人)です。
特に、お茶(中国の踊り)は、最近プリンシパルに昇格したダニエル・シムキンが踊り、とても短いシンプルな踊りですが、シムキンがこんなところに出ているなんて、と観客にとっては思わぬプレゼントでした。短い踊りの中でも、さすが、一つ一つの動作が安定していてキレが良かったです。
花のワルツは、大勢の女性ダンサーたちの群舞。長いシーンです。これも優雅で美しい群舞でした。頭にかぶりものをしたミツバチの男性ダンサーたち4名も出てきてコミカルな踊りをし、観客を笑わせていました。
盛り上がってきたところで、前方に座っていたクララと少年、子供2人が後ろへ歩いていって奥に消え、入れ違いに舞台後方から大人のクララ(ソ・ヒ)と王子(コリー・スターンズ)が子供から大人へバトンタッチするように登場し、グラン・パ・ド・ドゥを踊りました。大ジャンプやピルエットなどの回転、大技をたくさん披露してくれました。
フィナーレは、王子はクララに指輪とティアラを渡し、クララはブーケをかけられました。
皆が消えて、クララがベッドで寝ていると、彼女のベッドの両脇に一人ずつ、くるみ割り人形の王子(子供と、大人)が立っています。目を覚ましたクララは、まず大人の王子に近寄ると彼はさっと消えてしまい、次に子供の王子に近寄ると彼もさっと消えてしまいました。クララは泣きだしてしまいますが、ふと、ベッドの上に、元の大きさの小さなくるみ割り人形があるのを見つけて、抱きしめました。そのクララの様子をドロッセルマイヤーがこっそりと見守っていました。
(2012年12月12日夜 BAM:Howard Gilman Opera House)

ny1301a02.jpg サラ・レーン、ジョセフ・ゴラック Photo:Gene Schiavone