ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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●アメリカン・バレエ・シアターのバランシン作品ほか

 5月10日から7月3日まで、ABTの春のシーズンです。公演はメトロポリタン・オペラ・ハウスで行われます。私は全部で5つほどの公演を観る予定ですが、今月と来月と2回に分けてレポートをお送りいたします。今月はまず3つの公演のレポートです。

 5月27日に、レパートリー・2という、すべてジョージ・バランシン振付の4つの小品集を観ました。その中の一つ『モーツァルティアーナ』は、チャイコフスキーの音楽による作品です。主役は、2002年からソリストとして参加したロシア出身のヴェロニカ・パート、2003年からソリストとして参加したスペイン出身のへスス・パストール、2000年からプリンシパルダンサーを務めるウクライナ出身のマキシム・ベロセルコフスキーです。女性達は黒のワンピース型チュチュでした。全体的に、可愛らしい軽快な振付でした。パートとベロセルコフスキーのペアの踊りは、とても楽しそうなものでした。最後は、パートが後ろ向きにベロセルコフスキーに重なり、彼の肩の上に顔を乗せていて、とても可愛らしかったです。

『モーツァルティアーナ』
パート/ベロセルコフスキー

また『バレエ・インペリアル』もチャイコフスキーの音楽によるもので、主役はニーナ・アナニアシヴィリ、2002年からプリンシパルを務めるブラジル出身のマルセロ・ゴメス、2002年からソリストを務めるカリフォルニア州出身のモニク・メウニアーです。アナニアシヴィリの踊りを生で観るのは初めてだったのですが、さすが長年プリマなだけあって、手の表情が美しく、とても優雅でした。大勢が出てきておそろいの振付をするシーンが多かったですが、シャンジュマンやピケが一斉に大勢で揃うと、とても迫力があってよかったです。ピルエット10回転でシェネで終わる振付もありました。


 6月17日は『白鳥の湖』を観ました。クラリネットやオーボエの音色に悲しそうな感じが込められていて、心に染みました。 音楽と、素晴らしく完成度の高い美しい舞台装置と踊りがピッタリと合っていて、感動的でした。 今年は、ABTで唯一の日本人バレリーナであるカジヤ・ユリコさんが4羽の白鳥を時々踊っているそうですが、この日は違うキャスティングだったので残念でした。 何年かすれば、彼女はもっと目立つ役をやっていることでしょう。楽しみですね。

 オデット姫は、97年からプリンシパルを務めるサウスカロライナ州出身のアシュレー・タットル、 シーグフリード王子は96年からプリンシパルを務めるスペイン出身のアンヘル・コレーラです。コレーラの踊りは、いつ観ても中心の軸がピタッと動かずに安定しているので、 とても感心します。軸がびくともずれません。タットルの踊りは、力強く、メリハリのあるものでした。 特に第3幕の、王子が結婚相手を選ぶシーンで、突然現れたブラックスワンに扮したタットルとコレーラのパ・ド・ドゥを観て、 タットルのとても力強い激しさを感じました。このシーンでは2人とも、ピルエット16回転を披露していました。


『白鳥の湖』
タットル/コレーラ
 ABTの『白鳥の湖』を観たのは2回目ですが、同じ振付の踊りでも、バレリーナによって微妙に雰囲気が違うものです。悪魔にかけられたオデット姫の魔法は生きている限り永遠に解けず、白鳥のままでいなければなりません。最後の終わり方は、 解放されるには命を絶つしかないということで、姫と王子と2人とも湖に身を投げてしまいます。そのシーンは、舞台装置のがけの向こうの湖に、2人とも飛び込んでしまうものでした。そして舞台の空中上の方にライトが当たり、湖に消えた2人が朝日の太陽の真中に浮かび上がり、死後に結ばれるところで幕を閉じました。同じ白鳥の湖でも、バレエ団ごとに違った演出で様々な終わり方があるので、毎回鑑賞するのが楽しみです。

 6月24日に『コッペリア』を観ました。人形のカクカクした踊りもある、とても楽しい作品です。スワニルダは、 95年からプリンシパルを務めるアルゼンチン出身のパロマ・へレーラ、フランツは86年からプリンシパルを務めるアルゼンチン出身のフリオ・ボッカです。ヘレーラは、去年のレポートでも触れましたが、足の甲の形が素晴らしく弓なりになっていて、バレリーナに恵まれた肉体なので、彼女の足を見るだけでため息が出てしまいます。ラテン系の特徴か、繊細さよりも明るさ、楽しさのほうが前面に出た踊り方です。 ボッカは、そのルックスが、理想の王子様的なので長年大人気です。さすが、とても繊細で優雅で、表情豊かな踊り方でした。他の男性ダンサーに比べて、身体の線は細めです。長い間、現役でよく踊り続けてくれていると思います。

舞台装置もとても美しい色合いで芸術的でした。 例えば、コッペリウス博士の家のドアのライトは、人形の首とロウソクを持っている片手が壁から出てきたようなものだったので、面白いと思いました。村の空の色もセットが薄紫色に点描のグラデーションで塗られていて、黄色っぽい建物の背景画と合っていて、美しかったです。

 『コッペリア』
パロマ・ヘレーラ
コッペリウス博士の家の中のシーンでは、忍び込んで隠れていたヘレーラが、人形になりすまして長い間踊りました。部屋に散らばっている博士が作ったたくさんの人形達は、じっとしていてほとんど動かず、幕が閉じる直前だけ少し踊りだしました。中に一つ、等身大の人間の骸骨が踊っていて客席はどよめきましたが、機械仕掛けのロボットだったようです。いいアイデアですね。

ハッピーエンドの、スワニルダとフランツの結婚式のシーンでは、ボッカとヘレーラのソロやペアがくり返され、お見事でした。ヘレーラは、16回転や24回転、32回転のピルエットを披露し、大拍手でした。