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●マイケル・スミューインの素晴らしい才能

 8月16から21日まで、ジョイスシアターで、スミューイン・バレエの「カム・ダンス・ミー・ア・ソング」の公演が行なわれました。これは、去年観て振付がとても良くて驚いたので、今年も逃さずに観にいきました。3部に分かれていて、タンゴ作品の『タンゴ・パレース』、『ノ・ビビレ』、ストラヴィンスキーの曲『レス・ノセス』他、メインの第3部「カム・ダンス・ミー・ア・ソング」は全編エルトン・ジョンの曲を使った作品でした。客席の左前方にグランドピアノが置かれ、生演奏と混ぜていました。

 スミューイン・バレエは、サンフランシスコが拠点です。マイケル・スミューインが創立し、現在も彼が演出、振付を行っています。今回の公演の振付はすべて彼によるものです。去年も今年も、振付が素晴らしくて感動しました。バレエやダンスは決まった型があるので、どうしてもどこかで観たような、誰かの作品に似たようなものが多くなりがちですが、彼の振付は歌っているような、流れるような自然なものです。私にとって、振付自体にここまで感心させられる経験は珍しいです。音楽とぴったり合っているので驚かされました。それも、その音楽に流れている音達一つ一つの特徴をよく拾い、例えば合間に入った一瞬のパーカッションの音など非常に細かい音も捉えて、音達にぴったりはまった驚くべき振付に還元しています。ただ単にリズムに乗っているというものではありません。音が締まっているときには振付も体が締まっていて、音がリラックスした瞬間には、身体も弛緩させて肩の関節の力を全て抜いたりしていて、どこを取ってもまさにかゆいところにも手が届いた抜け目のない振付で圧巻でした。だからといって計算したものではなく、自然体なのです。彼はきっと、音楽も大好きで精通している方だと思われます。音楽に特別の愛情がなければ、このような振付は生まれてこないです。聴いてきた音楽の量が、他のダンサーや振付家達とは圧倒的に違うはずです。脳の分野の中で、聴覚は刺激しないと発達しないからです。彼の書斎にあるおびただしい量のレコード達が目に浮かびます。本当に、「今のこの音には、全くこの振付がくるべきだなあ、その通りだなあ」と感心することの連続でした。ちょうど、ジャズミュージシャン達の演奏を聞いて、「今のこの音楽には、まさにこの音が来るべきだな」と感心させられる状況と同じです。彼はきっと、音楽とバレエの感性と技術を両方ともかなりなレベルまで発達させて融合することが出来た、珍しいダンサー・振付家だと思います。素晴らしい才能です。チャネリングで作品を生み出す霊能者レベルではないでしょうか?彼の振付の才能は、音楽で言えばスティービー・ワンダーと同じくらいのレベルだと感じます。きっと今後も評価が高まっていくことでしょうし、歴史に残っていく振付家だと確信しています。

 スミューインは、サンフランシスコ・バレエのプリンシパル・ダンサーで、ABTのプリンシパル・ダンサーと振付家も務めていました。その後サンフランシスコ・バレエに演出家として戻り(73年から85年まで)ました。その間にホームタウンのサンフランシスコで彼自身のカンパニーであるスミューイン・バレエをつくり、活動を続けました。彼はブロードウェイ・ミュージカルやハリウッドの映画の振付も多数行っています。例えば、ミュージカルでは『ソフィスティケイテッド・レディー』、振付でト二―賞を受賞した『エニシング・ゴーズ』など。映画では『コットンクラブ』、『スターウォーズ』など。また、『ロミオとジュリエット』、『ザ・テンペスト』、『ア・ソング・フォー・デッド・ウォリアーズ』で、エミー賞を受賞しています。
 ダンサーのレベルも素晴らしく、その上美男美女揃い、女性達は全員スタイル抜群で美しい人たちばかりでした。