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ローザスが踊った「スティーヴ・ライヒ・イブニング」

 毎年BAMで開催される、「ネクスト・ウェイヴ・フェスティバル」のプログラムの中のダンス&音楽公演、『スティーヴ・レイチ・イブニング』を観に行きました。10月22日から25日まで上演されていて、私は22日に行きました。人気がある公演で、客席は満員でした。

 スティーヴ・ライヒはニューヨークで注目されている音楽家です。ニューヨークが彼のホームタウンで、2006年の70歳誕生年記念では、地元ニューヨークで様々な特集が組まれていました。
 今回は、彼の音楽にのって、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが振付けたダンスを同時に上演するというものでした。この振付家自らも、ダンサーとして出演していました。彼女はブリュッセルのベジャールのスクールでダンスを学んだ後、ニューヨークのNYUで学び、彼女のダンス・カンパニー、ローザスを1983年に創立しました。
 スティーヴ・ライヒの音楽は、LCTUSというブリュッセルのコンテンポラリー・ミュージックのアンサンブル・グループが演奏しました。彼らは、1994年からずっと、ローザスと共演し続けています。そのため、音楽とダンサーたちがとても息の合った公演でした。

 音楽は、とても独特な世界で、非常に単調な簡単なフレーズの2分の1小節くらいの長さの音が、ずっとくり返しくり返し、延々と長い間演奏され続けるものでした。パーカッションとか、キーボード4台とか、マリンバ2台などでした。その単調なフレーズとリズムのくり返しの生演奏をずっと見て聴いていると、だんだんトリップしてきて瞑想状態になっていくような、不思議な感覚に陥りました。客席は、シンと静まり返っていて、じっとその音楽を聴いていました。その合間に、時々、ダンスが加わっていました。

 最初は、トランペットの先半分を切ったような、ラッパ状のおおきなものを上に向けて舞台前の方に2台置いて、そのうえに天井から吊り下げられた棒状の何かの物を2個、そのラッパ状のものの真上にくるように置かれていました。その両端に離れて2人の男性が椅子に座り、紐で吊り下げられた棒状のものを両側から引っ張って、手を離して、振り子状にそれが行ったり来たり動くたびに、“ブーン”、“ブーン”とラッパ状のものの上に来た時にすごく大きな音で鳴っていました。これは、不快な音なのですが、ずっと、何分経ったか分からないくらいに長い間それだけが続いていました。両端の男性2人も、ぞれをじっと見つめて動きません。やがて、だんだん振り子の力が弱まってきて、ほとんど自然に停止しそうになったときに、椅子の男性がその振り子をラッパ状のものの真上に手で静止させると、ものすごい騒音が、“ブーーーーーーー”と長く続いて、音が止むと照明がさっと消えました。私にとってはこの音がずっと不快な気分だったのですが、客席はスゴイ拍手につつまれました。不快感も、芸術表現として受け入れられている様子でした。

 音楽と同じように、ダンスの振付もずっと何度も何度も続くくり返しのものが多かったです。両足はほとんど上に上げる動きはなくて、左右に行ったり来たりしながら、手や足をだしたり、手をブンブンと振る動きがずっと続きました。リリース・テクニークが多用された表現でした。踊りも音楽も同じものをずっと延々とくり返しが続いていったので、それを見ていると、余計にだんだんと、瞑想状態に陥ってきて、不思議な世界に迷い込んだような夢うつつの感覚になりました。
(2008年10月22日 BAM Howard Gilman Opera House )