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●ABTの『ライモンダ』

 5月10日から7月3日まで、ABTの春のシーズンでした。先月から引き続き、5つ観た公演のうちの残り2つをレポートいたします。

6月2日に『ライモンダ』を観ました。これは,ABTのニュープロダクションとして今シーズンから加わったものです。ライモンダはパロマ・へレーラ、ジャン・ド・ブリエンはマルセロ・ゴメス、アブド・ラーマンは、フリオ・ボッカです。

『ライモンダ』は、チャイコフスキーが亡くなった1893年以降、彼に代わる作曲家として探し出されたアレクサンドル・グラズノフが1898年に作曲しました。彼にとって初めての、またたった一つのバレエ作品です。ライモンダの誕生日に舞踏会が開かれ、、ハンサムな求婚者であるジャン・ド・ブリエンと、彼女の美しさをかねてから耳にしていたアブド・ラーマンがプレゼントのネックレスを持ってやってきました。ライモンダは2人ともと踊り、彼らはライバル心を燃やします。ライモンダは誰を結婚相手として選ぶか迷いますが、アブド・ラーマンがジャン・ド・ブリエンに決闘を申し込み、怪我を負って側近者に連れ去られます。ライモンダは結局、ジャン・ド・ブリエンと結ばれるというお話です。

この作品で驚かされたのは、その舞台背景の完成度と美しさです。全体にパステルカラーですべてが美しかったです。特に、第1幕の舞台セットは、森の中の木々の様子を含めて、水色、黄緑、青緑という淡い微妙な色合いでやわらかく表現されていて、それにグレーを基調として薄ピンクやオレンジが加わり、グラデーションがかかっていました。今までで観たダンス公演のセットの中で一番美しかったです。その色合いの美しさとバランスに鳥肌が立ちました。第2幕の宮殿の中の舞踏会の舞台セットもやわらかい色調で、すべて水色から薄紫、青緑のグラデーションです。ランプやシャンデリアは、スズランが逆さになって上を向いたような形で、とても可愛らしかったです。

音楽も可愛らしい感じのものでした。この日のキャスティングは、3人ともラテン系で、明るく情熱的な組み合わせでした。ボッカはABTで王子様として大人気ですが、実はアルゼンチンに彼自身のバレエカンパニーを持っており、ほとんどをアルゼンチンで過ごしていて、ABTにはシーズン中だけプリンシパルとして参加しています。もうすぐニューヨークで「ボッカ・タンゴ」と銘打って、アルゼンチン・タンゴの公演をする予定で話題になっています。私もぜひとも観たくて楽しみにしております。

7月2日には、『ロミオとジュリエット』を観ました。ロミオはイーサン・スティーフェル、ジュリエットはチョマラ・レィエスです。この日のキャスティングでは、加治屋百合子もジュリエットの友人役で出演していました。加治屋の踊りは、手の表情がとても優雅で美しく繊細で、身体の隅々まで神経が行き届いているような滑らかなものでした。さすがです。ABTの『ロミオとジュリエット』は去年のレポートと内容が重複するので詳しい描写は避けますが、舞台装置も衣装も豪華絢爛な作品です。いちばん有名なシーンは、ロミオがジュリエットに会いにきて、2人は庭でしばらくたわむれて踊り、家の中に戻ったジュリエットがバルコニー身を乗り出して、ロミオと見つめ合うところです。暗い舞台にスポットライトで映し出される2人は、とても美しかったです。ジュリエットが最初、バルコニーで物思いに沈んでいるシーンは、バロックのパイプオルガンの音楽がバックに流れていて、ゴージャスで劇的な感じがよく出ています。