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今、注目されている中国人振付家タオ・イェのカンパニーの『4』と『2』

TAO Dance Theater タオ・ダンスシアター
"4" "2" by Tao Ye タオ・イェ振付『4』『2』

ニューヨークで毎年恒例の芸術祭、リンカーンセンターフェスティバルに招聘された、中国のタオ・ダンスシアターを拝見しました。2008年に最初の作品が発表され、現在、世界で注目を集めていて評価が高いコンテンポラリー、モダンダンス・カンパニーです。
中国・重慶出身のタオ・イェ(Tao Ye)が芸術監督をつとめています。彼は振付もして、ダンサーとして自身も出演しています。公演のタイトルは無く、2つの小品集です。作品名は『4』『2』です。この4、2、というのは、出演するダンサー数がそれぞれ4名、2名ということです。

『4』は、4名のダンサーたちが踊りました。30分くらいの作品でした。舞台後方、左右の壁は黒1色で、床は白です。上下ブカブカの黒い袴のようなボトムにグレーの衣装で、顔は黒く塗っているかピタッと覆面をつけたような感じ。頭部は黒のウィグを着けたり覆面をしたりして裸足で踊ります。全体的に、踊り・衣装・舞台セットともに、無表情、無機質、クールな印象でした。

音楽は中国語のラップのような感じで、メロディは無く、アカペラで、リズム感のよい中国語の詩のようなものを複数名が朗読しているようなものでした。どこでも聞いたことがないようなもので、中国語の響きがエキゾチックな雰囲気をかもし出していました。

最初は全体に、早いリズムで激しい動きが続きました。4名とも同じ振付を揃えて続けていました。立って動いていきますが、両手両肩は力を抜いたままの状態がほとんどでした。前後左右に縦横無尽に動き続け、両手はブラブラ、ブンブンと振り回されていきました。足はしっかりと踊っていますが、身体全体がとても柔らかく、なめらかに動いていました。
コンテンポラリー・ダンスの、リリース・テクニーク、リモン・テクニークが使われていて、それと同時に中国由来のカンフーのような動きも混ぜられたものがベースになっていました。ビュンビュンと風を切るように動き続けていて、とてもスピード感にあふれていました。一時も目を離せないような緊張感のある速さで、息を呑むようなダンスでした。とても個性的な、独特な振付です。
次に、急にゆっくりな曲調になりました。リズムはランダムでメロディはありません。不思議な音楽です。先ほどと同じような振付で、ゆっくりと踊り始めました。また急にリズムが早くなり、しばらくしてまたゆっくりのリズムになりました。
そのまま、今度は今までとは真ん中くらいの、中位の速さのリズムになり、同じような振付で踊りが続き、照明が再び全体を明るく照らし、長く続きました。
最後は、また静かになっていき、照明はだんだん暗くなっていき、スポットライトだけになり、そして真っ暗になり、終わりました。

ny1210b01.jpg 『4』photo / Stephanie Berger ny1210b02.jpg 『4』photo / Stephanie Berger

『2』も30分くらいの作品です。こちらはタオ・イェも含めた男女2名のダンサーが踊りました。2名ともスキンヘッドで、グレーのブカブカで動きやすそうな無機質・ユニセックスな衣装で、性別を感じさせないものでした。グレーのタイツのようなものをはいていました。舞台セットは先ほどと同じで、舞台後方・左右の壁は真っ黒で、床は真っ白です。
こちらも無機質、無表情、無性別な踊りでした。2名ともとても身体が柔らかく、軟体動物のように見えました。ほとんどが床にへばりつくように転がったまま動き続けました。個性的な振付です。
最初、2名とも並んで、両手両足を伸ばしてうつぶせに寝転がったままじっとしていて、ヒトデのように見えてきました。音も無いまま、それはそのまま5分間ほど続き、あまりにも長くそのままじっとしているので、客席では次第に、クスクスと笑い声が聞こえてきました。
私は時計をチェックしていましたが、夜8時20分から始まり、そのままヒトデのようにじっとし続けて、8時25分から急に音が鳴り始めました。そして少しずつ2人は動き始めました。少し動いては止まり、寝転んだまま、メリハリのある動きが続きました。次第に、足の1部や手を上げたりしていました。寝転んだままで足や手を上げては、バタンと床に落としたり、ジーッと止まったままだったり、動きの長短の間合いが全てキマッていました。2人はときどき目を見合わせたり、そうかと思うと顔をそむけたりし続けました。
8時33分くらいから音楽が鳴り始め、ザーッという電子音で、騒音のようなエレクトリック音楽でした。2人の動きは音楽と共に、速く激しくなっていきました。3点倒立のようなことをしたり、中腰くらいになったり、床から上下への動きも激しくなりました。上半身だけ経って下半身は床につけたまま動き続けるところもありました。すべて、両手両足の力は抜いたまま、胴体を中心に動かしているような、軟体動物のような動きでした。寝転んだ状態でリリース・テクニークをベースに踊っているような感じでした。寝転んだままで床を相手にアクロバティックな動きをするような、観たこともない変わった踊りで、オリジナリティがあります。
そのまま、リズムや動きが速くなったり、ゆっくりになったり、続きました。
座った状態で動き続けたまま、急に照明が消えました。音はそのまましばらくなり続けました。
次に照明が再びつくと、ダンサーたちは消えていて白い床だけが現れ、無常な感じがして感動が表れ、大拍手につつまれました。この終わり方も新鮮で面白かったです。
そしてダンサー2名は左右から現れて、再び大拍手が沸き起こりました。2名とも無表情のままでした。
現在、世界で注目されている話題のカンパニーらしく、見ごたえがあり、とても面白かったです。
(2012年7月27日夜 Alice Tully Hall)

ny1210b03.jpg 『2』photo / Stephanie Berger ny1210b04.jpg 『2』photo / Stephanie Berger