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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2012.10.10]

BRBの新シーズン開幕はビントレー、ラング、ファン・マーネン小品集

Birmingham Royal Ballet Opposites Attract
バーミンガム・ロイヤル・バレエ バレエ小品集
"Take Five " by David Bintley、"Lyruc Pieces" by Jessica Lang、"Grosse Fuge" by Hans Van Manen
『テイク・ファイブ』デイヴィッド・ビントレー振付、『リリック・ピーシズ』  ジェシカ・ラング振付、『グロス・フューグ』ハンス・ファン・マーネン振付

Dance Cube最新号が日本の読者の目に触れる頃には、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)を除くイギリスの主要バレエ団の新バレエ・シーズンが開幕している。この秋の英バレエ界最大の話題は、ロイヤル・バレエ(RB)、ENB,スコティッシュ・バレエがそれぞれ新しい芸術監督を迎えるのとだ。ロイヤル・バレエはバーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)で活躍後、RBRとRBのカンパニー・マネージャー、総務ディレクターを務めたケヴィン・オヘアが、ENBは元RBプリンシパルのタマアラ・ロホがダンシング・ディレクターとして、スコティッシュ・バレエはロイヤル・バレエ・スクール卒業後、ENBでダンサー兼振付家として活躍したクリストファー・ハンプソンが芸術監督に就任。3人共にバレエ団を率いるのはこれが初めて。年齢的にも若い彼らがそれぞれのバレエ団のダンサーや上演作品をどのように充実させ、かつ牽引していくのか、私は今シーズンも英ダンス界の最前線から日本や世界の読者の皆さまに公演評や舞台写真をお送りし、お楽しみ頂きたいと願っている。

london1210c01.jpg 撮影/Angela Kase

バーミンガム・ロイヤル・バレエは、9月19日にマンチェスター郊外のサルフォード市ローリー劇場にて、2012・13年新バレエ・シーズンを開幕。翌週9月926日〜29日は、本拠地バーミンガム・ヒポドローム劇場にてシーズン最初のバレエ小品、「オポッシット・アトラクト」を上演した。
今回披露された3作品は、ビントレー07年振付作品で来年1月に日本初演が予定されている『テイク・ファイブ』、今年5月のバーミンガム国際ダンス・フェスティバルで世界初演されたアメリカ人振付家ジェシカ・ラングによる『リリック・ピーシズ』、ハンス・ファン・マーネン71年振付作品の 『グロス・フューグ』であった。
初日9月26日と28日の舞台を鑑賞する。
『テイク・ファイブ』は、誰もが一度は耳にしたことのあるブルーベックによるジャズの名曲の数々をスコアに、若い男女が踊り戯れる姿を描いた抽象バレエ。
セミ・プロのジャズ・ミュージシャンを両親に、幼少時よりジャズに慣れ親しんでいるビントレーは、バレエ史上最もジャズ音楽とその魅力を良く知る振付家であろう。

