ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 ニューヨークは春を通り越して夏という感じで、昼間はとても暑くなっています。ついこの間まで肌寒かったのに急に暑くなるなんて、おかしな季候です。フランスでは雪が降るし、今年も異常気象のようですね。夏は去年のヨーロッパのように酷暑がひどくならないように祈るしかありません。私事ですが、私の最近の活動は、Todd Barkanというアメリカのジャズ界では大御所プロデューサーによる、某アメリカ人ジャズ・バンドのファーストアルバムのジャケット写真を手掛けさせていただきました。本当にこの出会いは幸運で、ツイています! 日米同時発売予定です。マイペースですが、写真家としても地道に活動を続けております。今年もセントラルパークで写生教室を、夏季限定で毎週日曜日1~3時、15ドルで再開しました。9月まで行いますので、ニューヨークにお越しの際はよろしかったらご参加下さい。来月号はABTをレポートします。お楽しみに。

●ニューヨーク・シティ・バレエのオールバランシン・プロ

 今年春のニューヨーク・シティ・バレエのシーズンは5月27日から6月27日まで、リンカーンセンターのニューヨーク・ステイト・シアターです。ジョージ・バランシンの生誕100周年ということで、今年は様々な特集が組まれています。

 私が観たのは、5月6日の「オール・バランシン/オーストリアン・トリビュート」と、バランシン作品とウィールドンの新作、ロビンズの『牧神の午後』がプログラムされた9日です。

 「オール・バランシン/オーストリアン・トリビュート」は、『ディベルティメント No.15』(モーツァルト)、『エピソーズ』(ヴェーベルン)、『ヴィエンナ・ワルツ』(ヨハン・シュトラウス他)の3作品が上演されました。バランシンは生涯でたくさんのヨーロッパ・クラシック作曲家の音楽を取りいれて振付を行いました。「私がバレエをする時は、ハッピネスもサッドネスについても考えない。作曲家とその音楽について考えている」とバランシンは生前のインタビューで答えています。

『ディベルティメントNo.15』は、8人のプリンシパル・ダンサー達(男3人、女5人)による作品で、フィナーレのアンサンブルではそこに8人の女性ダンサーが加わりました。淡い色のチュチュなど、さわやかでロマンティックな衣装でした。最初のメヌエットは、軽快な感じの踊りで、背景は綺麗な水色1色で、ソロの踊りが連続で続きました。疲れていたのでしょうか、1人の女性がバランスを崩して床に手をつきました。次のアンダンテでは、女の子8人の踊りがあり、その後男女ペアの踊りが続きました。最後のアンサンブルでは計16名のダンサーで、飛び跳ねたり軽やかな振付で踊りました。

『エピソーズ』は、バランシンがストラヴィンスキーにヴェーベルンを紹介されて、彼の音楽に対するバランシンの情熱によって生まれた振付作品です。初演は1959年です。当初は、バランシンがマーサ・グラハムを振付家として招いてジョイント・ワークとして、ヴェーベルンのオーケストラ・ピースを使った作品を創ろうとしたのがきっかけでした。しかし、結果的にはふたを開けると2つの分かれたセクションの作品が出来上がりました。<エピソードI>はグラハムの振付で、彼女のカンパニーと4人のニューヨーク・シティ・バレエからのダンサー達により上演されました。<エピソードII>はバランシンによる振付で、ニューヨーク・シティ・バレエとポール・テイラー(当時はグラハムのカンパニーにいた)により上演されました。1960年以降は、グラハムのセクションは2度とニューヨーク・シティ・バレエでは上演されなくなりました。今回観た作品は、そのバランシンによるセクションです。最初の音楽はリズムのない、不協和音の連続のようなものでした。衣装は、女性は黒や白レオタードにベルトのみの簡素なものに肌色タイツ、男性は白シャツに黒タイツでした。とても変わった個性的な振付でした。綱渡りをしているかのように、舞台上の1本の対角線上を伝って歩き、ヨロヨロと動いて進んでいたシーンや、座っている男性の上を,女性が足を上に振上げながらまたいでいったシーンは印象に残っています。とても面白い、好きな振付の作品でした。

『ヴィエンナ・ワルツ』は、コスチュームが、伝説のコスチューム・デザイナーのカリンスカによるものです。20世紀のほとんどをコスチューム・デザイナーとして活躍したロシア人で、パリに渡り、その後ニューヨークに来ました。多くの歴史的なブロードウェイ・ミュージカルやバレエ、オペラの衣装を手掛けています。バランシンとも長い間コラボレートを続けました。衣装は王子様とお姫様のロングドレスような、クラシカルなものでした。可愛らしいワルツの曲で、舞台装置もきれいでした。木が上のほうまで何層にもありました。木は、透明のカーテン上のものに透けて木の絵が描いてありました。そして薄明かりの緑と水色の混じったような美しい色の照明の背景でした。ワルツはすべて右回りでした。なぜ右回りだと決まっているのか分かりませんが、きっと、左回りでくるくる回っていると気分が悪くなってしまうのでしょうか?大勢の男女ペアが次々に出てきて踊りました。女性の靴はダンスシューズです。だんだん木のセットが上に消えていき、舞踏会のシーンになり、次に舞台背景が雪のように真っ白になりました。

 9日には、クリストファー・ウィールドン振付の『シャンバーズ』(ジェームス・マクミラン)、ジェローム・ロビンズ振付の『牧神の午後』(ドビュッシー)、バランシンの『カンマーミュジック No.2(室内楽第二番)』(ヒンデミット)、『ブラームス=シェーエンベルグ・カルテット』(ブラームス)の4作品が上演されました。クリストファー・ウィールドンは、2000年5月にリタイアしたニューヨーク・シティ・バレエのソリストで、現在は振付家です。イギリス・サマーセット生まれで、91年に英国ロイヤル・バレエ団に参加し、同年、ローザンヌ・コンクールでゴールドメダルを受賞しました。93年にニューヨーク・シティ・バレエに招かれました。ダンサーとしてだけでなく、数々のバレエ団のために振付を行ってきました。ニューヨーク・シティ・バレエ、ボストン・バレエ、コロラド・バレエ、バレエ・インク、英国ロイヤル・バレエ団などです。映画やブロードウェイ・ミュージカルへも振付を行っています。

『シャンバーズ』はジェームス・マクミラン作曲の音楽で、ウィールドン振付の今年5月初演の新しい作品です。とても変わった音楽で、振付も変わっています。男女ペア2列で8人ずつ、並んでいるところから始まります。ペア・ソロの振付ともに良かったです。女性が倒れそうになって、そのまま男性に斜めに抱えられてひきずられ、また倒れそうになって支えられる振付がありました。
 ロビンズの『牧神の午後』は、男女ペア2人しか出てきません。セットはバーのついた白い壁のレッスン部屋の中の様子です。男性ダンサーがストレッチや練習をしているところに、ロングヘアーを下ろした女性ダンサーが来て、2人でゆっくりと優雅な振付で踊り、やがて女性が出て行って男性がもとのように1人残されて終わります。

『カンマーミュジックNo.2(室内楽第二番)』は、早いリズムの不協和音のような音楽で、振付はスピード感があり、ダイナミックで力強いものでした。

『ブラームス=シェーンベルク・
カルテット』

『シャンバーズ』

『カンマーミュージックNo.2
(室内楽第二番)』