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ジェームス・セウェル・バレエのテロの影響を受けた作品

 1月21日、ジョイスシアターに、ジェームス・セウェル・バレエの公演を観にいきました。 3つの小品集です。ジェームス・セウェルはミネアポリス出身で、ダンス活動のために17歳でニューヨークに引っ越してきました。 ABT IIで踊り始め、スクール・オブ・アメリカン・バレエで15年間学んだ後、フェルド・バレエでリード・ダンサーを6年間務めました。ニューヨーク・シティー・バレエでもゲストダンサーとして参加してきました。彼自身のカンパニーとして、ジェームス・セウェル・バレエを1990年に創立しました。 1993年にカンパニーは拠点をミネアポリスに移しました。オペラやオーケストラとも共演しています。

 全ての作品はジェームス・セウェル(Sewell)の振付で、本人自ら全編にダンサーとして出演しています。『ムーヴィング・ワークス』は、5つのシーンから構成されています 。クラシックバレエの要素が強いです。一つ目はバッハのソナタを使った作品で、しゃがんで伸びて、うでを曲げて伸ばして、前に後ろに行ったり来たりのくり返しが多用されていました。 2つ目はオリエンタル音楽を使ったもので、舞台下手から横向けに6人のダンサーが1列になってでてきました。面白い振付です。 ひじを伸ばしてグラン・プリエのまま動いて、円を描いて前後に行ったり戻ったりしていました。5つ目のシーンは日本の和太鼓グループの鼓童の音楽が使われていました。 『ラヴズ・リメンバード』は、見知らぬ男女が出会い、惹かれあっていき、最初は手をつなぐのも恥ずかしがっていたところを、やがて恋人同士になり、次第に冷めていき、離れていく様子を踊りで表現しています。

ジェームス・セウェル・バレエ


ジェームス・セウェル・バレエ
『バラージ』は、まるでカオスです。賛否両論に分かれるでしょう。クラシック・バレエ、それも『くるみ割り人形』の踊りを崩したものとコンテンポラリーを交互にごちゃまぜにして 、同時に踊っていました。わざと計算されたアクシデントとして、急に上の照明装置が落ちてきてぶらぶらぶら下がりました。 音楽は止められ、照明係の男性が出てきて照明を元通りにフィックスしていました。また、これは本当にアクシデントだったらしいですが、 2人の女性バレリーナのトウシューズの紐がほどけてしまい、そのまま紐にひっかかりながらも踊っていました。 そして、クラシックの男性とジーンズ姿の男性が女性を取り合いしたり、急にある女性が出てきてクラシックの男性に花束を贈呈して、 そのビニール袋をクラシックの女性の頭にかぶせて、輪ゴムで首をとめて袋とじにしてしまいました。そのまま彼女は踊りつづけ、フラフラになって倒れてしまって、 舞台袖にひきずって入れられてしまいました。途中で映写機を持った男性が出てきて、後ろのスクリーンに映像を映しました。妊婦のダンサーが踊っているシーン、原爆、サダム・フセインの顔、胎児の映像などが映し出されました。何がいいたいのかわからない作品でしたが、独創的で面白かったです。

 公演終了後の公開インタビューで彼は、「最後の作品(『バラージ』)は、9.11のテロの後、私の気分が、暗く落ち込んでいたことをもう一度思いだして作りました。人生は楽しいことばかりではなく、つらいこと、危機、暴力など悲しい面もあるので、アートも楽しい面だけではなくて悲しいことやつらいこと、暗いことも表現するべきだと考えています。アート作品とは、それを通じて何かを体験することです。私達はバッド・フィーリングを創造してみました。」と語っていました。また、「モダン・ダンスなのになぜトウ・シューズを使うのか?」という質問に対して、「表現方法が増えるから。例えば、床を鋭くカットしたり、上下に動ける高さを増やせるからです。」と答えていました。