london1210c02.jpg 撮影/Angela Kase

初期にはデューク・エリントンの音楽と『くるみ割り人形』の世界を融合させた『ナッツ・クラッカー・スィーティーズ』、またギリシャ神話オルフェとエウリディーケの物語とデューク・エリントンの音楽を融合させた『オルフェ組曲』は、エウリディーケが囚われ、オルフェが妻を追って訪れる「黄泉の国」=「闇の世界」を、ジャズ音楽で観客に余すところなく表現し伝える異色作で、これらの作品発表当時からビントレーは鬼才振付家としての名を欲しいままにしている。
作品は男女各5人の精鋭ダンサーたちによって踊られ、配役の中で最も優れた音楽性と若々しい魅力を持つ男性1人が「フライング・ソロ」と呼ばれるソロを披露、1組のカップルが「トゥー・ステップ」と呼ばれるメローなデュエットを踊る。
初日の26日と28日は当初「フライング・ソロ」をジェイミー・ボンドが踊る予定であったが、腰の問題の再発により降板を余儀なくされた為、26日はジョセフ・ケイリーが、28日はマティアス・ディングマンが代役を務め、「トゥー・ステップ」は両日とも予定通りエリーシャ・ウィリスとタイロン・シングルトンが踊った。
28日は「フライング・ソロ」をマティアス・ディングマンが、「トゥー・ステップ」は予定通りエリーシャ・ウィリスとタイロン・シングルトンが踊った。
「フライング・ソロ」はソロを踊るダンサーの音楽性とシャープな足裁き、大小の跳躍と共に舞台人としての魅力を把握するに格好な振付で、過去には山本康介やロバート・パーカーといった、バレエ団人気のプリンシパルやソリストが踊り好評を博している。今回のリバイバルでもディングマン、ケイリー共に自らの持つ技量とやんちゃな魅力を発揮し、ヒポドロームに集まったバレエ・ファンを魅了した。
「トゥー・ステップス」は技巧や音楽性よりもメローなジャズの雰囲気を伝える表現力や手脚と身体のラインの美しさを見せるべきデュエットである。この作品を踊りなれているウィリス、ジャズの物憂げなサウンドが容姿に似合いのシングルトンは共に好演し、観客をジャズの魅力に酔わせた。

london1210c03.jpg 撮影/Angela Kase london1210c04.jpg 撮影/Angela Kase london1210c05.jpg 撮影/Angela Kase

『リリック・ピーシズ』は今回2配役で鑑賞した。26日の舞台を務めたダンサーの中ではジェイムス・バートン、ムレイヤ・レボヴィッツ、ディングマン、Iマッケイが、28日は佐久間奈緒、デリア・マシューズ、周子超(ツ・チャオ・チョウ)、ウィリアム・ブレイスウェルが舞台人としての魅力と技量を奮い、強い印象を残した。
ファン・マーネンの『グロス・フューグ』は世界初演から早くも40年が経過しているが、いつ見ても新鮮で色褪せることがない名作である。
男女各4人のダンサーがシンプルな衣装を身にまとい、男女2組に分かれて時に挑発・威嚇するように見つめあったり、4組のペアを組んで異なるデュエットを披露するユニークな小品だ。
26日に登場した女性は、サマラ・ダウンズ、平田桃子、ヴィクトリア・マール、エリーシャ・ウィリス、28日は佐久間奈緒、キャロル・アン・ミラー、ローラ・ジェーン・ギブソン、アンジェラ・ポール、26日の男性はジョセフ・ケイリー、曹馳(ツァオ・チー)、マシュー・ローレンス、イアン・マッケイ、28日は曹馳(ツァオ・チー)、マティアス・ディングマン、Iマッケイ、トム・ロジャースであった。
踊り手個人としては、女性は佐久間、ミラー、ギブソン、男性は曹馳、ローレンス、Iマッケイ、ディングマンが作品を良く御し、ペアとしては佐久間・曹馳組が圧倒的な輝きを放って関係者や観客を圧倒した。
(2012年9月26、28日 バーミンガム市 ヒポドローム劇場 9月26日最終ドレス・リハーサルを撮影)

london1210c06.jpg 撮影/Angela Kase london1210c07.jpg 撮影/Angela Kase london1210c08.jpg 撮影/Angela Kase
london1210c09.jpg 撮影/Angela Kase london1210c10.jpg 撮影/Angela Kase
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london1210c13.jpg 撮影/Angela Kase london1210c14.jpg 撮影/Angela Kase

写真に登場するダンサー
『テイク5』
イアン・マッケイ、ジェンナ・ロバーツ、ムレイヤ・レボヴィッツ、マティアス・ディングマン他
『リリック・ピーシズ』
デリア・マシューズ、周子超、ジョセフ・ケイリー、アンブラ・ヴァッロ、ウィリアム・ブレイスウェル他
『グロス・フューグ』
佐久間奈緒、曹馳、イアン・マッケイ、アンジェラ・ポール、ローラ・ジェーン・ギブソン、トム・ロジャース、キャロル・アン・ミラー、マティアス・ディングマン